馬木くんは父さんが辞めさせたらしい。
誰の目にも触れず。
隠すように。
私は父さんの部屋に向かういくらなんでもこの怒りは抑えられない。
ドアを蹴破る。
Px4を突きつける。
「馬木くんに何をしたの?」「邪魔だったんだよ・・」
「私と付き合ってたから?」「そうだよ・・」
トリガーを引きそうになった。
深呼吸をしてホルスターにPx4を収める。
事情を説明する。
起こった事すべてを。
「知らない・・・遠くにはやったが・・」
「ホントに?」
「本当だ」
今すぐ殺してやりたい。
嘘をついているようにしか見えない。
「もう、あなたは父さんでもなんでもない・・大嫌い・・・」
部屋から出ようと背を向けた。
手首を掴まれる。
「待て・・・」
「何よ!」
「今から話す事を落ち着いて聞いてくれ・・・」
「・・・・なに?」
父さんは電話をかけて誰かを呼んだ。
受話器を置いて私を見つめる。
「母さんは死んだ・・知ってるな?」
「うん・・・」
私の手を握ってきた。
「母さんは死んでない・・母さんはアリス、お前だ」ついに頭までいかれたかな・・・・?
「バカみたい、離して」
「本当だ・・・お前は俺と結婚したんだ。年齢差がありすぎて批判されたよ・・・けど俺とお前は愛し合って結婚したんだ・・」
「父さん、頭がおかしいんじゃない?私は・・・」
私は育ててくれたおばさんの顔も忘れた。
どういう生活かも忘れた。私には何もない。
私は何をしてきた?
「アリス、お前はある日VRに行って拉致された。俺は身代金を払った・・戻ってきたお前は意識もなく何も覚えてない別人になった・・・そして俺の事をお父さんと言った・・・」
「そんな覚えない・・・」
父さんは私を抱き締めた。「お前の記憶はどんどん改変されていったんだ・・・訳が分からなくてな・・離れて暮らさせるようにした・・心配で監視をしたんだ・・すまない」
父さんは私の夫・・。
私は母さん?
父さんは私の頭を撫でる。「アリスが警察になるって言った時・・楽にしてやろうと思った。お前は完全に別人になった・・清純でいつも笑ってくれるアリスではなくなった・・・」
混乱してきた・・。
待って・・・。
「じゃあ、水樹は弟じゃないの?」
「そうだ、知り合いの探偵だったあの子に相談したんだよ・・どうにかアリスを元に戻せないかと」
「そんな・・・そんなの無いよ・・嘘だよ」
父さんは離してくれない。「アリスには少しずつ打ち明けるつもりだった・・・すまない・・襲ってしまって・・・」
頭がくるくるして。
倒れた。
理解できなかったから。
ベットで目が覚めた。
水樹がいた。
「水樹・・・」
「ごめんね、アリス・・」
「嘘ついてたの?」
「うん・・・」
水樹は布団に入って寄り添ってきた。
「僕・・アリスが好き」
「ホントに?」
「うん・・・それは本当だから・・」
「水樹・・・」
今はすがるしかない。
水樹に・・・。
怖くて分からない。
馬木くんの勤めているお城に連絡。
移動中にVRに入ったらしい・・その頃から少し変わったらしい。
私の拉致された時と似ている。
水樹とミクちゃんで話し合っている。
恐らく同一犯らしい。
私はお父さんに寄り添う。「嫌いって言ってごめん」
「いいよ・・もういい・・俺のわがままだったんだ・・・もう好きに生きてくれ・・俺は父さんでいい。アリスの笑顔が見れるなら」父さんとしか思えない。
もうどう言われようが。
「ごめんね・・・」
「いいよ、アリス・・」
好きだったのか・・・。
愛していたのか・・・。
忘れてしまって・・・。
けど今の私は・・・。
水樹が好き・・・。
そうなってしまった。
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