一通り訓練を済ませて出発する。
ノアの方舟がどこにあるかは極秘のため目隠しをして施設を出た。
飛行機に乗ってしばらくしてから目隠しを取った。
ロシアまで6時間弱。
美空は置いてきた。
あの様子じゃ任務はできない。
美月が椅子に座って資料を読んでいる。
「これ本当かな・・?放射能をたくさん浴びて死んだはずの人間が蘇ってまたプリピャチ市内に逃げ込んだって・・」
美月が首を傾げている。
私も信じてない。
蘇ったまでは信じてもいいけどなぜまたプリピャチ市内に行ったのか・・。
ウクライナのプリピャチ市内で何度も目撃されているらしい。
放射能がまだ強く残る場所を平気であるいていたとか・・・。
今回の探索目標。
動きを観察するだけでいいらしい。
しばらくして仮眠を取る。寝れる時は寝といた方がいい。
ロシアの空軍基地についた私も美空にスーツを作ってもらった。
黒猫のマスクだ。
スーツもセクシー。
美空と美月のスーツより大人っぽい。
「どうかな?」
「か、可愛い・・・」
美月・・羅紗が誉めてくれた。
着替えてから飛行機を降りる。
ロシア軍の協力を得て任務をする。
だが顔は見せられない。
だから猫マスクを作ってもらった。
今度はヘリに乗って目標地点に向かう。
今回の任務は絶対安全だ。それの理由は・・・。
目標の近くで下ろしてもらった。
街がある。
人はいない。
ここは放射能もない。
だが人はいなくなった。
あたり前だ・・・。
事故の起こったチェルノブイリまでかなり距離がある・・だが放射能は目に見えない。
怖くて引っ越すだろう。
ガイガーカウンターをつける。
反応なし。
前進する。
レーダーのように放射能に反応する。
範囲は500メートル。
目標の人間が近くにいたら反応するはずだ。
廃墟の中に入っていく。
ちょうどいいビルを見つけた。
SCARを構えながら階段を登る。
コツコツと足音だけが響く
トラップをつけて屋上に向かう。
かつては人がいた街。
今は誰も住んでいない。
屋上についた所で装備を下ろす。
ノートパソコンを開く。
今回は新型UAVの実験でもある。
チェルノブイリ原発には人間は侵入できない。
機会なら可能だ。
小型で小回りもきく。
たぶん空軍基地から発進しているはず。
操作画面を見る。
操作可能範囲はそこまで広くはない。
ここが安全に操作できるギリギリの場所だ。
あと2.3キロ進めば微弱な放射能が残っている。
軍人にやらせればいいのにって思った。
けどせっかくの任務だ。
報酬もあるらしい。
UAVを操作する。
プリピャチ市内が映る。
暗視だがくっきり建物が見える。
実際に見るとさすがに・・・・。
話に聞いていたよりずっと恐ろしい。
道には装甲車が乗り捨てられている。
美月も画面を見ている。
暗証から熱探知モードに切り替える。
低空で飛行する。
熱源はない。
動物もいない・・。
まるでゲームをしているようだ。
観覧車が見える。
いた・・・。
上空を旋回して目標をとらえる。
ベンチに座っている。
ゾクッとする。
人間より一回り大きい。
見た目も恐ろしい。
映像データは常に基地に送られている。
しばらく目標を観察する。歩き出した。
何かを持っている。
「花束・・・?」
「みたいだね・・」
「なんでかな?」
UAVにはミサイルが積んである。
発射には許可が必要。
目標はトボトボ市内を歩いている。
原発の前に立ち止まった。花束を一つ置いて祈るように手を合わせた。
そしてまた歩きだした。
いくつかの場所に花束を置いて祈って回っている。
「まだ人間なのかな?」
「そうなのかな・・・」
「見てて・・辛いよ」
美月が少し悲しそうな声で言った。
何をしているんだろうか・・・・。
途中で立ち止まった。
こっちを見た・・・。
急に走り出す。
一瞬で分かった。
ヤバい・・・。
「美月、退却」
「・・うん」
ノートパソコンをしまってすぐに撤退する。
ビルを出て回収地点に向かう。
ヘリコプターを待つだけ。十分行動は記録できたはず・・・あの目は・・。
凄まじい恨みや憎しみの籠った目だった。
撤退しながらトラップを仕掛ける。
かかってくれればラッキーだが・・。
回収地点の近くの小屋に身を潜める。
美月が震えている。
無理もない・・・。
回収まで15分・・・。
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