一階を見回る。
一年生の教室とか売店がある。
「なつかしいなぁ・・」
美月は今年の誕生日で15歳。
一年前は13歳。
「僕、誕生日忘れてて日本に来てから13歳って事気付いたんだっけ」
「私に似ておっちょこちょいだね」
「あははっ、綾もおっちょこちょいなの?」
「うんにゃ、まぁね」
美月の体の成長はもう止まっている。
死ぬまで子供。
ルカの遺伝のせいかな。
「身長伸びないしなぁ・・かっこよくなりたなぁ」
身長は低くはないが高くもない。
160センチくらいだったかな・・たぶん私と同じくらい。
「美月は格好いいよ・・」
「そかな?」
ギュッと抱き締める。
辛い人生を背負わせてしまった。
美空も辛いだろうな。
「綾、大丈夫だって」
「うん・・・」
心を読んでちゃんと理解してくれるようになった。
知ってもちゃんと理解して解釈しないと意味がない。手を繋いで見回りをする。売店の近くに自販機がある美月がガマ口の財布を取り出す。 「ジュース買おっかな」
「おごってくれる?」
美月はニコッと笑った。
「うん、いいよ」
まるで学生になった気分。なんかいいな・・・私って精神年齢低いから・・。
つっても自分で低いって思っただけだし誰かに判断してもらった訳じゃない。
「はいっ」
「ありがと・・」
プシュッとプルタブをひねって缶を開ける。
美月が買ってくれたから美味しい。
「なんか、綾と学校でデートしてる気分・・・」
「ははっ、校内デートか・・いいね」
どうしてもできなかった事の一つ。
学校に行った事のないからすこしやってみたい気持ちもあった。
二階を見回り美月の教室も見る。
特に異常はない。
三階も異常はなかった。
美月が窓から外を眺める。月明かりに照らされているゴクリとしてまう。
見慣れているはずだけど。美しい・・・。
私の息子なんだよな。
美月を好きになるたびに息子なんだって事が頭をよぎる。
叶わないよね。
息子に恋するなんて。
「来年も担任は綾がいいな」「ん?来年も私だけど・・」窓を眺めながら美月は呟いた。
私のクラスは卒業まで私が担任。
校長が決めた。
よく分からん校長だけどここんとこはグッジョブ!
「そっか・・良かった」
美月は優しく笑う。
私・・なんでこんなにドキドキするだろ。
最初はルカに面影を重ねてしまって・・でも今、美月をどんどん好きになってきている。
ルカよりも?
そんなはずない・・・。
「綾、幽霊ってもう出ないよね?」
「ふぇ?出るよ」
美月の表情が一気に青ざめる。
「え、え・・だって解決したのに」
「まだ出るってさ。見た人いるし」
「あわわわ・・」
「さ、宿直室戻ろう」
美月はさっと寄り添ってきた。
やっぱり子供だな。
ってか美月は幽霊が怖かったんだな。
宿直室に戻る。
美月はまだ震えている。
「みつきぃ・・大丈夫だって」
「綾・・」
布団をしいておく。
一人ぶんしかないな。
美月はさっと布団に潜りこんだ。
「綾、早く・・」
「はいはい・・」
添い寝してあげる。
家では珍しくない。
たまにエッチせずに抱き締めて寝るだけの日もある。「綾・・僕やっぱり怖いよ」「ははっ、本音言ったな」
「うん・・怖い・・」
「大丈夫・・お母さんがいるから・・ねっ」
背中をさする。
ルカより好きになるなんて・・ないよ。
だって私の息子だもん。
さすがにそれはない。
母親としての愛情もあるけど。
「綾・・」
「うんにゃ?なに?」
私は添い寝しながらテレビを見ていた。
「お腹すいた・・」
「ははっ、腹ペコめ・・」
怖いと警戒心が強くなる。嗅覚などのリミッターが解除される。
エネルギーをどんどん使ってしまうのだ。
それで腹ペコになる。
美空がそう言っていた。
美月が売店で買ったパンがまだたくさんある。
ひとつ適当に探り当てて美月に渡す。
「ほいっ、たくさん買ったね・・・」
「うん・・だって綾が安い物は買えるだけ買っとけっていったじゃん」
「あは・・そうだった」
安い物は大人買い。
これ鉄則。
抱きつきながらクリームパンを食べている。
なんか大人っぽい部分が多いようでまだ子供。
まぁ可愛いからいいんだけどね。
「綾・・エッチしたい」
「ああ・・そっか・・もう二人だけだもんね」
キスしようとした。
けど美月が手で止めた。
「違う・・誰かくる」
「へ?誰?」
「こっちに来る・・」
美月の目が変わる。
さっきまでの怖がりはどこに行った?
足音が聞こえる。
こっちに向かってくる。
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