お団子を持ってフラフラと散歩。
もう夜中になっちゃった。この街って四季の変わり目がはっきりしてるよな。
真っ赤に染まった木が街灯に照らされて綺麗。
デジカメがあればなぁ・・・・。
・・・・ん?
携帯電話にカメラ機能があるんだった。
ポチポチ。
使い方・・・こうかな?
カシャッ。
「おおーっ!撮れた」
綺麗に写った。
面白くて何枚か取った。
「へぇー・・綺麗」
キラキラしてる葉っぱ。
紅くて・・美しい。
「はふぅ・・」
さて・・そろそろ帰ろう。商店街はもう店が閉まってる。
誰もいない。
一人・・。
でも帰る場所があるから。寂しくないよ。
田んぼが広がる。
鈴虫や蛙が合唱してる。
リンリン・・・。
グワッグワッ。
立ち止まって聞いてみる。
「ははっ・・・」
面白いな・・・田舎って。都会にいる時はこんなの知らなかった。
いつまでも聞いていたいな・・・。
けど帰らなきゃ。
みんなが待ってる。
足を進める。
なんだかたくさん寄り道しちゃったな。
スニーカーも傷や汚れが増えてきた。
パタパタと足音。
僕の足音だけ。
もうすぐ神社だ。
僕の家につく。
玄関扉を開けた。
もうみんな寝ちゃったかな・・・。
居間に入って電気をつける
お茶が飲みたい。
お湯を沸かしてお茶を入れる。
「はふ・・団子食べよっと」美味しそう。
笹の葉につつまれている。
どれにしよっかな。
ガラッと襖が開いた。
「あ、春くん」
綾さんだ。
「お団子買ってきました」
「へぇ、美味しそう」
僕の隣に座った。
ホントに猫っぽい・・。
フニャッとした感じ。
ゆるーい雰囲気。
優しそう。
「一個・・・いいかな?」
「はい、みんなのために買ってきました」
「えへ、サンキュー!」
お団子を一つ取ろうとして・・・。
「はっ、月見団子・・いいっ!」
「えっ?」
「月を見ながら食べようよ」「はは、いいですね」
縁側に座ると月が見える。
お茶を入れてお団子を食べる。
「美味しい・・・左京堂のお団子・・」
「分かるんですか?」
「うん、大好きでいっつも食べてたからね」
綾さんは昔ここに住んでたんだったな。
月は満月。
綺麗な真ん丸のお月さま。
ここでも鈴虫が鳴いているリンリン・・リンリン。
綾さんは僕を見て微笑んだ「君は大人しそうだね」
「そうですね、大人しいですよ」
「ははっ、素直だなぁ」
「大人しいから・・大胆な事・・できません」
「大胆な事?」
「美空ちゃんと付き合ってるのは知ってます?」
綾さんはうなずいた。
利奈さんから聞いたかな。「キス・・したり・・大胆な事・・できません」
「へぇー・・」
綾さんが近づいてきた。
「美空とキスしたいんだ?」「はい・・一度くらいなら」「ふむん・・」
美月くんには悪いけどなぁ・・。
僕だって男だから。
「美空ちゃんは美月くんを好きだけど・・・僕も好きって言ってくれました」
「美空がね・・そっか」
綾さんが僕の背中を擦った「がんばりな!」
「・・はいっ」
ガラッ。
「綾・・」
美月くんだ。
眠そう。
目を擦ってる・・。 か、かわいい・・ 「やぁーん、美月きゃわいい!」
綾さんが美月くんに抱きついた。
母親だから余計に可愛いんだろうな。
でも・・なんか変な感じが・・。
「お団子・・・」
「食べる?」
美月くんが近寄ってきた。「・・いい?」
「うん、どうぞ」
お団子を一つ食べた。
「おいしぃ・・」
可愛いなぁ・・。
男の子なのに・・。
僕の隣に座った。
眠そうに目を細めている。青い目・・綺麗。
「しゅん・・・ありがとぉ」「うん、どういたしまして」
綺麗なお月さま。
三人で眺める。
肩に何か当たった。
美月くん寝ちゃった・・。僕の肩に頭をのせている。「あはっ、寝ちゃった」
「可愛いですね」
「うん、私の美月・・」
綾さんは美月くんを抱き抱えた。
「さきに寝るね、お団子ごちそうさま」
「はい、おやすみなさい」
居間には僕一人になった。お母さん・・いいなぁ。
僕のお母さん・・。
どこにいるの?
僕を捨てて・・どこにいるのかな。
もう少しお月さまを見ていたい。
お母さんも見てるかな。
真ん丸い満月を・・。
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