荷物を揃えて鞄につめる。洋服とかもつめる。
お気に入りの料理道具もあったけど全部捨てた。
他人の笑顔なんかどうでもいいから。
必要ないから。
これからは自分の事だけを考えて生きていけばいい。
玄関に向かう。
お姉ちゃんがいた。
「もう帰って来ないでね。私はお母さんに甘えたいからあんたはいらないの」
「好きなだけ甘えれば?お姉ちゃんもお母さんもしねばいい・・」
お姉ちゃんは凄くびっくりした顔になる。
僕は今までそんな事言った事ない。
「嘘つきは死んだほうがいいよ・・さよなら」
靴をはいて振り向かずに玄関から出た。
僕・・・変わっちゃった。おかしくなった・・・。
人の気持ちが分からなくなった。
エレベーターで下に降りて駐車場に向かう。
お母さんが車で待っていた
荷物を車に乗せる。
お母さんはもう僕の事が嫌いみたいだ。
助手席に座る。
車が走り出す。
振り返ってマンションを見る。
ベランダからお姉ちゃんが見ていた。
僕を陥れた悪魔・・・。
お母さんは喋らない。
何も話してくれない。
車は高速道路を走る。
このままどこかで事故にならないかな・・。
「春ちゃん、もう変な事しちゃダメだよ」
「しない・・・」
お母さんは信じてくれなかった。
僕がお姉ちゃんを襲ったと・・・・。
お母さんにエッチしたいと言った事が原因かな・・。風景が流れていく。
僕はどこへ向かうの?
しばらく走って静かな街についた。
田舎っぽい場所。
けど大きなスーパーはあるみたい。
しばらく走る。
神社についた。
ここでお祓いしてもらうつもり?
荷物を持ってお母さんについていく。
大きな鳥居をくぐるとたくさんの木がある。
広い神社だな・・。
「こんにちわ」
巫女服を着た女の子がいた竹箒を持っている。
「利奈ちゃん、お願いね」
「はいっ!」
利奈さんは目がクリクリして可愛い。
子犬みたいな雰囲気だ。
「よろしくね、春くん」
「はい・・・」
手を差し出してきた。
握手をする。
柔らかい手だ。
「じゃあお母さんは帰るね」お母さんは背を向けた。
「・・お母さんは僕を捨てるの?」
お母さんが立ち止まる。
けど振り返らずに歩いて行った。
お母さん・・人が変わったみたい。
みんなおかしい・・。
「さ、案内するからおいで」利奈さんの後ろを歩く。
綺麗な空気だ。
僕がいていいのかな・・こんな綺麗な場所に。
神社の中にある家に入る。木造の綺麗な家だ。
古いけどよく掃除されている。
廊下を歩く。
床もピカピカ。
「ここが君の部屋ねっ」
畳の部屋だ。
なかなか広い。
荷物を置いて膝をつく。
寝転がる。
必死に抑えていた涙が溢れてきた。
「あらあら・・」
利奈さんは僕を抱き起こしてくれた。
「大丈夫・・・私が今日から君のお姉ちゃんだよ」
お姉ちゃんなんかいらないって言いたかった。
けど涙が溢れて何も言えない。
追い出されて捨てられた。変わってしまった自分が恐ろしい。
しばらくしてなんとか落ち着いた。
深呼吸をする。
利奈さんがお茶を持ってきてくれた。
「改めましてよろしくね。唐木利奈、18歳っ!独身だよっ」
可愛い笑顔。
子供っぽい感じだ。
「利奈さんは高校生?」
「そだよ、勉強も教えてあげるよ。何でも質問してね・・・けど英語は苦手かな・・えへ・・」
なんか癒されるな・・。
いい人みたい。
僕も自己紹介をした。
うちの事情は大体把握済みらしい。
「中学校が始まるまではのんびりしてればいいよ」
「はい・・」
利奈さんがハンカチを取り出した。
僕の目を拭いてくれた。
「泣いても可愛いね・・・けど目が腫れちゃうよ」
優しく拭いてくれた。
しばらく荷物を整理した。棚とかは後で買えばいい。少し落ち着いてからまた寝転がる。
死にたい気持ちもある。
けど・・・利奈さんに触れてから少し消えた感じ。
「春くん、ちょっとおいで」襖の所に利奈さんがいた。手招きをしている。
「はい?なんですか?」
「お父さん帰ってきたから挨拶してね」
「はい・・」
利奈さんについて行く。
廊下はたまにギシッと音がなる。
厳しそうな男の人がいた。この人がお父さんか・・。「よろしくお願いします。榊春ですっ」
「唐木将だ・・・」
やっぱり厳しそう。
僕をじっと見ている。
ただ者じゃないのは確かだ・・・・。
将さんが利奈さんの方を向いた。
「利奈、巫女服が似合いそうだな」
「あは、それ私も思ったよ」・・・・・え?
将さんがニコッと笑った。「あはは、お父さんは変態だから気にしないでね」
「利奈・・変態ではないぞ」何か・・よかった・・。
怖い人じゃないみたい。
夕飯まで神社の中を散歩する。
いい空気だ・・。
昔の事を忘れてしまいたい・・・。
「しゅーんくんっ!」
「わぁっ!」
利奈さんが手を掴んできた、ドキっとしてしまう。
「利奈さん・・びっくりした」
「へへ、どう?うちの神社は」
「綺麗です・・・心が洗われるかんじ」
「小学生なのに難しい言葉使うね・・・」
利奈さんはぽけーっとしている。
「僕はもう中学生ですっ!」ムッとした。
「ははっ、ごめんね」
しばらく二人で散歩した。だんだんと気持ちがまた変わってきた。
「君を見てると初恋の人を思い出すよ・・・」
利奈さんがボソッと呟いた「初恋の人・・・?」
「春くんみたいに可愛くて格好良くて・・繊細で優しくて・・・」
「ぼ、僕はそんな・・」
「まぁ付き合ってフラれたけどね」
利奈さんが微笑んだ。
「サイテーな人なら忘れられたのになぁ・・・」
「僕と付き合いますか?」
何となく言ってみた。
「おおっ!言うねぇ」
利奈さんは拍手した。
僕はもう少し男らしくならないといけない。
だから男らしい事言ってみた。
利奈さんは僕をじっと見てから少し顔を赤くした。
「さ、ごはん食べよ!」
背を向けて歩き出した。
僕もついて行った。
夕飯は将さんが作った。
味噌汁とご飯と煮物だ。
「いただきます」
一口食べる。
「将さんは京都生まれですか?」
「ん?・・なんで分かった?」
「京都の味がします・・」
利奈さんと将さんが感心したような顔になる。
京都、大阪は味付けが薄めだった。
関東は味付けが濃い。
久しぶりに食べたな。
最近体重がどんどん落ちていたから・・・。
お皿洗いをやらせてもらった。
何かお手伝いをしなきゃ。台所に立つとムズムズする・・・。
けどもう料理なんて・・。
部屋に戻って布団をひいて寝転がる。
ボーッと天井を見る。
新しい場所。
うまくやってけるかな?
「ねぇ、春くん」
「はい?」
いつの間に利奈さんがいた気配一つ無い。
「一緒に寝てもいい?」
「あ、はい・・」
「えへっ・・」
僕の布団に入ってきた。
「私ね・・弟が欲しかったんだ・・」
「ほぇ・・」
出会って1日でこんなに仲良くなれるなんて・・。
利奈さんっていい人なんだな。
「あぁ・・あの双子は何してるのかなぁ・・」
「・・双子?」
「一言で言えば親友と元彼氏・・・好きだった人・・・」
「ふーむ・・双子・・」
「まぁまた今度話すね・・おやふみゃ・・」
利奈さんは寝てしまった。この人の近くにいると安心する・・そんな感じ・・。
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