おばちゃんの家の暮らしにもなれてきた。
「綾ちゃんも新しい家が必要ね」
「新しい・・家?」
「ちょっとおいで」
大福を連れてしばらく歩くと。
かなり大きな屋敷。
庭もあって豪華だ。
「おばちゃん・・ここは?」おばちゃんのしわしわの手が私の頭を撫でる。
ニコッと笑っている。
「ここは私の秘密基地よ」
「秘密基地?」
家に入る。
所々ホコリだらけ。
クローゼットを開くとエレベーターがあった。
「わぁ・・」
「綾ちゃんもおいで」
エレベーターに乗る。
地下?広い広いシェルター・・・。
銃器や装備が並ぶ。
「私のコレクションよ」
「おばちゃんの?・・凄いね・・・」
新型の物から大戦時代の物まで。
「ここを綾ちゃんにあげる」「おばちゃん・・」
「一人で暮らすのは嫌?」
「ううん・・頑張る!」
一生懸命家の中を掃除して綺麗にした。
一人暮らしには広すぎるな・・・・。
毎日おばちゃんの家に行った。
大福の散歩もした。
しばらくしてルカのお墓が出来た。
私の愛した人。
おばちゃんとお墓に向かう
お寺にあるお墓。
長い階段。
ゆっくりと昇る。
女の子がいた。
箒で掃除をしている。
「こんにちわ!」
おばちゃんは女の子の頭を撫でた。
「こんにちわ・・」
女の子は私を見つめる。
「綾ちゃん、この子は利奈ちゃんって言うのよ」
私は利奈を見つめて。
「利奈ちゃん、よろしくね」「はぃ・・」
利奈と握手した。
ルカのお墓はこじんまりしている。
白木ルカ、楓と書いてある私の前の名前。
手を合わせて・・・。
祈る。
しばらくしてこの田舎にある学校で教師をやる事になった。
初めはなかなか慣れなかったけど。
子供たちが無邪気に笑う。それを見てとても幸せになる。
可愛いな。
私にも子供がいたけど。
忘れたの・・昔の事。
いつものようにおばちゃんの家に行くと。
おばちゃんは眠るように亡くなっていた。
私はおばちゃんの遺言通りに葬式をあげた。
遺言には私宛に遺産があると・・・。
とんでもない額の・・。
大福と私はおばちゃんがくれたこの家で暮らした。
お墓にお参りに行くうちに利奈とも仲良くなって。
前からデザイナーの仕事をしていたのでそれも続けた
学校の新しい制服のデザインも私が担当させてもらった。
近所の子供が私の所にやってきて。
「私、清水雪っていいます。師匠と呼ばせてくださいっ!」
「うん?師匠?」
眼鏡をかけた可愛らしい子、デザインの勉強をさせてあげた。
色々教えてあげた。
そんな日々。
私もまた幸せになってきた・・どんどん心の傷が癒えていった。
利奈のパパに剣術を習って
学校で教師をして。
利奈と雪と遊んで。
数年がたった。
もう田舎の人とも顔馴染み学校では猫先生と言われるようになった。
今年は利奈が中学生にあがる年だ。
「綾さーん!」
「利奈ちゃん!おめでとう!」利奈とハイタッチ。
「これからは先生って呼ばないとね!」
「うん、勉強がんばろうね」
私の子供はどうしてるかな・・・・。
クロスが引き取ったと聞いた。
師匠から連絡先を聞く。 国際電話をかける。
「もしもし?クロス?」
「その声・・楓?」
「あははっ、今は綾って名前に変えたんだ」
「そうか・・大丈夫か?」
「いつもの冗談はどうしたよ!」
電話ごしにクロスは泣いている。
「良かった・・元気になったんだな・・美月と美空は元気だぞ」
「そっかあ・・会ってみたいな」
「そろそろお前の元に返した方がいいかと思う・・」いいのかな・・。
私は綾・・。
楓じゃない。
「私はクロスの知り合いって事にして・・しばらく引き取ってもいいかな・・理由はどうしよう」
「俺が適当に言っとくよ!ヨーロッパに迎えに来い!」
「うん、わかった!」
住所を聞いて。
休日を利用してヨーロッパに向かう。
飛行機に乗るのは久しぶり空港で車を拾って住所に書いてあるクロスの家に向かう。
楽しみ・・。
また会えるんだ。
私の子供・・元気かな。
タクシーからおりて。
出迎えた子供は・・。
予想以上に綺麗で可愛くて・・・。
どちらも超美形。
男の子は美月。
女の子は美空。
そして美月は・・ルカにそっくり。
モジモジと挨拶をしてきた私は抱き締めた。
可愛くて可愛くて。
たまらなかった。
美月は・・ルカにそっくり・・愛した人に・・。
「綾・・・」
「ママ・・」
寝てしまっていたようだ。「んぁ?・・どした?」
「ごめんなさい・・」
二人共ショボンとしている「綾の前でキスしちゃって・・ごめんね」
「ママ、ごめんなさい」
また夢で昔の事思い出しちゃったか・・・。
私は二人を抱き締める。
「可愛いから許す!焼き肉食べよっか!」
「うんっ!」
「ママ、大好きっ」
私の幸せは掌からこぼれたけど。 美月と美空は残っていた。私の子供は・・・残っていた。
美月を求めてしまう。
親子でエッチをしてしまう・・・ごめんね・・ルカ。けど最後の言葉は・・忘れないよ。
幸せだよ・・・。
凄く凄く・・幸せ。
「こらっ!肉ばっかり食わないの!」
「あぅ・・はい・・」
「野菜も食べないと元気出ないよぉ!明日は文化祭だかんね」
美月がムッとした。 「綾もピーマン食べてないよ・・・」
「美月のために残したのっ!ほらっ食いなさい!」
「あぅ・・・」
美空は不思議そうな顔をする。 「美月はピーマン嫌いなの?」
「うにゅ・・嫌いじゃない」こんな会話が出来るのも。ルカ・・あなたのおかげ。ルカだけは。
ルカの事だけは絶対に忘れないからね・・・。
※元投稿はこちら >>