綾とベルにも話した。
もちろんついていくと言った。
胸騒ぎ。
嫌な予感。
きっと気のせい。
間違いない。
学校が始まる。
見慣れた顔を見る。
もしかしたら最後かもって・・・そう思ったから。
取引まであと24時間。
運び屋のおじさんにいつものように迎えにきてもらうベルはボディーアーマーは着ない主義らしい。
今回はHk416とM1911とリニアナイフのみ。
幻覚装置は使わないと美空は言った。
V22に乗る。
機体の揺れが不安を煽る。なんで?
なんでこんなに。
不安になる?
「美月・・・ごめん」
「ん?どうして」
「ううん・・なんでもないよ・・」
美空の心が読めない時がある。
何でかな。
綾はライフルを点検している。
「美月、点検しときなさい・・・」
「もう・・したよ」
綾は僕を睨んだ。
「最後に裏切られる事になるわよ・・・銃にね」
「えっ?・・・わかったよ」軽く点検する。
どこも異常はない。
ベルはパンパンと拳を叩いている。
「ベルは大丈夫?」
「美月は優しいな・・」
「ベルは増田を怨んでる?」「つくづく嫌いになったよ・・・・自分もあいつも・・・何もかも」
「・・・そっか」
みんないつもと様子が違う・・・。
緊張してるんだろうな。
横浜まで3時間。
到着してから港まで1時間車は別の物に乗り換えて綾が運転した。
あと20時間。
港の周りを一応探索しておく。
特に変わりはない。
港の近くの廃ビルに荷物を置く。
もう夜だ。
食料を食べる。
美味しくない。
当たり前か。
廃ビルはもちろんトラップも何もない。
食料を食べてから屋上に出た。
もう雪もなく寝転がる。
「はぁ・・・」
綺麗な月・・空。
ため息は空に消える。
月は明るく照らすだけ。
ガチャッ。
M1911を構える。
もはや体に染み付いている「美月・・・チョコバー持ってきたよ」
「ありがと、美空」
美空は僕の隣に座った。
「みんな・・元気ない」
「うん・・・」
チョコバーをかじる。
甘いし美味しい。
美空がいきなり僕の上に股がる。
「美空・・・?」
「二人で墜ちるって言ったよね・・いつも一緒だって・・言ったよね」
「うん・・・」
「私を信じてくれるよね」
「当たり前・・・」
美空はニコッと笑った。
そして顔を近付けてきた。吐息が混じる。
唇が触れる。
だんだんと激しくなる。
「今日は・・私が美月を犯すよ・・・いい?」
「うん、犯して・・いっぱい・・犯して」
もう繋がれないのかも。
そう思った。
だから激しかった。
美空は僕を貪るように。
僕は美空に好きにさせる。「んっんっんっ!」
「ああっ・・はぁっ・・」
美空が僕の上で跳ねる。
僕も美空を突き上げる。
二人で一緒になる。
気持ちよくて・・。
止まらない。
「んっ!イクッ!っ!!!」
美空と両手を合わせて強く握った。
深く奥まで馴染んで。
精子も奥まで注がれる。
ぜんぶ混ざる。
心も体も・・想いも。
全部一つになった。
「・・・・つっ・・はぁ・・・っ・・っ」
美空は気絶しなかった。
必死にこらえていた。
「美月の気持ちいい顔・・やっと見れた・・」
「どうだった?」
「可愛いよ・・・とっても愛しいよ」
このまま死んでもいい。
それくらい気持ちいい。
予定の時間まで1時間。
警備も見える。
大きなコンテナが運ばれてきた。
増田が見える。
ランスもいる。
二手に別れる。
美空と僕、ベルと綾。
警備に近づく。
パシッ。
警備にナイフが刺さる。
無音で倒せる。
Hk416を構える。
廃ビルの上に狙撃者。
パシッパシッ。
胸に二発撃ち込む。
すごい血の匂い。
間違いなく死んだ。
倉庫に近づく。
警備を倒しつつ前進。
取引会場のような場所についた。
ベルと綾に無線をする。
向かい側のクレーン操作室にいるらしい。
取引はかなり大人数。
全員武装している。
「銀兎、どうす・・・」
Hk416を突き付けられる。ちょうど反撃できない間合いで。
「・・歩いて」
「銀兎?どうゆうつもり?」「いいから・・歩いて」
「・・・・・」
美空は裏切ったのか?
心が読めない。
取引会場に出る。
全員が僕を睨む。
「おお、よくやった!」
美空が増田に近寄る。
そして・・キスした。
僕に見せつけるようにねっとりとやらしく。
「う、うそ・・・銀兎・・・・」
増田は銀兎を撫でた。
「抱かれたか?あいつに」
「はい・・・」
増田はニヤニヤ笑う。
「そうか・・後で俺も抱いてやろう。お前はなかなか体を許してくれなかったからな」
何?美空はホントに・・・嘘でしょ。
「おい!取引しようぜ!お楽しみは後でいいだろう」
「ああ、悪いな・・」
増田はアタッシュケースから金を取り出した。
ランスは?ランスはどこ?騙したのか?
美空は背を向けている。
拘束された。
ベルと綾はまだ様子を見ているはず。
「ブツはあそこだ」
増田はコンテナに近づく。コンテナを開けてから大きな声で笑った。
「よしよし!じゃあ取引成立だな!」
取引相手と握手して美空に近寄る。
またキスした。
心がおかしくなりそう。
「車の中で抱いてやろう」
「はい・・・」
僕を一瞬見た。
僕に近づいてくる。
「言ったでしょ・・僕は悪魔って・・・妹は死んだって・・ね?」
「銀兎・・美空・・嘘でしょ?」
「今までの任務で都合良くアパッチやペイブロウが来たのはおかしいと思わなかったの?あの女もそう」
たしかに・・なんで?
好きになったから?
美空を・・・。
盲目になってた?
嘘だ・・・・。
「僕は君が嫌い。分かる?目的のために抱かれたの・・・」
「美空、信じてるよ・・・」「・・・・・」
「僕は美空を愛してる」
増田が大声で笑った。
「馬鹿なガキだな!」
美空を抱き寄せた。
「こいつの前で抱いてやる」「・・・はい」
僕は美空を信じる。
美空を好きだから。
愛してるから。
だから信じる。
僕の周りのやつらもニヤニヤ笑っている。
美空はテーブルに寝転がる増田はズボンを下ろした。スーツを脱がそうとする。ガタンッ。
黒い馬。
赤い目。
長い槍。
ランス?
槍を使って次々に心臓をさしていく。
「な、なんだ!あいつは拘束したはず!」
美空がナイフを握っていた増田の足に突き刺す。
グサッ。
「ぎゃあああああああー」
増田が倒れこんだ。
ランスは夢より強い。
僕の周りのやつらは物陰に隠れた。
美空が近づいてくる。
僕の手の拘束を切る。
僕はすぐにリニアナイフを2本構えて近くの敵に斬りかかる。
股の間に入り込み動脈をきる。
すぐには死なない。
そいつを縦にして近くのやつにぶつける。
隙を見て喉を切る。
三人目はこちらにAK47を向ける。
パパッ。
二本のブレードか射出されて心臓と頭に刺さる。
力なく倒れた。
美空は突っ立っている。
「ごめん・・・・」
「僕は信じてたから・・」
「えっ!?」
「美空は心を読ませなくする事もできるんでしょ?」コクりと頷く。
「ばかにしないで・・これでもお前の兄だからな」
増田に近づく。
綾もベルも降りてきた。
ランスは槍をくるくる回している。
勝利のポーズ?
増田は美空を睨んだ。
「なぜ裏切った?なぜだ?」「僕が聞きたいのは一つ。あんたの上の人達は誰?」増田がニヤニヤ笑う。
美空はつばを増田に吐きつけた。
「あんたのキスは最低。僕の初めての人はもっと上手かった」
なんか照れた。
いかん、そんな場合ではない。
増田の顔は曇る。
「私はまだ生きるさ・・・まだまだ生きて彼らの一部になるんだ」
「あんたに色仕掛けしようと思ったけどやめた・・・拷問してやる」
増田を殴ろうとした。
ヘリの音?
一瞬油断した。
増田は美空を押し退けて走り出した。
綾とベルがHk416でフルオート射撃。
ランスは槍を投げた。
槍が刺さり増田は倒れた。増田はまだ動く。
綾とベルはマガジンを変えてまだ追い討ちをかける。僕と美空はその様子を見ている。
やっと死んだ。
もはや原型はない。
綾とベルはまだ撃ち続ける・・・マガジンが無くなると拳銃を抜いた。
「二人共!」
綾は涙を流して倒れた。
ルカの敵は取れたのかな。殺してもルカは帰って来ない。
ベルは死体を踏みつけている。
僕は美空を抱き締める。
「銀兎が・・美空が・・何をしたかったのか・・教えて?」
美空は僕の腕を握った。
「増田の上には何かいる・・もっと大きな連中が・・だから・・・」
「いいよ・・美空が体を使ってまで知る事じゃない」美空はブルッと震えた。
泣いている。
ランスは僕と美空を眺めている。
うらやましそうに。
さっきのヘリは通り過ぎたようだ。
「おい!ドS女!」
ランスはビクッとなった。「は、はいっ!」
ベルは不思議そうな顔をした。
「なんだ?前と違う・・」
「私は改心したんです!」
「へぇ・・・改心?」
僕は増田に近寄る。
これで終わり。
コンテナを開けると孤児たちがたくさんいた。
みんな震えている。
僕の姿に。
僕はポケットからチョコレートを取り出して分け与えた。
「もう、大丈夫だよ」
コンテナの中に取引のお金を置いておく。
コンテナに張り紙を付けた【この子達を幸せに。大切に・・・】
みんな見ていた。
ランスは軽く拍手した。
これでもう銀狼は終わり。良かった。
「帰ろう!」
僕達は撤退しようとした。ランスは増田の死体を見下ろしている。
もうランスの身寄りはいない。
「ランス、おいで!」
「えっ?私は・・」
「友達でしょ?」
「あ、はいっ!」
車に乗ってV22の所まで行く。
さすがにミニクーパーには乗れない。
V22に乗り込む。
増田のポケットから抜いた携帯で警察に電話する。
あらかた伝えて切った。
「美月・・それに何か情報が乗ってるかもよ」
「いらない・・もうこいつに関わらない」
僕は窓から携帯を捨てた。もういい。
僕達の力は悪を消すために・・使おう。
それでいい。
そう生きる。
大事な美空と一緒に。
大好きな大好きな美空と・・家族で。
綾はベルの肩にコツンと頭をのせて寝ていた。
ランスはヘルメットを取ってモジモジしている。
「ドSがドMにな・・信じられん・・ホントに謎だ・・訳がわからん」
「私は・・素直になっただけです」
「敬語・・信じられん」
ベルとランスはなかなかいい感じかな?
ケンカは無さそう。
「美月・・・唇汚くなったから・・綺麗にして」
「うん・・」
唇を重ねる。
視線を感じるけどいいや。恥ずかしくない。
もう盲目でもいい。
盲目でいい。
美空しか見れない。
「長い・・ばかっ」
「なんだよ・・せっかく綺麗にしてやったのに」
「ははっ・・」
「はははっ!」
みんな笑ってくれた。
V22は朝日に向かう。
光に向かって飛んでいく。
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