雪が降ってきた。
今年も終わる。
もうちょっとで。
私は水樹の車イスを押して街中を歩く。
まばらな人。
現実だから仕方ない。
馬木くんと未稀さんを誘ったけど用事があると言われた。
まぁ私がついていれば大丈夫。
Px4もある。
現実でも塗装とか改良してもらった。
「お姉ちゃんは来年どうするの?」
「どうするって?」
「うーむ・・龍平兄ちゃんと結婚するとか?」
「結婚かぁ・・ないかなぁ・・やっぱり」
「龍平兄ちゃんの事嫌いなの?」
「ううん・・とってもいい人だしタイプだけど・・付き合うのが辛くなってきた・・可哀想だよ。無理しちゃうし・・」
「ふむん・・・」
馬木くんは好きだけど私みたいな女には似合わない。私は体の関係が無くちゃ耐えられない。
そんな汚い女・・・。
街にある大型モニターの前、昔はここに大勢の人が集まったものだけど。
今はガランとしている。
近くのお店で買ったホットサンドとコーヒーを飲む。「水樹はミクちゃんが好きなんでしょ?」
「うん、とっても・・」
水樹はホットサンドを一口食べた。
周りに人はいない。
私と水樹の二人だけ。
水樹に触れる。
可愛いし好きだよ・・。
水樹の事は。
馬木くんをほっといてこんな事思う私は最低かもしれないけど。
「水樹、私と結婚しない?」「な、なに言ってんの?」
「冗談よ・・・」
「むぅ・・・」
水樹はほっぺたを赤くしてマフラーをギュッと握る。頼りない男も悪くない。
ってか弟だけどね。
「寒いね・・・」
「うん、どっか店行こうよ」「・・・そだね」
水樹の車イスを押して歩く・・・軽いなぁ。
近くの喫茶店に入る。
暖房がついてるしあったかい。
さっきホットサンド食べたけどな。
水樹を椅子に座らせて隣に座る。
「水樹は何か食べる?」
「うん、パフェがいい」
「そっか、私もパフェにしよっと」
注文してからすぐにパフェが来た。
店内には私と水樹しかいない。
「あまぁぃ・・」
水樹は幸せそうだ。
私も幸せな気分。
体型気にしてる割りには良く食べるな・・・。
来年までもう少し。
水樹のほっぺたに生クリームがついている。
ぺろっと舐めとる。
「お姉ちゃん、もっと・・」「うん?もうついてないよ」水樹はくっついてきた。
私をじっと見ている。
「キス・・したい」
「いいよ・・」
チュッ・・・。
カップルに思われるだろうし・・・大丈夫。
舌を絡めて目を閉じる。
甘いキス。
生クリームの味。
唾液に溶けて口に広がる。「んはっ・・・お姉ちゃんのキス・・えっち・・」
「ははっ、もっとする?」
水樹はコクッと頷いた。
しばらくキスして時間を潰した。
私は水樹を恋人にしようかな・・・。
ふと思った。
店を出てモニターの前に向かう。
店員に止められるくらい激しくキスしてしまった。
反省しなきゃね。
やっぱり誰もいない。
水樹を抱き締めて暖まる。「水樹が好きだよ・・」
「僕も好き・・・」
本気じゃないのは分かってる。
けどいいや。
好きな気持ちはある。
本気じゃなくても好きでいてくれるなら・・・。
カウントダウンが始まる。水樹の唇を奪う。
カウントダウンなんてどうでもいいや。
可愛いこの子とキスしていた。
5・・・4・・・3・・・2・・・・・・。
水樹と舌を絡めて激しく貪っても・・・。
来年にならない・・。
「んっ・・なに・・あれ?」水樹が唇を離してからモニターを見ている。
私もモニターを見た。
カウントダウンが1で止まっている。
画面が揺れる。
黒い目玉が現れた。
周りをギョロギョロ見ている。
目玉は私と水樹を見た。
「2199年おめでとう。やれる事はやっておけ。2200年は無いんだからな。2199年の年末をお楽しみに・・」
モニターが真っ黒になったいたずら?
いや・・違う。
あの機械音声は・・・。
どこかで聞いた声。
「お姉ちゃん、帰ろう・・ここはまずいかも」
「うん、分かった」
今見た事は・・・。
いたずらか・・。
それとも予告か・・。
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