テストも終わりってしばらくのんびりできる。
採点もプリント製作も終わったし。
机に座ってゆっくり伸びる「んきゅーっ・・コーヒー飲むかな」
コーヒーメーカーでコーヒーを作る。
いい香り。
シュガースティックを3本入れる。
校長に見られたら怒られるな。
コーヒーのなんたるかを知らない、これだから素人は困るとか言い出す。
ま、私は甘いコーヒーがいいのです。
甘党だから。
机に戻って一口飲む。
「うぅ・・・にがい」
もう放課後だし生徒も部活する子だけ。
美空は最近利奈の家によく遊びに行く。
仲良くなってくれて助かる「ふぁーあ・・さってと」
仕事も無いし美月の様子見てくるかな。
そう思った時、男の教員が話しかけてきた。 「黒木先生・・すみませんが宿直やってもらえませんか?」
「はぅ、宿直っすか?」
困った顔をしている。
「息子が熱を出してしまいまして・・・・」
「あぁ、いいですよ」
私は宿直やった事ないけど快く承諾した。
「ありがとう、今度何かおごりますね」
「えぇ、楽しみにしてます」ニコッと笑って返事をした必殺、悩殺スマイル!
たまに使うのもいい。
男の反応が面白いから。
「あ、でも宿直したらご飯作れない・・・」
あちゃー・・・。
美月に夕飯代渡すかな。
体育館に向かう。
みんなが青春してる。
うらやましぃ・・・。
美月はどこかな。
遊くんを発見したので聞いてみよう。
「おっす!遊くん、美月知らない?」
遊くんはボールをいじっていた。
「みー?体育館倉庫にいるよ」
「おぉ、サンキュ。部活はどう?」
遊くんはボールで遊びながらニヤリと笑った。
「みーのおかげで女の子がよく来るからみんな頑張ってるよ」
「ふーん、そっか・・」
遊くんは練習に戻って行った。
体育館の隅の方に女の子が何人かいる。
まぁ・・・美月だもんね、しゃーない。
体育館倉庫に行くと美月がボールに空気を入れていた「みーくんっ!」
「先生・・何その呼び方?」美月はポカンとしている。「あぁ、遊くんの呼び方真似しただけ!」
「あの・・恥ずかしいからやめて・・・」
モジモジしている。
可愛いやつよの・・。
美月は照れ隠ししながらこちらを見る。
「何か用事?」
「あのね、今日宿直だから夕飯好きなもの食べて」
「宿直?・・・なんで?」
美月は首を傾げる。
いちいち仕草が可愛いな・・。
「諸事情により言えません、美空にはあんまり好きにさせちゃダメだよ」
あの子には栄養士の資格とらせるくらいの勉強させるかな。
「僕も泊まる」
「はぅ?ナゼニ?Why?」
美月は心配している。
凄く・・・。
「美空に言われた・・・先生のそばにいてやって、って・・・」
「美空が?・・私は強いし大丈夫だよ」
美月はしゅんとしている。「僕も心配・・だから泊まる・・」
「美空が寂しがるよ・・」
美月が私の目を見る。
吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳。
ルカと同じ・・・青い宝石のような瞳。
「美空に怒られるよ・・・先生を一人にさせるなって・・・」
「・・・・うん・・わかった」
美空は美月を独り占めしたいはず。
美空は・・・いい子だな。「部活終わった職員室行くよ」
「うん、わかった!」
美月も美空もとってもいい子。
ルカ・・・良かったね。
優しくていい子に育ったよ体育館倉庫を出ようとした
野次馬がいた。
「猫先生が美月を・・・襲おうとしたっ!!」
見られてた?
いや、襲おうとはしてないっす。
「こらーっ!部活に集中しろっ!」
野次馬が散っていった。
美月は練習に戻って行った私はそれを眺めた。
元気にやってるな。
もしルカと幼なじみで普通に出会って同じ学校に行けたら。
こんな風にルカの部活風景とか見れたのかな。
私も普通の女の子だったのかな・・・。
師匠を恨む事は・・・あった。
私を拾ってくれて感謝してる。
でも・・・あのまま別の人に拾われたら普通に暮らせたかもって。
そう思うと師匠の事を・・・・。
考えるのはよそう・・。
私は私。
ルカと出会えたのもこの道を歩いてきたから。
他の人は嫌。
ルカじゃなきゃ・・・。
「先生っ!」
美月を見にきた女子生徒が話しかけてきた。
「ん?なぁに?」
「先生は美月くんを下宿させてるんでしょ?」
「うん、そだよ」
「美月くんについてもっと知りたいです!」
目をきらきらさせている。美月の裏・・・羅紗の事を知ったらきっと怖がる。
まぁ言わないけどね。
「美月くんが好きなんです」小声でボソボソ言う。
美月が一途で良かった。
女の子の気持ちも考えないでとっかえひっかえするような子じゃなくて。
そんな子だったら私も嫌いになってしまっただろう。「うーん。好きならさ・・どーんとぶつかっちゃえ!」「えっ!?」
「私から聞くより美月から好きな事や趣味とか聞いた方が・・・きっと嬉しさも倍になるよ」
「で、でも・・・」
「勇気が出ないなら手紙とか・・・ダメなら友達でもいいじゃん」
「あ、はい・・・」
恥ずかしそうに去って行った。
もう少し美月を見ていよう・・・私も恋してる。
職員室に戻る。
着替えとか無いしなぁ・・宿直室にはシャワーはあるけど。
一応愛用のシャンプーセットはいつも持ってる。
髪がしゅんとして落ち着く暇だし校長と喋るかな。
校長室のドアをノック。
返事がない。
「校長?あれ?」
居ない・・帰ったか。
机に座って授業の予定とかを考えようとした。
けどもう完璧に考えてある美空に電話しとくか。
電話をかける。
「あ、もしもし?美空、今日の夕飯だけどね」
「私、利奈の家に泊まるから大丈夫だよ」
だいぶ美空も馴染んできたな。
利奈と雪と留美とは親友。とっても仲良くしてる。
「そっか、私は宿直しなきゃいけなくなったから・・美月も一緒に泊まるって」美空の笑い声。
「ははっ・・美月は無理しちゃうだろうから・・心配かな」
「無理しないようにさせるよ、空は寂しくない?」
「うん、平気」
「そか、じゃあ利奈ちゃんと仲良くね」
美空が思い出したように言った。
「あ、ママ・・・美月を守ってね。じゃあね」
電話はそこで切れた。
美月を守るか・・・。
私は何から守ればいいかな・・美月は勇敢だし怖い物なんて・・・・。
何かあったような。
面白い出せない。
まぁいっか。
宿直が少し楽しみになってきた。
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