方舟を出て学校に戻りたいのが私の本音・・・。
けど美月と美空の事も心配だ・・・。
美月はまだ精神的に不安定だからなぁ。
私がついてないと・・・。里香に相談してみるか。
電話したら農業地区にいると言われた。
ついでに買い物もしとこうエレベーターに乗る。
グラグラ揺れる。
今日は一人きり。
美月は朝寝坊していた。
待ち合わせの場所に向かう里香が砂利道にブルーシートを引いて座っていた。
こちらを向いて微笑んだ。隣に男の人がいた。
「えっ、西村先生?」
「やぁ、綾ちゃん」
二人で並んで座っていた。私も里香の隣に座る。
「相談って何?」
「えっと・・・」
自分の状況を素直に話した学校に戻りたいと言う事も「そっか・・美月くんとそんな関係だったのか」
「はい・・・でも気持ちは本当です」
「うんうん、分かったよ」
里香はうーんと伸びをした指先には指輪がある。
「ちょっと歩こうか?」
「あ、うん・・」
なぜか手を繋いで歩く。
砂利道・・・。
「昔、綾はここで転んで泣いたよね・・覚えてる?」立ち止まる。
何を言ってるんだ?
「思い出さない?」
「里香?・・何?」
「私はお母さんだよ」
「・・・・えっ?」
そんな唐突に・・。
抱き締められる。
「私が・・ちゃんとお腹を痛めて産んだ子だよ・・あなたを連れ戻したくて保護したんだ・・」
背中をさすってくれる。
お母さん・・?
「綾、やりたい事をしなさい・・いいよ」
「お母さんなの?」
「うんっ・・」
私と同じような可愛らしい笑い方をする。
私も抱きつく。
いないと思っていた。
お母さん・・・。
「何となく分かると思ってたんだけど綾は鈍いなぁ」
「お母さん・・お父さんは?」
「お父さんは人間だったの・・・死んだよ」
「そっか・・・」
しばらく話をした。
昔の事・・。
ルカの事・・。
美月の事・・。
「美月くんを愛してるのね・・・普通なら許されないけど・・・」
「うん・・でも・・好き」
この気持ちだけはどうしようもない。
頭を撫でられた。
「頑張って愛を貫きなさい」「うんっ・・」
「さ、早く出発の準備をしなさい」
「えっ・・・?」
「今行かないと・・きっとずっとここから出る事はできないよ・・美月くんの顔を見ないで行くべき」
「それは・・・」
「美空ちゃんもいるし私も面倒見るから・・大丈夫だよ」
さすがに悩んでしまう。
片時も離れたくない。
美月と美空と一緒にいたい・・・。
「一度離れるのもなかなかいい物よ・・ねっ?」
「分かった・・・」
「さ、行こう・・」
エレベーターに乗る。
上を目指す。
「特別に見せてあげる・・ここはどこか」
甲板に出た。
流氷が見える。
「北極か南極?」
「そう・・さ、飛行機は準備してあるよ」
「荷物は・・・」
「置いていけばいいよ・・」今持っているのはPx4と携帯のみ。
里香が肩を押す。
「また戻ってきてね・・絶対だよ」
「うん・・」
飛行機に乗る。
里香が手を振る。
ドラマなら・・ここで好きな人が来る。
美月が来る・・・。
飛行機が滑走する。
飛んでいく・・・。
遠く・・遠くに・・。
「はぁ?銀髪・・」
クロスの第一声はそれだった。
「ねぇ・・普通なら心配したとか言わない?」
「言わない、お前は強いから心配する必要はない」
「はぁ・・・あんたと結婚しなくて良かった」
クロスは特に変わりは無かった。
学校を見る。
机や椅子が綺麗に搬入されている。
「まだ校長が不在って事で授業はしてないぜ」
「そっか・・サンキュ」
マックと大福も元気だ。
相変わらず広い敷地。
美月と美空が気になる・・・・。
連絡も取れないし・・。
夕飯を食べて私の部屋に向かう。
綺麗に掃除されている。
ベットに座る・・・。
ぎゅっと寂しさが込み上げる。
コトンとベットに寝転がる
夢が叶う・・。
けど・・。
美月と美空と離れてしまった。
寂しいな・・。
ドアがいきなり開いた。
「一緒に寝てやる!」
「わ、わぁ!」
クロスが入ってきた。
「い、いいよ・・大丈夫」
「無理すんな・・」
「う・・うん」
クロスが抱き締めてくれる・・。
少し安心する。
「美月と美空と離れるのは辛かったか?」
「うん・・凄く・・二人とも心配してるかな」
「あの子たちは大丈夫だよ・・お前の子供だからな・・さぁ、寝よう。明日は学校だぞ」
「うんっ・・・」
静かに眠りについた。
また会えるから大丈夫。
初めて不老不死で良かったと思った。
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