綾さんはワクワクしながらこちらを見ている。
「新しい格闘技を?」
「私達・・が?」
僕と美空はポカーンとした・・・・
「君達は訓練しないと物足りないんじゃない?私も心得はあるからある程度は教えられる」
美空は目を光らせた。
「やるっ!私やりたい!」
「美空がそんなに言うなら僕も・・・」
おじさんに習った格闘技はいくつもある。
すぐに会得できた。
「じゃ、軽くやってみな!!」綾さんは軽く言うけど格闘技の訓練は結構しんどい。庭で軽くストレッチをして体をほぐす。
「美空、鈍ってないよな?」「当然・・・」
綾さんは縁側に座って見ている。
習ったとうりやる。
体が覚えている。
美空が回し蹴りをする。
美しい銀のツインテールが舞う。
美空は小柄だから手強い。僕より10センチぐらい下だから153センチくらい。
動きも素早い。
僕のパンチを払って素早く反撃する。
30分ぐらい後。
「はあっ・・」
「ふうっ・・」
間合いをつかむ。
美空はなかなか隙を見せない。
「はい、やめっ!!」
綾さんが声をかけた。
興奮を押さえて落ち着く。「ふーん。おじさんは元海兵隊だったな・・・もうちょい・・・でも凄いよ。見とれるくらい綺麗な動き」綾さんはゆっくり立ち上がり僕を指指した。
「美月くん、次は私とやろう」
僕はまだ動ける。
「お願いします」
綾さんの覇気は心得程度じゃない。
数分で負けた。 「・・・っ!!」
横腹を蹴られ吹っ飛ぶ。
痛い・・・
「あ、悪い・・ついやっちた・・」
綾さんが手差し出してくれる。
僕は手に掴まって起きる。「綾さん・・強いですね」
「まぁね・・」
おじさんの友達ともやった事あるけどこんなに強い人は初めて。
美空の隣に座る。
綾さんは少し考え込んでいる。
「君達は・・素晴らしい。けど・・まだ伸びるから・・・うーん」
美空が僕の横腹に触れる。「負けたね・・・痛い?」
「うん・・少し」
負けるのは初めて。
美空には勝てないけど負けた事はない。
綾さんはまだ考えている。「うーん・・・小柄な体格を利用して・・・うーん・・・」
外はもうすっかり暗い。
「月・・・綺麗・・」
美空は月が好きらしい。
いつも月を見ていた。
「よっし。明日から毎日訓練の時間入れるけどいいかにゃ!?」
僕も美空もその言葉を聞いて嬉しくなった。
「はいっ!」
二人同時に返事をした。
綾さんはニコッと笑った。お風呂に入る時に横腹を見るとしっかりアザがついていた。
「ふぁ・・・いたぃ・・」
日本も物騒だから格闘訓練ぐらい許される。
射撃訓練は専門の施設がある。
でもここの地域は静かで犯罪も無さそうだ。
お湯に浸かるとヒリッとした。
シャワーだけにしてパジャマを着る。
居間に戻ると美空がコームで髪を撫でていた。
「美月・・やって」
美空はコームをつきだす。僕はコームで美空の髪を撫でた。
もつれはないんだけどな。テレビ番組で歴史的事件集がやっている。
毎週火曜日にやる番組。
綾さんがココアを三つ持ってきた。
美空の隣に座ってフーフーと冷まして飲んだ。
「さて、次の事件は日本の北海道で起きた。不可解な暗殺事件です」
綾さんの目が変わった。
増田という国会議員が狙撃されて脚を吹き飛ばされたにも関わらず命はとりとめた。
増田議員は二組の暗殺者に狙われていたらしい。
野外講演会場で銃を発砲した暗殺者は自供したが狙撃をした暗殺者は現場から1キロ以上離れた廃ビルで見つかった。
右足と右手が無くなり胸に二発銃弾を撃たれて死んでいた。
別の暗殺者がいたという可能性もあるらしい。
殺害された暗殺者の身元は不明。
現場にはイスラエル製のコーナーショットのみしか発見されなかった。
「ふーん、コーナーショットって近接戦兵器でしょ?拳銃付きコーナーショットなんかで狙撃なんかできないよ」
「私もそう思う。たぶん弾丸は408。火薬量は419グレインで弾頭も特殊・・・それならチェイタックM200あたりが使われたかな」
美空の判断はたぶんあってる。
僕もそう思った。
「この増田って人は車椅子でまだ国会議員やってるのか・・・しぶといね」
「私はしぶといの嫌い・・・」
美空とそんな会話をしていた。
綾さんがクスッと笑った。「二人共、もう寝なさい。明日も学校でしょ?」
「はぁーい」
二人でココアを飲み干し寝室に向かった。
翌日、学校から帰ると黒猫大和の不在表が入っていた「荷物?綾さん当てかな?」電話をして再配達してもらう。
サインをして荷物を受けとる。
ずしりと重い。
「ん?宛先が僕達になってる・・・・」
荷物を居間に置く。
雨が降ってきた。
大福が部屋に避難してきた「美月・・・開けないの?」「うーん。見たい?」
「・・・・見たい。暇だもん」
僕は手持ちのペーパーナイフで包装を破る。
ごつめのケース。
開けると見慣れた物があった。
美空と僕は同時に驚いた。「これ・・・銃!?」
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