パソコンをカタカタ。
目が疲れてきた。
「歳かな・・・否っ!過労のせいだっ」
コーヒーを飲んでシャキーンとする。
さすがにそこまで歳くってない。
最近パソコンを使う事が多い。
「綾ちゃん、悪い・・」
「ほぇ?草野先生?」
離婚は白紙に戻ったらしい、美月に凄く感謝していた。
「次の時間の体育の授業変わりに出てくれんかな?ちょっと腹痛くなってきて・・・・」
「いいっすよ、お腹大丈夫ですか?」
草野先生は苦笑した。
「昨日嫁の作った料理食い過ぎてね」
「あはは、お熱いですね。分かりました」
草野先生は病院に行くらしい。
あんまり酷くないといいけどな・・・・。
どこのクラスの体育の時間かな?
予定表を見る。
美月のクラスか・・・。
「ふむ・・ラッキーだな」
美月と美空の体育の授業を見れるとは・・・。
ちょうどお昼の後。
フルパワー状態だな。
コーヒーを一口飲んでから体育館に向かった。
美月のクラスと隣のクラスの生徒がいる。
ざわつく。
まぁ何せ私が来たんだからな。
しかたない。
私はステージの上に立つ。「列を作ってすわれっ!」
みんな指示に従った。
うん、従順だね。
いい気分。
「えーと、草野先生は事情が出来たので変わりに私が来ました」
ま、草野先生より私の方が遥かに人気あるからみんな嬉しそう。
ただ私はスーツのまんま。体育なんて教えられない。「えーと、じゃあ・・・ドッチボールとかやろう!」
みんなが歓声をあげる。
好きにやらせるのが一番。体を動かす楽しさを教えるのが一番重要な気がする。体育館に生徒が散らばる。私はステージで座って足をブラブラさせる。
みんな楽しそう。
美月と美空が来る前は生徒の笑う顔を見るのが幸せだった。
今は少し欲張りになってしまった。
「先生・・」
美空が私の横にちょこんと座る。
体操服も私のデザイン。
この学校の制服と体操服は日本一可愛いと胸を張って言える。
美空は今日は髪をいじっていない。
「どしたの?ドッチボールきらい?」
「うん、先生と話する方がいい」
可愛いな・・・。
頭を撫でてあげる。
「今日はツインテールにしないの?」
「うん、めんどくさくって・・・」
「そっか、美空ちゃんは可愛いしどんな髪型でも似合うよ」
「あ、うんっ」
美空は少し照れた。
可愛いな・・。
銀の髪は剣のような輝き。しなやかで癖毛はない。
「美月が・・・」
美空が指差す方向を見る。美月が早速ドッチボールをしてる。
「元気そうで何よりだね」
「うん、美月・・・」
美空は・・・私よりずっとずっと美月を愛してる。
自分を犠牲にしてまで・・銀兎になってまで美月を幸せにしようとした。
私には到底無理。
「うわっ、バカだ・・」
美空があきれてる。
美月は遊くんと二人だけになっている。
美月の戦闘性能は凄まじい、ドッチボールなんかで負けるはずない。
「さっさと負ければいいのに・・・」
美空がぼやく・・。
相手は留美と利奈のチーム・・・かなり残ってるし。「美月くんのいい所は分かってるでしょ?」
「あぅ・・・・」
美空は顔を赤らめる。
美月は頑固で諦めない。
どんな状況でも最後まで信じ通す。
私もそんな所が好き。
留美がボールを持って笑っている。
「がははっ、もう負けを認めろっ!」
なんという悪役。
ヒーロー物に出てくるような感じのセリフを大声で言っている。
美月と遊くんがニヤリと笑っている。
「なんで二人になったか分かるか?留美」
「僕らの作戦だよ」
留美が困惑している。
「な、なんだと・・・?」
美月と遊くんは余裕そうな顔。
圧倒的な戦力差だけど。
留美は二人を指差した。
「野郎共、やっちまえ!」
ボールを持っているのは留美だ。
一瞬シーンとしてから留美はハッとしてボールを投げつけた。
球は早いけど美月には当たらない。
遊くんがキャッチしてボールを投げ返す。
次々にやられていく。
美月も投げ返す。
女の子に当てる時はゆるーく投げている。
留美と利奈だけが残った。「くっそー!」
留美は悔しそう。
美月が遊くんにボールをパスする。
遊くんはニヤリと笑った。パシッ。
早い!。
留美の足にヒットした。
「うわぁ・・やられた・・利奈・・後は・・頼んだ・・・すまない・・ボスとして・・何も・・」
留美は外野にトボトボ歩いていった。
利奈はボールを掴む。
「私だけか・・えいっ!」
ゆるーいボール。
美月がキャッチする。
トコトコと利奈の所に歩いて行った。
利奈の肩にポンッとボールを当てる。
「僕たちの勝ちっ!」
大逆転・・・か?
最後のは反則でしょ?
体育の授業が終わり放課後になる。
私は机で物思いにふける。この生活が続けばいいな。幸せだよ・・凄く。
「先生っ!」
「おぅ?美月くん」
作文用紙を持っている。
「脚本出来ました!」
ニッコリ笑っている。
あぁ・・抱き締めたいよ。なんでそんなに可愛いの?ぐっとこらえる。
「どれどれ・・・ふむ」
パラパラと読む。
ふむ・・これは・・なかなか・・。
「いいねっ!ベリーグットです!」
「そっか!良かった!」
魔法使いとか出てきて良さそうだな。
子供向きで分かりやすい。「じゃあ僕の役目は終わりね」
美月はホッとしている。
「ん?何言ってんの?」
「えっ?脚本作ったから劇には出なくても・・」
私は美月の肩を叩いた。
笑顔で。
「そんな事許されない!」
美月は劇に出たくなかったのか。
そんなの許されないよ。
「えっ・・ええっ!!」
「魔法使いの役は双子にして美空ちゃんと美月くんに演じてもらうからね!」
美月は涙目だ。
「な、何で・・?」
「鏡を見なさい。その見た目で劇に出ないつもり?」美空と美月は超美形だ。
こんな可愛い子を客寄せに使わずにどうする?
「あわわ・・・」
「覚悟してね!これは決定事項だからっ!」
「う・・そんな・・」
美月の頭を撫でる。
「大丈夫っ!・・ねっ?」
「・・・・うん・・」
美月はしょんぼりして体育館に向かった。
我が子の初舞台。
楽しみだなっ!!
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