所々でヒッチハイカーを見掛ける。
私は乗せる気持ちはさらさら無い。
身を守るために一番大切な事は親切にしない事。
危険をさけて無理に介入しない事。
また逆の場合も警戒する。これが一番だ。
親切な人は騙される。
親切そうな人にも騙されるなんとも嫌な世の中だ。
モーテルについた。
ホテルはない。
ここで十分だ。
部屋を確認しておく。
一応ショットガンを持ち込む。
レミントンM870だ。
テーブルに置いておく。
美月と美空は異常がないか探索中だ。
警戒して悪い事はない。
死ぬよりマシだ。
「ママ、異常無し」
「うん、了解」
美月はベッドにボフッと寝転がる。
美空は美月の上に飛び乗るはしゃいでるな。
「さて、夕飯買ってくるかな・・・二人は待ってなさい」
「はーい!」
近くにスーパーがあったはず。
車に乗って再度ホルスターのPx4を確認。
車を走らせる。
あの子たちなら留守番させても不安じゃない。
SASが来られたらさすがにやばそうだが。
師匠によく任務の話を聞いた。
感情を捨てる。
特殊部隊の原形となった彼等はとことん洗練されている。
入隊するだけでも大変だ。頭も体も最高でなければならない。
師匠が隊長として立てこもりされた建物に突入した事があった。
犯人は訓練された子供だった。
恐らく撃つのを躊躇わせるため、テロリストが考えたのだろう。
だけど彼等にとっては子供だろうが銃を持っているだけで危険と判断する。
MP5を容赦無く発砲。
倒れても死んでいなかったらフルオートでとどめをさす。
子供だろうが関係ない。
胸に9ミリ弾が何発も撃ち込まれる。
死ぬまで。
フラッシュグレネードで敵を麻痺させる。 閃光を見ても平気なガスマスクもつけていたらしい。初めて聞いた時は怖かったな。
まさに殺人マシーンのような・・・。
人間は訓練でそうなってしまうんだと。
そして私もそうなってしまっていた事を。
考えるのはやめよう。
昔の事だ。
スーパーについた。
あんまり大きくない。
「ふんふーん・・・」
菓子パンとかをカゴに入れていく。
たいした物はないな。
「紅羽・・・?」
振り返らない。
その名前で呼ぶのは一部の人間だけだ。
無視してレジで会計を済ませる。
車に向かう。
「おい、紅羽」
チラリと後ろを見る。
嫌な思い出がフラッシュバックする。
日本にいた時私を脅迫して体を迫ってきたあいつだ。喋りたくない。
車に乗ろうとする。
「おい、待てよ」
「・・・・なんでここに?」「色々あってな・・少し話さないか?」
目を見る。
だいぶ大人しくなったようだ。
私を悪いようにする気は今のところはないみたい。
どうするかな。
断って撃たれたりしても困る。
「分かりました・・・」
「近くに家があるんだ」
「乗ってください」
名前は知らない。
チーフと呼んでいた。
車に乗ってきた。
私はPx4を片手でチーフの脇腹に突きつけて片手で運転する。
「そんなに・・警戒するな」無視して指定された場所に向かう。
こじんまりとした家だ。
車を止める。
Px4をホルスターに戻してついていく。
美月たちがまっている。
長居は無用。
テーブルに座る。
「どうだ?コーヒーでも」
「結構です。手短に」
「昔の事は悪かったよ」
椅子に座って私を見る。
そんな優しい目をされても私は信じない。
やらしい事・・・たくさんされたから。
日本で仕事を見つけてしばらく働いた。
髪を黒に染めて紅羽という名前で仕事をした。
チーフは私の秘密をバラすと言ってきた。
言われたくない秘密を。
私は従いたくなかった。
けど・・・従うしかなかった。
師匠のためでもあった。
毎週やらしい事をされた。思い出したくない。
テーブルにPx4を置いてチーフを睨む。
「話ってなんですか?」
「いや・・最近はどうなんだ?・・まだ続けているのか?」
「あなたには関係ありません」
「そうか・・・前より綺麗だな・・輝いて見えるよ」寒気がする。
こんな事言われたくない。「大した話がないなら帰ります」
「なぁ・・・またしないか?お前の体が欲しい」
Px4を構えた。
トリガーに指をかける。
「ふざけるな!」
目が変わっている。
やはり来るべきでは無かった。
近づいてくる。
「なぁ・・・しよう」
ズボンを下ろした。
「来るな・・・」
撃てない・・・。
どうして?
ゆっくりPx4を掴まれる。払いのけてあとずさる。
抱きつかれる。
「離せ・・・んっ」
固い物が当たる。
「日本では満足させてやったろ?」
孤独な時・・寂しい時・・・こいつはやってきた。
私は・・・。
「離して・・・もう・・やめて」
グリグリとチンコを押し付けられる。
「しゃぶってくれ・・昔のように」
屈んでしまう。
Px4を取られた。
昔のように従う。
私は・・・こいつを。
口に含んで舐めまわす。
「おぉ・・・いいぞ」
舌で先っぽを舐める。
動かして刺激する。
「あぁ・・上手いな」
ハッとする。
Px4を奪い返す。
「・・・はぁ・・」
「お前もその気だったじゃないか」
「違う・・・」
「お前はまだ淫乱だな」
「違う!!」
「さぁ、続きを・・・」
バシュッ。
チーフが倒れた。
私は撃ってない。
「なかなか良いね」
美空・・・・。
M1911のスライドが変えられている。
「ママ、大丈夫」
「美空・・・どうして?」
「においで分かったの・・・美月には見せたくなかったから」
「・・・・」
「行こう、目撃者はいない」美空についていく。
チーフは死んでいる。
車に乗る。
美空がミネラルウォーターを手渡してくれた。
「口をゆすいだほうがいい」「うん・・・」
美空はサイレンサーのスライドを交換して普通のM1911に戻した。
まだ試作段階。
口をゆすぐ。
怖かった・・・壊れてしまうかと。
「ママ・・大丈夫だよ」
「美空・・・」
「ママは昔寂しくてそう思ってしまっただけ」
「・・・うん」
美空は私に抱きついた。
「今、大切な人がいるでしょ?」
「・・・・うんっ」
あんなやつ・・・。
来るのを待っている私もいた。
寂しかったから。
孤独だったから。
「今のママは違うよ・・」
「うん、そう・・私は違うの」
車を走らせる。
美空はにおいで分かったのか。
「ママが違う場所に行くと分かった時にすぐに向かったの」
美空は微笑んだ。
美空がいなかったらどうなってたのかな。
考えたくない・・・。
モーテルに戻る。
美月が心配そうに待っていた。
私はすぐに抱きつく。
「あ、綾っ?」
「美月・・・大好き」
「えっ・・・うん・・ぼくも・・」
怖かった・・・凄く。
美空も抱きついてきた。
あいつはもういないから。
忘れよう。
買ってきた物を広げる。
「ふむ・・菓子パンとおかずとジュース」
「僕これにする!」
美月がジャムパンを掴む。「だめ、それは私の!」
美空がそれを奪う。
可愛いな・・・。
今を生きればいい。
女ってそんな生き物だから・・・。
※元投稿はこちら >>