美空ちゃんと美月くんは保健室行っちゃった。
大丈夫かな?
そんなに・・怖かったかな?
山田さんは少し申し訳なさそうな顔。
「やりすぎたかな・・」
「あは、あの二人が怖い話苦手だっただけだって」
「そっか・・」
授業中だしあんまり喋れない。
ノートは何とか書ける。
汚い字だけど・・・。
「ねぇ、榊くんは・・美空ちゃんと付き合ってるんだよね?」
「あ、うん・・」
「そっか・・楽しい?」
「う、うん・・・・」
正直・・・あんまり変わらない。
友達だった時と。
キスはしたけど・・。
美月くんがいる。
美空ちゃんの大好きな。
僕より愛してる・・・。
それは分かる。
「私は美月くんが好きだなぁ・・・」
「や、やっぱり?凄いもんね・・美月くんは」
銀髪にブルーの瞳。
容姿は文句のつけようがないくらい。
女の子のような・・・中性的な・・超がつくくらい美少年。
僕なんかより・・ずっと。「でも榊くんも好きだよ」
「へっ?」
僕を見て微笑んだ。
友達として・・・?
だよな・・・。
僕なんか・・山田さんに合わないよな。
終礼が始まった。
明日の予定やお知らせのプリントが配られる。
ガラッ。
教室の扉が開いた。
「すみませーん・・」
美月くんと美空ちゃんだ。美空ちゃんは顔が赤い。
席に座った。
「具合はどう?」
「あ、ああ、うん・・だ、大丈夫だよ」
「そっか・・・」
お知らせのプリント。
授業参観・・。
「はぁ・・・」
ため息が出てしまう。
僕にはお母さんがいないから・・・。
「春・・・」
美空ちゃんが心配そうに見つめている。
「いいよ・・大丈夫」
「そっか・・」
お母さんがいなくても生きていけるから・・。
大丈夫・・・。
いつもどうり部活。
美空ちゃんは美月くんと喋ってる。
最近・・なんか違う気がしてきた。
僕なんかが・・美空ちゃんと付き合うのは。
好きだった気持ちが分からなくなってきた。
家庭科室に入る。
いつもどうり席につく。
今日は何を作ろうかな。
うーん・・・。 「今日は自由に何でもいいよ」
みんなに言った。
食材は色々あるから。
何でも作れる。
美空ちゃんと美月くんは仲良しだし・・。
僕は・・・。
邪魔・・・かも。
美空ちゃんが僕を見た。
近づいてきた。
「春・・元気ないね」
「美空ちゃん・・・別れよっか」
「春!?なに・・」
「僕・・美月くんには勝てないよ・・ごめん」
胸が苦しくなって家庭科室を飛び出した。
これで・・・いい・・よね・・?
気が付いたら屋上にいた。フェンスに寄りかかる。
僕はこれ以上進めない。
もう無理だ・・。
「春・・・」
美空ちゃんが追いかけてきた・・。
「美空ちゃん・・ごめん」
「春・・・どうして?」
「美空ちゃんにはたくさん与えてもらった・・だからもういいよ」
「春・・・」
「美月くんが好きなら余所見しちゃダメ・・」
「春・・・私が春を好きって事・・忘れてない?」
美空ちゃんが抱きついてきた・・・。
あったかい・・。
けど・・・もういい。
辛い・・・美空ちゃんと付き合ってると・・。
「ごめん・・別れよう・・もう辛いよ・・短かったけど・・楽しかった」
美空ちゃんを引き離した。美空ちゃんは悲しそうな顔・・・。
「春・・・」
「友達に・・戻ろう」
本当に短かった。
夢みたいな日々だった。
美空ちゃんとは友達・・それが一番いい関係。
「ごめん・・先に帰る」
逃げるように駆け出した。僕はこれ以上は・・望まない。
家庭科室に戻った。
涙が出そう・・。
椅子に座ってうつむく。
「榊くん・・大丈夫?」
山田さんが隣に座った。
美月くんはいない。
結実はこっちを見ている。あっけないな・・・。
終わっちゃった・・。
「ほら、春さん!食べて元気だせ」
結実の作ったどんぶりを食べた。
美味しいけど物凄く辛い・・。
「これ・・なに?」
「スペシャルどんぶりだ!」味がよくわからない・・。「ははっ・・美味しいよ」
笑えた・・。
結実が肩を叩いてくれた。友達でいいんだ・・。
友達で・・・。
美空ちゃんと美月くんが戻ってきた。
美空ちゃんが僕に駆け寄る「美空ちゃん、もう友達だからね」
「・・・うん」
抱き締めなくてもいいって事。
もうドキドキしなくていい・・・。
料理を作ろう・・。
料理を作って忘れよう。
僕が一番好きなのは料理だけ。
それだけでいい。
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