私も結局美月と同じ部隊に入る事にした。
入隊試験もあっさりクリアした。
軍隊ってより警察っぽい感じだった。
重装備で100キロ行軍とかしないみたい。
射撃と格闘だけで入隊許可がおりた。
美月と私は特務班所属になった。
美月は羅紗のスーツを使うらしい。
よく許可がおりたな・・。美月と私で荷物を置きに部署に向かう。
居住区域の上の階層だ。
廊下はガランとしている。
「なんか・・・窓際って感じ」
「美月、シャラップ」
特務班とドアに書いてあるドアをあける。
真新しいデスクが2つ置いてある。
そう・・・それだけ。
「すっからかん・・・」
「つまり私と美月だけって事か・・・」
荷物を整理しとく。
電話が鳴る。
里香からだ。
「やっ、おめでとう。新設された特務班へ」
「ふむ・・窓際っすか?」
「私の特別な命令があれば動いてもらうから。それまでは待機ね」
「なんか暇ですね・・・」
「あなた逹に危険な事させる訳にはいかない・・・そんな事させられない」
「えっ・・・?」
「気にしないでね」
電話が切れた。
なんか・・心配してくれてた。
殺風景な部屋に荷物を置いていく。
一応チェスを持ってきた。美月がスーツを棚に置いている。
なんでかな・・・里香はなんで心配してくれるの?
まぁ・・私逹は遠い親戚って事になるしな・・。
それで心配してくれてるのか。
「綾、暇だし射撃場にいこ」「あ、うん。いいね」
ドアの鍵を締める。
なんかこう・・まぁいいや・・・。
ドアの形なんて拘らなくていい。
「綾、先にお昼食べとこう」
「うん、久しぶりハンバーガーにするかな」
この施設内にある料理はどれも美味い。
ハンバーガーもなかなか。油っぽくなくて食べやすい野菜が多めだ。
健康重視だな。
パンは胚芽だ。
最近なかなか見なかったけど。
お昼を取ってから射撃場に行く。
許可書を見せて銃を借りるPx4は持ち込みOkだ。
しばらく使ってなかったからクリーニングして使おう
銃の種類はかなりある。
「わぁ・・すごい!」
美月が目をキラキラさせている。
やっぱ男の子はこうゆうの好きなんだなぁ。
私は前まではSCAR Lを使っていた。
性能よりも見た目がよろしい。
なんかグッとくる。
せっかくだし新しいのも撃ってみるか。
西側の銃はきっちり整備点検をしないといけない。
M16はアメリカ軍が長い間使っている。
初期は欠陥品で話にならないと聞いた。
私はなるべくM16系統は使いたくない。
どうも給弾不良が多い。
イラッ☆とする。
やっぱりSCARにしとこ。
美月はまだ迷っている。
銃も所詮道具。
使い手によるのだが・・。
射撃場は広い。
耳栓をつけて撃ってみる。パンッ。
22口径ライフル弾は威力不足気味。
しかないけど・・。
6.8ミリの弾も開発されているが調達が難しい。
7.62ミリは反動が強すぎる
よって5.56ミリのライフルを使うしかない。
調子もまぁまぁだ。
悪くない。
少し休憩。
美月もSCARにした。
マガジン共有の事も考えて同じ物にしたらしい。
ちゃんと分かってる。
小柄な体だけどうまく反動を逃している。
美月はさすがだな。
「よぉ、生きてたのか」
話かけられた?
私・・・?
声のする方を見た。
茶髪の・・・いかにもって感じの男。
「・・・なんですか?」
「お前の横腹に風穴を開けたのは俺だよ」
ビクッとする。
痛みが蘇る。
「ははは、綺麗な女を見ると無性に撃ちたくなるんだよ・・」
「あなたが・・撃ったの?」怖い・・・。
私だって人間・・。
怖いよ・・・。
手首を捕まれる。
怖くて動けない。
「すげぇいい女・・俺の物になれよ」
「や、やめて・・」
周りの人が見てるのに・・止めようとしない。
「俺の部屋に来いよ・・ヤろうぜ」
「や、やだ・・」
顔を近づけられる。
気持ち悪い・・・。
「ねぇ、おじさん」
美月が立っていた。
「なんだ?ガキか」
「今の話は本当?」
「あぁ?」
美月・・マズイ・・。
「美月、ダメっ!」
あっという間に男に近づいてナイフを首筋に突き立てる。
ちょうど動脈。
動けば血が吹き出す。
美月の殺気が物凄い・・。「・・・あ、あぁ・・本当だ」
美月は男をにらみつける。横目で一瞬私を見た。
ゆっくりと離れた。
「僕の大切な人に触るな・・・こんど触れたら許さない」
美月が私の手を掴む。
「綾、行こ・・」
美月・・・。
静かな所に来た。
怖かった。
「綾、ジュース飲んで落ち着こう」
「美月・・あんな事しちゃダメ・・あぶないよ」
ジュースを受けとる
痛みがフラッシュバックする。
痛い・・・。
「何言ってんの?」
「美月は小さいんだからさ・・あぶないよ・・怪我とか・・」
「じゃあただ見てろって言うの!?」
美月が怒鳴った。
びっくりした。
「許せない・・・許せない・・僕の・・綾を・・傷つけたんだよ?許せない・・・許せないよ」
こんなに怒っている美月は初めて見た。
「美月・・私は大丈夫だよ?そんなに・・」
「怖がってた・・凄く・・綾にそんな思いさせたくない・・」
美月がギュッと手を握る。「綾にそんな思いさせない・・僕が守る」
こんな事・・・。
胸が高鳴る。
母親だって事を忘れそう。「泣かないで・・帰ろう?・・ねっ?」
「うん・・・」
ジュースを飲んでからゴミ箱に捨てる。
「ほらっ!」
美月が手を伸ばす。
私はそっと手を取る。
甘えてばかりだと思ってたけど・・・。
手を繋いで並んで歩く。
「・・・男ってさ」
「うん?」
「好きな人のためならなんでも出来るよ・・・バカだからね」
「ははっ・・そっか」
美月も私も微笑んだ。
「綾・・僕は意地でも綾のそばを・・離れないから」握る手に力がこもる。
「そんで・・・僕が綾を守るからね!」
ちょっと顔を赤くした。
キュンとして・・。
可愛くて・・・
でも頼もしい・・。
「美月も・・成長してたんだね・・反省しなきゃ」
「ん?なんで?」
「ずっと子供だと思ってたから・・・」
「見直した?」
「うんっ・・」
「ははっ、そっか!」
その笑顔を見て・・・。
私は強く思った。
たぶんこんなに愛しいと思う人はこの先出会えないと・・・。
「綾、お腹空いた・・」
「う、うん・・今日はご馳走作るね!」
「わあっ!ステーキがいいっ!むぅ・・けど焼き肉もいいかなぁ・・」
すれ違う人が微笑む。
「美月はやっぱし子供だね・・」
「むぅ・・」
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