銃声が響く。
別に戦争してるって訳じゃない。
おじさんの友達がやってきて年に何回か射撃大会をやる。
もちろん非公式。
美空と座って様子を眺める「私たちも撃ちたいね」
「うん・・いいなぁ」
おじさんの友達がドラムマガジンのAK47を裏山に向かって売っている。
騒音など気にせずに撃てるからみんな幸せそう。
「遅れた・・・おーい!」
後ろから声がした。
金髪のアメリカ人女性。
美人でモデルさんみたい。その人の後ろにも女の子がいた。
金髪で僕たちと同い年ぐらい。
おじさんが手を振る。
「おお、ルーシー。遅かったな」
おじさんと握手した。
ルーシーさんは長いバックを持っている。
「クロス、この子たちは?」ルーシーさんは僕たちを見る。
「あぁ、初対面か・・美月と美空だ。知り合いの子供で俺が養父って事になってる」
ルーシーさんが近づいてきた。
手を出してニコッと笑った「よろしくね!可愛い姉妹ねっ」
僕と美空は握手した。
姉妹・・・?
否定するのが面倒だ。
初対面ではいっつもそう言われる。
後ろにいた女の子も近づいてきた。
「あっ、この子は私の娘ね!ほらっ、挨拶しなさい」
女の子は緊張しているみたい。
おずおずと手を出した。
「クルミです・・よろしく・・・」
「よろしくね!」
「よろしく・・」
握手を返す。
クルミって・・・胡桃?
なんな可愛い名前だな。
「クルミはそこで座っててね!」
「はい・・・」
ルーシーさんとおじさんは向こうに行った。
クルミちゃんは立ったままだ。
「ここ座る?」
僕はベンチの落ち葉を払った。
「あ、うん・・」
クルミちゃんはゆっくり座った。
上品そうな子だな。
顔つきも少し大人っぽい。僕はテーブルにあったオレンジジュースをコップに注いで渡す。
「これ美味しいよ!」
「ありがとう・・」
受け取り方まで上品だ。
一口飲んで微笑んだ。
「美味しいね」
「そっか、良かった!」
僕たちを見ている。
美空はそっぽを向いている「可愛い姉妹だね・・」
僕はさすがに言わなきゃいけない・・男の子だって。「あのね・・姉妹じゃないんだ・・僕、男の子だから・・」
「えっ!ごめんなさい!」
クルミちゃんはハッとして謝った。
「あ、いいよ。よく間違えられるから・・」
「ふーん。そうなんだ・・」クルミちゃんはお嬢様って感じかな。
服も高そうだ。
「可愛いね・・美月くんって何歳?」
「ん?僕と美空は双子で10歳くらいだよ」
「へぇー、私は11歳だよ」
「お姉さんかぁ・・」
話は弾んだ。
美空は黙っていた。
こいつはいつもそうだ。
あんまり他人と会話しない・・僕はそんな美空が嫌いだ。
喋ればいいのに。
ルーシーさんがバックから銃を取り出している。
FG42、M2カービン・・。
美しい木目だ。
艶々輝いている。
ルーシーさんとおじさんはどういう関係なのかな?
恋人とか?
恋人ならキスしたりエッチな事するのかな?
まぁ余計な詮索はよそう。美空は黙ったまま。
「美空?どうしたの?」
「むぅ・・・」
「・・・?」
ほっとこう。
美空とはずっと一緒だったけど分からない所もある。「クルミちゃんは銃は好きなの?」
「うーん・・分かんないなぁ。装飾されてるリボルバーとか好きだよ」
やっぱりお嬢様だ。
友達でこんなに可愛い女の子はいないなぁ・・。
射撃大会は夕方には終わるおじさんの友達たちは何かスッキリとした表情で帰って行った。
ルーシーさんとクルミちゃんはまだ帰ってない。
「スッゴいスッキリしたわ・・ふぅ・・」
「ママ、お疲れさま」
クルミちゃんはタオルを手渡す。
「サンキュ、クルミ!」
クルミちゃんは頭を撫でられると微笑んだ。
ママ・・お母さんか。
僕たちのお母さんは・・いないんだよな。
いいなぁ。
おじさんが後片付けを終えて戻ってきた。
「ルーシーとクルミはしばらく泊まるからな」
・・・・・はい?
「泊まるの?なんで?」
美空が焦っている。
僕は嬉しいけど。
「しばらく休暇を利用して狙撃訓練したいそうだ。ルーシーは現役スナイパーだからな。お前たちも何か教われよ!」
現役スナイパー?
凄いなぁ・・・。
「やったぁ!」
「・・・・」
「美空?」
また黙ってしまった。
ルーシーさんは僕たちの頭を撫でた。
若干硝煙のにおい。
「天使の姉妹ちゃん。よろしくね!」
おじさんは苦笑した。
「ルーシー・・片方は男だぞ」
「はぁ?・・・ホントに?」僕は手をあげる。
「美月・・くんが・・男の子?」
いい加減髪の毛切るかな。
夕飯はにぎやかだった。
いつもより美味しく感じた僕は夕飯の後に家の外で寝転ぶ。
芝生があって寝転ぶと少しチクチクする。
「ふはぁ・・・」
クルミちゃんって可愛いな・・・。
ボーイフレンドはいるのかな?
気になるなぁ。
「美月・・」
「ん?なぁに?」
美空が横に座った。
「私って女の子っぽくないし・・可愛くないよね」
「何言ってんの?美空ぐらい可愛い女の子はいないよ・・・」
「ふえっ?」
薄暗いけど照れてるのが分かる。
美空はテレビに出ないのがもったいないくらい。
ずっと一緒にいたけど見とれちゃうしドキッとする。「もし美空が妹じゃなかったら結婚したいかな・・・ははっ・・」
「ばか・・・」
美空はまた照れてる。
「でも妹で良かった・・・美空のお兄ちゃんで・・良かった・・ずっと一緒にいられたから・・」
美空は立ち上がって背を向けた。 「・・ふんっ・・お風呂行ってくる!」
歩くとキラキラの銀の髪が揺れる。
それもまた綺麗。
「美空・・怒ってるの?」
「ううん・・なんか安心した・・かな?」
「へぇ・・・」
美空は家に戻って行った。また寝転がる。
月が僕を見ている。
「なんだよ・・そんなに見るなよ・・」
満月で綺麗。
僕の名前にも月って字がある。
日本語の漢字・・・。
手を伸ばして。
月を掴む。
ギュッと握る。
何も掴めるはずない。
「美月くん、隣に座っていいかな?」
「あ、クルミちゃん・・ちょっと待って」
僕はポッケからハンカチを取り出して芝生の上にひく「どうぞ・・汚れないようにね」
「ははっ、ありがとう。紳士だね」
「えへ・・おじさんには女の子には優しくって言われてるし」
クルミちゃんはハンカチの上に座る。
上品な子だな。
「クルミちゃんはお嬢様なの?」
「えーっと・・まぁ・・お嬢様かな・・」
やっぱし・・・。
雰囲気からして違う。
「明日、食堂のキッチン使ってクッキー焼くから・・食べてくれる?」
「うん、食べたい!」
「ははっ、ねぇ・・美月くんって・・キスした事ある?」
「ふぇ?キス?・・チューならあるよ」
クルミちゃんが急に大人っぽい顔になる。
「私とキスしてみない?」
「へっ?頬っぺたに?」
クルミちゃんは僕の口に人差し指をチョンとあてた。「唇と唇だよ・・・」
「へぇ・・大人っぽい・・」「してみる?」
いいのかな?
周りには誰もいないし。
好奇心に負けそうかも。
「してみたい・・」
クルミちゃんはクスッと笑った。
「美月くんはキスは初めて?」
「うん・・唇でチューはした事ない・・」
ゆっくり顔が近づいてきた・・・。
ドキドキは・・・する。
けど美空の時と違う。
ただの緊張というか。
美空を見てドキドキするのとは違う。
僕も唇を近づけて・・。
吐息がかかる。
初めてのキス・・?
もう少しで触れそう。
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