しばらく休暇をするように言われた。
危険性の高いチートを使われたのだから仕方ない。
病院で検査をしたが問題は無かった。
ミクちゃんは相当な製造者でありチート使いである。高い技術を持っているし現実にも影響は及ばなかったチートは小さなミスをしても現実に影響が出る。
あんな高度な物を扱えるとは・・・。
私には趣味がない。
だから部屋でテレビを見るくらいしか暇潰しができない。
父さんとはどんどん距離が開いていった。
もう嫌い・・父さんなんか大嫌い。
一応着替える。
ショートパンツとカーディガンを着る。
肌寒いな。
黒いタイツははいてるけど・・・。
「あっ・・調べとかないと・・」
妊娠検査薬を持ってトイレに入る。
どうか妊娠してませんように・・・・。
「ふぅ・・・」
生理も来てるし大丈夫。
ホッとしてトイレを出た。「アリス、妊娠したか?」
トイレを出てすぐの所に父さんがいた。
怖くて動けなかった。
「や、やだ・・出てってよ」いつの間に部屋に入ってきたの?
「妊娠してないのか・・」
「したくないわよっ!」
「また中に出してやろう」
手首を捕まれる。
何を考えてるんだ・・。
この人は父親じゃ・・。
この人は父親?
記憶が曖昧・・・。
小さな頃の記憶が・・。
遊んでもらった事もない。何も教えてもらった事もない。
何も・・・ない?
コンコンとドアがノックされる。
「お父様、お電話です」
馬木くんだ・・。
助かった。
「あぁ、今忙しいんだ。後にしてくれ」
馬木くんは部屋に入ってきた。
「失礼します・・お父様、やめてください。彼女から手を離してください」
父さんはゆっくり手を離した。
私は馬木くんに駆け寄る。「馬木・・君を拾ってやったのは私だぞ?恩を忘れたか?」
「はい・・でも俺は彼女が大事ですから渡せません」修羅場・・・。
ここはどっちも引かないだろうな。
「さぁ、アリス。こっちに来い。気持ち良くしてやるぞ」
馬木くんが私の手を掴んだ部屋から急いで出た。
二人で走った。
手を繋いで・・・・。
庭のお花畑の所で止まった馬木くんはハァハァと息切れしている。
「アリス・・大丈夫?」
「うん・・ありがとう」
こんな事してくれるんだ・・・・。
立場もあるのに。
執事が主人に逆らうなんてただではすまない。
「馬木くん、目標達成したね」
「えっ?・・・あぁ・・・・・ああっ!?」
さっと手を離そうとした。私はぎゅっと握った。
離したくなかった。
「馬木くん、握ってて・・」「あぅ・・」
「怖い?」
「うん・・怖い・・」
さっきとのギャップが凄いな。
頼りになる人から怯える子供に。
「ベンチに座ろっ」
「うん・・」
二人並んで座る。
「今日から馬木くんの部屋で寝ていい?」
「ぼぼ、僕の部屋!?」
「嫌?あの部屋だと誰も守ってくれないし」
「う、うん・・ぃぃょ・・」馬木くんは無理やり微笑んだ。
「私の時だけ僕って言うね」「あ、うん・・僕の方が言いやすいけど弱々しいから・・俺って言ってるんだ。弱々しいとすぐに襲われるから・・」
一気に暗くなる顔。
美形だからそれもまたいい表情に見える。
「そっか・・そん時は私が守るよ」
「うん、サンキュ!」
今度はしっかり笑ってくれた。
なんかいいな・・やっぱり好きだよ。
頼りになるし可愛いし怯える所は守ってやりたいし。何より顔が美形だし・・。私のタイプだわ・・。
「もう・・戻らないと・・」「私も行くよ、二人で行こうよ」
「うん・・」
父さんはいなかった。
家のどこにも。
馬木くんは仕事は終わっていたので一緒に水樹の部屋に行った。
「わっ・・付き合ってるの?龍平兄ちゃんとお姉ちゃん・・」
「んっ・・?」
「・・えっ?」
あぁ、手を繋いだままだったか・・。
私は離すつもりはない。
「そうだよ、付き合ってるよっ!」
私は自信満々に答えた。
水樹はニコッと笑った。
三人で話しているともう夕方になった。
「アリス、水樹、そろそろ夕飯の準備しなきゃいけないから行ってくるよ」
「あ、うん」
「いってらっしゃい」
馬木くんは私に微笑んでから出てった。
抱き締めたいし抱き締められたい・・・。
けど焦らずゆっくり行こう・・・。
せっかく素敵な人を見つけたんだ。
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