ヨーロッパについてしばらくして。
おじさんの家の敷地内で工事が始まっている。
ママは腕を組んでそれを眺めている。
「私の学校っ!マィ、スクゥウウル!」
「ママ、良かったね」
「うん、美月のおかげ」
「えへ・・僕のおかげか」
美空は大福とマックと遊んでいる。
大福はこの土地にもだいぶ慣れてきた様子。
マックとじゃれている。
ヨーロッパの空気は懐かしいな。
少し麦のにおい。
「さて、お昼作るかな・・美月、美空呼んできて」
「うん、わかった」
ママが家に向かった。
おじさんと仲もいいし結婚すればいいのに。
「美空、お昼だってさ」
「あ、うん・・」
マックと大福が並んで座っている。
マックも大福もメス。
残念ながら仔犬はできない「仔犬欲しかった?」
「まあね・・僕、仔犬触ってみたいなぁ・・」
美空が僕に腕をからませてきた。
相変わらず僕はドキドキしてしまう。
いい加減慣れないと。
「美月、子供欲しいね・・」「うん・・・えっ!?」
美空は微笑んでいる。
見た目は全く変わらない。美少女のまま。
「欲しくない?」
「僕、僕は・・」
「美月と私の子供・・欲しいでしょ?」
「まぁ・・まだ早い・・」
「なにそれ・・」
僕たちに子供はできない。それは分かっている。
「冗談よ・・私たちに子供は出来ないよ」
「うん・・」
美空はそれでも笑っている「美月がいればいいもん」
「ははっ、僕もだよ!」
手を繋いで家に戻る。
マックも大福も付いてきたおじさんとママが料理を作っている。
僕と美空は椅子に座って待つ。
広い食堂。
前は広すぎると思っていたけど今はちょうどいい。
今日はおにぎり。
何種類もある。
「いただきます!」
四人でぱくぱく食べる。
「おじさんはママと結婚しないの?」
ママとおじさんは一瞬固まる。
「ははっ、ありえない!」
「そうだよな!」
僕は首を傾げた。
なんでかな?
ママがおじさんの肩を叩いた。
「あんた、美月と美空に言ってなかったの?」
「ああ・・」
おじさんは軽く咳払いをして僕たちを見る。
「俺はな・・女には興味ないんだ・・分かるな?」
「ほぇ・・」
「ふぇ・・」
つまりそうゆう事。
それ以上は聞くまい。
おじさんの家のすぐ近くの武器倉庫がある。
なかなか大きい。
セーフルームほどではないけどかなりの種類の銃器。銀兎と羅沙スーツもここに保管してある。
美空と僕は椅子に座ってスーツを眺める。
「まだ改良できるかな?」
「美月のは完璧に作ったつもりだけど・・・まだ改良できるよ」
「そっか・・」
ヨーロッパに戻ってから訓練は欠かさずやっている。銀兎と羅沙にはたまになる時もある。
けどスーツを着て組手をしたりするだけ。
必要な時には着て戦うつもり。
「美空、夢・・できたよ」
「なに?」
「世界に種をまくんだ・・平和の種・・」
「・・種?」
「僕のアイディア・・平和に繋がるような・・考えの種」
「平和って・・戦争を無くすとか?」
「そんな感じ・・・」
美空はバカにするようにクスッと笑った。
別にムカつかない。
「僕が種をまいて・・誰かが水をやってくれれば・・きっと・・なると思う」
「人間が地球にいる限り戦争も平和も無いよ・・」
美空はため息をついた。
それは僕もよくよく分かっている。
人間は醜い所もある。
けどとても暖かくて優しい生き物でもある・・・。
「僕は人間の優しい部分を信じたい・・・」
美空が手を握ってきた。
暖かい・・。
美空は笑っている。
「美月・・やっぱり素敵・・・大好きだよ・・美月のそうゆう所」
「ははっ、ありがと」
僕も握り返す。
「二人でやろう・・」
「うん、美月と作るよ」
またスーツを見る。
黒いボディ。
可愛いフォルム。
このスーツは捨てられなかった。
どうしても・・・。
夜になってから銀兎と羅沙になった。
組手をするため。
日本にいた時よりさらに強くなった。
「ほっ、やっ!」
僕の回し蹴りを綺麗にかわす美空。
隙をついてくる。
「てやっ!」
抱き付いてきた。
押し倒される。
「ははっ、負けた・・」
「よっわーい」
美空は僕に勝つといっつもこのセリフ。
「銀兎・・ううん・・美空、キスしよ」
「あは・・いいよ」
倒れたまま抱き合って。
キスをする。
月がまた僕たちを見てる。好きなだけ見ればいい。
僕はやめない。
美空とのキスを。
生きる事を。
永遠にこの世界を美空と眺める。
「んっ・・ちゅっ・・はぁ」唇を離す。
美空がヘルメットを外した僕もヘルメットを外す。
「美月・・」
「美空・・」
お互いの名前を呼ぶ。
分かっていても確認が必要気持ちの確認。
想いの確認。
「好き・・愛してる」
ぴったりと重なるようなタイミングで。
同じ想いを伝えた。
二人で変えて行こうと思う僕のまいた種が悪用される時は銀兎と羅沙の出番。
芽が出ないうちに摘み取る
そうならないように信じたい。
人間の優しい部分を信じたい。
世界は愛せなくても。
信じたい・・・。
人間を・・・。
美空て芝生に寝転がる。
「美月、言ってよ」
「なに?」
「今思ってる事」
「えーっ・・なんか恥ずかしいよ・・ドラマのセリフみたい・・」
「言って・・」
「世界一・・愛してる」
美空がクスッと笑った。
「ははっ・・宇宙一じゃないの?」
「なんだよそれ・・きりがない」
「まぁ・・・60点くらい」
「はぁ・・そうですか」
美空には全く飽きない。
これまでも。
これからも。
一生飽きないで愛せる。
大事な大事な・・僕のお嫁さん。
「今のは0点・・」
「うっさい!人の心勝手に読むなよっ」
「ばか・・ははっ!」
「あははっ、僕は、ばかだ」「認めた・・」
美空の手を握った。
昔も今もこれが一番好き。「幸せだね・・美空」
「うん・・幸せ・・」
幸せ。
最高に幸せ。
言葉にできないよ。
とにかく幸せ。
【・・・End・・・】
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