髪を切ったと言ってもまだ全然縛れるくらい長い。
短めだと楽だな。
爆発の現場に向かう。
VRの車はないから歩きで。歩くと髪がなびく。
腰くらいまで伸びてたからなぁ。
「あの・・・」
「はい?」
女の子のグループ・・。
まさかね・・・。
「良かったらお茶しませんか?」
「えっと・・ナンパ?」
「あ、はい・・」
ふむふむ・・・やっぱり男の子っぽくも見られるのか・・・。
「失礼・・僕のどこがいいの?」
女の子たちはもじもじしている。
「えっと・・可愛いしカッコいいし素敵です!一目惚れしました」
「あ、あはは・・・」
本当にこんな事になるとは・・・・。
「ご、ごめん。僕急いでるから・・」
女の子たちはしゅんとした私はまた歩き出す。
同性に好かれるってのもいいな。
手鏡を取り出す。
「ふむ・・まだ女の子だと思うんだけどなぁ・・そんなに切ってないのに」
ムッとして手鏡をにらむ。ほっぺたを膨らませる。
「ねぇねぇ、君、俺達と遊ぼうよ」
今度は男のグループだ。
めんどくせ・・・。
「あ、僕急いでるんで」
「はぁ?男かよ!?」
イラッとした。
警察手帳を見せつける。
「お!ん!な! 生粋の女の子ですがなにか?」
男たちは去っていった。
警察手帳をしまって周りの視線に気付く。
クスクス笑われてたり可愛いとか言われてる。
これが新しい自分。
後悔はしてない。
現場に行くと武村さんがいた。
「武村さんっ!」
「おお、大変だったな・・・・髪切ったのか」
「ええ・・まぁ・・」
少し髪をいじる。
頭を撫でられた。
「似合ってるよ」
「・・・ども」
爆心地の周囲は立ち入り禁止。
大きなテントで囲われている。
テントに入る。
真っ黒になった固まりがごろんと転がっている。
「爆発はあの当たりだな・・・プラスチック爆薬が使われた」
「彼は人間なのに製造番号が表示されていました・・まるでNPCみたいに・・」
「ふむ・・・」
あらかたの事情は話す。
武村さんはしばらく黙る。「よく分からんな・・・記憶を取り出して全く同じ外見のNPCに記憶を入れて自爆させたって事か・・?なんだそれは・・・」
「記憶を取り出す・・・私の場合まったくの別人になっちゃいましたが・・」
記憶を取り出す事は無理ではないが固く禁止されている。
逮捕されれば死刑。
VR内にある特別な施設で記憶をコピーする。
データ化されているが取り出した部分の記憶は消える現実にも支障をきたすので現在開発中止だとか。
私はパッドで調べてみた。「その施設はもう無いみたいですね・・2050年から開発が始まり2148年に開発中止で施設は無くなったらしいです」
「ふむん・・・」
誰かがこっそり施設を作ったとか?
そんな事できるのはよほどの大金持ちだな。
帰宅して馬木くんの部屋を調べる。
荷物はもう無いみたいだけど。
「むぅ・・無いなぁ・・」
バフッとベットに寝転がる天井が見える。
「はぁ・・・わけ分かんない・・・ん?」
天井に何か張ってある。
手を伸ばしても届かない。「むぅ・・・」
「アリス、何かあった?」
「水樹っ!手伝って」
「ほぇ?」
水樹を肩車して取ってもらった。
封筒?
手紙が入っている。
「アリスへ・・私に書いたのかな」
手紙を読む。
【今、君にしか見えてない物がある。それは君にしか分からない。僕は捕まった・・・もう助からない。これを君が読んでいる頃、僕は君の事はさっぱり忘れている。君にしか見えてない物が・・・僕を消した・・もう何も書けない。思い出せない・・どんどん消えていく・・自分が変わっていく・・怖い・・怖いよ・・アリス・・さよなら】
「・・・・馬木くん・・」
水樹に手紙を渡す。
私にしか見えない物。
・・・・何?
分からない・・・。
1日が終わる。
もう12時。
ニルからメールだ。
【私はアリス様にお仕えしてからだいぶ経ちます。そろそろご褒美が欲しいですよ】
無視してベットに寝転がる水樹はパソコンを操作している。
可愛いなぁ・・・。
「ねぇ・・水樹・・」
「なに?」
「私の事好き?」
水樹は私を見つめて。
頬に触れて。
キスをしてきた。
「分かるでしょ?言わなくても・・好きだよ」
「私の事・・どうして好きになったの?」
水樹は一瞬困った顔をしたがまた私と目を合わせた。「アリスは・・・僕のお母さんにそっくりなんだ・・凄く凄く・・だから好き・・・結婚したいくらいお母さんの事好きだったから」水樹はうつむいてしまった「そっか・・理由はなんでもいいから・・私を好きでいてくれて嬉しいよ」
「アリス・・すき・・」
抱き締めて頭を撫でた。
水樹の過去はしらない。
けど聞かない。
何か辛い過去だったんだなって思った。
忘れられるから人間は生きていける。
けど忘れられない事もある・・・。
水樹は本当にお母さんが好きだったんだな・・・。
「甘えていいよ・・ママって言っていいよ」
水樹は私を見て泣いている「ママ・・ぐすっ」
私はしっかりと受け止めた
水樹を支えてあげられるようになろう。
そう思った。
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