男がニヤッと笑った。
どうゆう意味だ?
「まずアパッチを落とすからどこかに隠れろ」
綾と美空はすぐにさっきの部屋に向かう。
僕は少し心配になる。
「アパッチをどうやって落とすの?」
「ミニグレネード」
男がボストンバックからAA12のドラムマガジンを引っ張りだす。
僕はすぐに理解して部屋に向かう。
三人とも伏せる。
僕は男の様子を見る。
アパッチが近づいてきている。
ライトで屋敷を照らしている。
バババババババ。
プロペラの音。
もうすぐにそこだ。
ドーンっ。
大きな爆音。
アパッチが爆発した方を向いた。
男が窓からさっとAA12を構える。
パパパパパパパパッ。
ミニグレネード弾の嵐。
プロペラに何発も着弾する20発撃ちきってもまだ落ちない。
男はアパッチが方向転換する前にリロードしてまた撃ちつづける。
操縦席に向かって連射している。
アパッチは屋敷にめり込むように墜落した。
凄まじい音。
「いいぞ」
男は満足そうにMG3を構える。
本当に落とした・・アパッチを・・・。
「暇なら付き合ってくれ」
男は窓から様子を見ながら言った。 僕は三人を見る。
もうみんなヤル気だ。
アパッチが落ちたのを見て興奮している。
またプロペラの音。
「行こう!裏口から出るぞ」男に続いた。
輸送ヘリが兵士を下ろしている。
男と僕、綾と美空で二手に別れる。
屋敷は広いので見つからないように。
ペイブロウから兵士がおりてくる。
「いくぞ、仔犬!」
仔犬って・・・
シュバーーーッ
もはや銃声ではない。
僕は援護してもらいながら近づく。
MG3のおかげで一機目のペイブロウに乗っていた兵士は全滅。
あと3機。
男と移動して正面に向かうもう一機が兵士をおろしている。
シュバーーーッ、シュバーーーッ。
次々と兵士が倒れる。
僕も負けじと兵士を倒す。ペイブロウに近づいて操縦席も制圧。
綾と美空は?
【美空?そっちは?】
【遅いね・・・】
【は?】
【もうとっくに倒した。今死体を漁ってる】
男はMG3の予備の銃身入れている。
熱くなった銃身は捨てた。「お嬢さん方の所は大丈夫か?まだ1機も倒してないんじゃ・・・」
「遅いねって言われた・・」「・・・・・・」
男はビックリしてすぐにショボンとした。
綾と美空の方に向かう。
兵士の死体が転がっている・・・綾はペイブロウに寄りかかっている。
「綾・・大丈夫?けがはない?」
綾はニコッと笑った。
凄く余裕そう。
「こらこら!黒猫先生って呼びなさい!」
「どうやって・・・」
「銀兎が突っ込んで私が援護・・・8分30秒ぐらい」
「ほぇ・・・・」
ポカーンとする。
綾は想像以上に強い。
男は兵士の武器を拾って眺めている。
まったく殺気がない。
てか凄くダルそう。
美空は証拠を探している。「銀兎、何か見つかった?」「何もなし・・さっさと撤退しよう」
僕は綾を呼んだ。
三人で装備を確認して撤退しようとした。
男は突っ立っている。
心は悲しみでいっぱい。
「あの・・・」
男ダルそうだ・・凄く。
「すまん、殺してくれないか?」
「え?」
「俺は所詮ゴミだからな・・・」
「・・・殺してあげます。でも後で。ついて来てください」
僕は男の手を引っ張る。
男はフラフラついてくる。二人は僕を見つめている。「連れてく気ね」
美空は多分理解してくれている。
綾は何も言わない。
追手は来ない。
廃屋に戻るともう運び屋のおじさんが来ていた。
念のために男を拘束して車に乗せる。
V22に乗り込む。
男は寝てしまっている。
歳は28くらい。
アメリカ人かな?
銀髪で体格はかなりいい。僕はM1911を抜いておいた連れて帰ると言ったのは僕だ。
責任は自分で取る。
家に着いたころにはまだ明るくなっていない。
男をセーフルームに連れて行く。
男を椅子に座らせチョコバーを渡す。
「ありがたい・・・」
男はチョコバーをかじる。「名前を教えて」
僕はヘルメットを取らずに聞く。
美空と綾はシャワーを浴びに言った。
僕一人でも大丈夫。
「・・・名前・・ベルセルクとか呼ばれてたな、別に戦闘中は冷静なんだが」
確か北欧神話の・・・
「なんで仲間って言ったの?」
ベルセルクは僕を見つめる「君ともう一人の兎みたいな子は銀狼計画から生まれたんだろ?あの綺麗な女は違うな・・・」
「なんで知ってる?」
増田がいたのでなんとなくとは思っていたが。
「俺も銀狼計画から生まれた・・・まぁどちらかと言えば成功した部類に入るがな」
ベルセルクはチョコバーを完食した。
「銀狼計画って何?」
僕はM1911を持ったまま。殺気は全くないが念のため「人間の潜在能力を引き出す・・俺の場合筋肉のリミッターを自由に制御できる・・あと怪我の治りが早いくらいだな」
「火事場の馬鹿力みたいなやつかな・・・・」
潜在能力・・・・
「はっきり言って僕達は狙われてる?」
「いや、まったく」
嘘じゃない・・・
「じゃあなんであそこにヘリが来たの?」
ベルセルクは悲しそうな顔をした。
「増田についてってカロンを殺せと言われていた。取引が終わった直後に・・・ボストンバックがには金が入ってる事にしてあった。ボストンバックから金の入った袋を渡して・・・開けたら金ではなく爆弾でドカン」
「カロンは僕たちのいた部屋で取引すると聞いていたけど」
「いや・・ホールの奥の部屋だ」
美空の情報はまた間違っていたのか。
国会議員の増田が何で資金洗浄なんか・・・
「それで?」
「そこまでは良かったさ。警備をあらかた倒して帰ろうとした所を増田に撃たれた」
ベルセルクは革のジャケットをめくる。
血がにじんでいる。
「まってて、手当てする」
「いや、いい。俺は体の修復能力が高いからな。しかもかすっただけだ」
僕は一応消毒してあげる。「俺は訳が分からず倒れた・・・・そのまま倒れたふりをした。そこで増田が電話をかけてこう言った。ゴミの処分を頼むと」
ベルセルクは恐らく相当忠誠心が高く増田のために働いていたのだろう。
「それで裏切られたと?」
「まだそこでは思わなかったさ・・死んだふりをやめて立ち上がった。そうすると増田は逃げ出した・・俺は訳を聞こうとしただけなのに・・・」
「・・・・・」
「それから屋敷を調べたがいなかった。そこで思ったんだ・・・俺は所詮ゴミだったと・・増田は走って逃げたんだ。あいつに車椅子は必要ない・・俺はあいつの為に身の回りの事はなんでもした」
「・・・・辛いね」
「もういいだろ?俺の知っている事は全て話したぞ」僕はベルセルクにM1911を向ける。
「君を殺すも生かすも俺しだい・・・ならまだ死ぬな・・・」
「は?・・・」
「君の新しい主は俺だ。俺の為に働いて力になれ」
「・・・仔犬が主か・・それもまた面白いな」
ベルセルクは僕の前にひざまずいた。
「命令はなんでも聞こう、主よ」
僕はかがんだ。
「握手でいい」
ベルセルクはフッと笑って手を差し出した。
僕はしっかり握手した。
「君を連れ出した事で狙われるかな?」
「いや、ない。銀狼計画はもう白書になっている」
「え?・・・」
「増田よりずっと上のやつらが白書にしたそうだ。研究施設を丸々潰されるような化け物はもういらないと・・・・」
「・・・・・」
僕と美空の事だ。
「君は人を襲ったりしないよね・・・」
「命令があればなんでもやる。たんぱく質は全て筋肉の修復に回るようになっているから性欲もない」
「そっか・・・じゃあ命令」「どんな命令でも遂行する」「ご飯食べよ、一緒に」
「ご飯・・・?」
「うん、ご飯!」
「餌ではなく?」
「・・・君は部下だけど大切な仲間!」
「・・・ありがたい」
彼は大事にしよう。
きっと役にたつ。
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