春になり少し温かくなった雪も溶けてきて。
いい気持ちになる。
冬休みももう終わる頃。
「美月、実験体になってくれない?」
「じっけんたい?じっけんたい!?」
「ごめん、幻覚装置出来た・・・リニアナイフに取り付けて発射できるようにしたの」
「うん・・わかったよ」
美空は少しびっくりした。「ごめん・・・・」
セーフルームに行って完成した幻覚装置を見る。
ナイフのブレードより少し大きい。
長細い棒みたいだ。
「幻覚は10秒間あらわれるの、リニアナイフのグリップから射出されてから回転翼が出て80メートルは飛ぶ・・・威力は半径20メートルくらい。ヘルメットに幻覚の被害を受けないような加工をしたから」
「よしっ!やろ!」
「・・・・うん」
美空は僕の決心を読んでくれた。
射撃場の奥に立つ。
美空が僕の近くに照準をつける。
ポンッ。
僕の所まで真っ直ぐ飛んできた。
足元に転がる。
グラッとする。
目の前にあらゆるマイナスイメージが移る。
僕の負の部分。
見たくない部分。
グラグラして倒れる。
「美月!」
美空が駆けつけてくる。
抱き起こされる。
「もっと・・・実験・・」
「・・・大丈夫?」
「やる・・何度でも」
「・・ありがとう」
必要可能な限りの実験をした。
ヘルメットの加工は完璧だった。
まったく影響がない。
僕は病室のベットに倒れた「はぁっ・・・・」
「美月・・・・」
僕のギュッと手を握った。「二人で完成させたね!」
「うん・・美空と僕で」
新兵器開発。
かなり有効になりそうだ。ゆっくりと眠りにつく。
夢・・・ゆめ・・?
ベット?
広いベットだ。
「少年・・ランスです」
「ランス?あぁ・・」
ランスが紫のドレスを着て立っている。
「何?勝てないのにまだやるの?」
「情報、教えます」
「・・・・何の?」
「増田の情報です」
僕はランスを睨んだ。
モジモジし始める。
「そんな目しないで・・・私は少年に何もしませんから・・やめてっ」
「増田の何の情報?」
ランスは嘘つきだが今の目は違う。
「あの・・・その・・・」
「はっきり言え!!」
「はっ、はいっ!」
ランスはビクッとした。
「増田は一週間後に横浜の港にいます。そこで何か悪い事をしようと・・しています」
「悪い事?何?」
「分かりません。すみません・・・・」
「・・・ありがと」
「へっ?」
「今のランスは嘘つきじゃないから・・・」
「あ、ありがとう・・ございます・・」
周りを見る。
広いベットの洋風の部屋。「なんでこんな部屋に?」
「あ、あの・・少年に・・いじめて欲しくて・・」
僕はそんな気分じゃない。「悪いけど・・したくない・・・ランスの事嫌いだもん」
ランスは床にへたりこんだ「・・・あ・・・っ・・」
泣き出した?
「えっ?ランス?」
ランスはボロボロに泣いている。
「私・・少年に酷い事したから・・・だから嫌われても・・・私なんてゴミだから・・いらないから・・」なんだか変だな。
出会った時とまるで違う。「ランス、そんなに落ち込むなよ・・しかも犯された相手に」
「私・・少年が・・好きです・・一目惚れしました・・・ごめんなさい」
「えっ?はぁ?」
ランスが一目惚れ?
いつだよ?
「最初会った時・・私・・あんなの初めてで・・」
「一目惚れしたのにあんな事するの?」
ランスに近づいた。
なんか可哀想になってきた・・・・
「私・・傷つける事しか分からなくて・・あれが私にとっての・・スキンシップです・・・」
泣きじゃくるランス。
嘘つきだけど・・・。
なんだか・・可哀想。
「昔、戦争孤児で拾われて・・銀狼計画で実験されて・・っ・・殺す事しか分からない・・どうやって接すればいいか・分からない」そうか・・ランスは。
もう一人の綾。
綾も戦争孤児。
師匠に拾われて。
戦闘を詰め込まれ。
女の子にはなれなかった。体を武器にしてしまい。
愛も好きも分からなくなった。
綾はパパと出会ってやっと女の子になった。
でもランスは愛を知らない好きになった事もない、だから怖いんだ。
「ランスの気持ちは嬉しいよ・・」
「うっ・・ぐすっ・・」
背中をさすってあげる。
増田がいなければ。
ランスも幸せだったかもしれない。
「銀狼計画で使われるのは戦争孤児だけ?」
「はい・・戦争で両親がいない孤児だけを狙っています。私もそうでした」
「そっか・・・」
「増田は銀狼計画を続ける気です・・・」
「じゃあ・・横浜での取引って・・・」
孤児を密輸して実験体にする事?
「私・・止められません・・・あの人に拾ってもらって・・あの人に初めて女にしてもらって・・」
「僕が止めるよ」
「えっ!」
「だからランスは大人しくしてて」
「でも私なんてゴミです」
僕はランスを見つめる。
嘘はない。
たぶん真実。
「ランスは・・友達!」
「友達・・・ですか?」
「よくやったよ!」
ランスを抱き締める。
「嬉しい・・友達・・」
「まだ友達だよ・・だからもっと仲良くなろう」
「じゃあ・・・」
ランスはドレスを脱ごうとした。
「だめ!体以外で仲良くなる方法教えてあげるからさ」ランスの涙が頬を伝う。
「ランスも横浜に来る?」
「はい、増田の護衛でいきます」
「じゃあその時にランスに会うよ。これは夢の中だからね・・会った事にはならないよ」
「はいっ!」
「ランスは人に優しくできるよ・・きっとできる」
「・・・はい」
僕は軽くキスをした。
「この前は乱暴にしたけどこれはご褒美だからね」
「・・・はい!」
目が覚める。
美空がそばにいてくれた。「美月?大丈夫?」
「美空・・・増田を始末する・・これ以上銀狼を増やさないために」
美空は僕を見つめて頷いた「わかった・・私も一緒に行く・・・」
早く気付くべきだった。倒すべき相手は増田。
間違いない悪党。
銀狼はもういらない。
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