ルーシーさんの訓練風景を眺める。
おじさんとルーシーさんは昔、相棒だったらしい。
鋭い銃声。
僕と美空は双眼鏡で目標を見る。
当たってる。
ど真ん中。
ルーシーさんはL96を使っている。
愛用の物らしく所々手が加えてある。
「うんうん・・悪くないかな・・」
「・・・・」
おじさんは黙ってスポッター用スコープを見ていた。たぶん僕たちの方が遠くまで当てられる。
だから教わる事はない。
クルミちゃんは家でクッキーを焼いている。
今家にはクルミちゃん一人だけ。
大丈夫かな?
ルーシーさんは満足気な顔おじさんは僕たちを見る。「美月、美空・・訓練するか?」
美空と僕は頷いた。
待ってましたって感じ。
おじさんの所に駆け寄る。「今日は何するの?」
「そうだな・・・ちょうどいいし狙撃の訓練は?」
ちょっと悩んでた。
ルーシーさんのプライドが傷つかないかなと・・・。ここは空気を読もう。
「拳銃の訓練したいなぁ・・美空はどう?」
「うん・・美月と同じ」
おじさんは少し考えてから頷いた。
車に乗っている装備を取りに行く。
今日は何かなぁ・・・。
ケースを開けると・・。
とっても綺麗な装飾が施されたSIG P220。
シルバーのスライド。
ゴールドのフレーム。
これ訓練用のじゃないなってすぐに悟った。
「あ、ごめんね・・それ私のだ」
ルーシーさんがニコニコしながら立っていた。
「綺麗でしょ?」
「あ、はい・・」
ルーシーさんはケースからP220を取り出した。
「こんな装飾・・無駄なんだけどね・・」
なんか悲しそうな顔だ。
「綺麗で・・美術品みたいです」
ルーシーさんはゆっくりケースにP220を戻した。
そっとスライドを指でなぞった。
「銃ってよくく分からないよね・・・人を殺す道具なのに・・綺麗に装飾されたり・・」
ルーシーさんはハッとして僕たちを見た。
「あはは、ごめんね。ほら、たぶんこっちだよ」
よく似たもう一つのケースを指差す。
僕はケースを引っ張っぱり出して開けた。
G18Cだ。
短めのフォアグリップ付きでフロントサイトに小型のダットサイトが付いているフレームは赤。
30連マガジンがいくつか。「おい、クロス・・子供になんて物使わせる気だよ・・・」
ルーシーさんはかなり驚いている。
おじさんは後ろで自慢気に笑っていた。
「まぁ見てろ・・そこらへんにいるガキとは違うぞ」おじさんは僕と美空の頭を撫でた。
9mm弾という事なので耳せんをする。
ある程度は聞こえる。
いつものように安全装置を外す。
「美月、反動の逃し方は分かるな」
「はい・・」
「じゃあ撃ってみろ」
まずは腰だめで。
フォアグリップがあるから安定する。
パララッ!パララッ!
バーストで撃ってみる。
なかなか悪くない・・。
次にダットサイトを使って撃ってみる。
素早く往復するスライド。小さい分なかなか安定しない。
扱いが難しい。
まぁマシンピストルなんて近距離でばら蒔く物だし。素早くマガジンを交換する・・・。
セミオートだとどうかな?切り替えて撃ってみる。
パン、パン。
何発か撃ってからチェンバーに弾が無いのを確認して安全装置をかけた。
マガジンはすぐに抜いておく。
「おじさん、右に反れるよこれ」
おじさんにG18Cを手渡す。てか民間でフルオートは禁止されてる。
さすがおじさん・・。
逮捕はされないってニヤニヤしながらおじさんは言ってたな。
おじさんは軽く撃ってからうんうん頷いた。
「たしかに・・後で調整しなきゃな」
しばらくマシンピストルの使い方を習った。
美空の方がうまい。
難なくまとめて当てていた・・・。
車に乗って家に戻る。
「また美空に負けた・・」
「あはは、美月も上手かったよ」
「うむぅ・・・」
家に帰るとクッキーちゃんがクッキーを焼いていた。いいにおい。
「クルミ、いい感じに焼けたね!」
「ママも食べて!」
その光景を見て。
うらやましいなって思った・・・。
お母さんって・・あんな感じなのかな。
「美月・・」
「うん?」
「いいよね・・ママって」
「うん・・」
おじさんは少し悲しそうな顔をしてから僕たちを抱き締めた。
大丈夫・・僕たちにはおじさんがいるから。
クッキーは美味しかった。ナッツやアーモンドが入ってる。
クルミちゃんは僕の様子をちらちら見ながら目が合うとニコッと笑う。
「美月くん、どう?」
「美味しいよ!」
「ははっ、良かった」
その日は何事もなく終わる・・・かと思った。
夜中に目がさめて。
階段をおりて食堂に向かう
なんかにおいな・・。
キッチンの方からだ。
ドアの隙間から覗くと。
美空が何かしている。
「おい、美空?」
ビクッと震えてから振り返った。
泣いている・・・。
「美空、どうしたの?・・」お皿の上に・・・。
黒い塊が・・・。
何これ・・・?
美空は悔しそうに泣いている。
「できない・・なんで・・?本の通りにやったのに」テーブルの上に料理の本があった。
「料理の練習したの?」
「うん・・ぐすっ・・」
美空は涙目で・・。
可哀想になってきた。
頭を撫でて抱き締める。
「どうしたの?なんで急に料理の練習したの?」
美空は僕のパジャマを掴んで泣きじゃくる。
しばらくして落ち着いた。「僕の部屋行こう・・後片付けは明日しよ」
「うん・・」
手を繋いで部屋に戻る。
二人でベットに座る。 美空の背中をさする。
悔しそうにむっとしている「美月が・・」
「うん?」
「美月が・・美味しいって言った時・・悔しかった・・」
「ああ、クルミちゃんのクッキーの時?」
美空は頷いた。
悔しいのか。
まぁ同じくらいの年齢で自分より料理ができる女の子がいたら少し悔しいかな?女心はまだ分からない。
「美月のせいだよ・・」
「えっ?僕のせい?」
「うん・・」
「なんで?」
美空は黙ってしまった。
涙目で・・・。
こんな泣いている美空は見たくない。
笑って欲しい。
手を握って。
美空の頬っぺたにチューをした。
「これで許して・・」
「やだ・・」
まだムッとしてる。
僕にすり寄ってきた。
キュンとして・・。
ドキドキして・・。
おかしくなりそう。
「抱いて・・」
「うん・・うん!?」
「抱いてよ・・」
「えっ?美空!?」
「抱いて寝てよ・・抱き締めてよ・・・」
「あ、うん・・」
何、焦ってんだ。
妹だろ・・・落ち着け。
抱いて寝るくらい・・。
電気を消して美空とベットに入る。
布団にくるまって美空を抱き締める。
ドキドキ・・。
なんで?。
いつも一緒に寝てたのに。こんなに・・。
「美月・・・」
「うん?」
「離れないでね・・」
「うん・・」
僕は・・美空の事が・・?いや・・そんなのあり得ない。
兄妹なのに。
美空は可愛いけど。
妹だし・・・。
どうしよう・・。
寝れない。
美空を好きなんて事ない・・・・。
きっと・・何かの間違いだ・・・。
美空は大事な妹。
それ以上でもそれ以下でもない。
美空がギュッとくっついてきた。
長い夜になりそう。
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