「ちょっ!美空!?」
僕のパンツの中に手を入れようとする美空。
すぐに手首を掴む。
「美月・・・お願い」
青い瞳で僕を見つめる。
全て見透かされるような綺麗な目。
美空はゆっくりと手を手を離した。
「そうだよね・・・双子の妹なんか抱きたくないよね・・・」
悲しそうな目をする美空。「美空・・・お前・・」
美空の気持ちが読めない。他の人なら目で分かるのに「美月って頭いいのに鈍いよね・・ホントに・・」
美空は部屋から出ていった僕は布団にくるまり考えこんだ・・・寝れなかった。翌日、美空はいつもと変わらなかった。
おじさんが大事な話があると言って僕達をリビングに呼び寄せた。
「お前達も大きくなったな。だから少し人間関係の訓練もしなきゃいけない。この田舎じゃ人間関係の訓練はできない・・・・二人には日本に行って貰う事にする」
僕と美空はポカンとしてしまった。
「え・・・日本に?」
「おじさんの知り合いで日本の田舎に住んでる人がいてな。ちょうどいいからそこの人に預かってもらう事にした・・・もしかしなくても嫌か?」
僕は美空と目を合わせた。美空はすぐに視線をそらす「僕はいいけど・・・」
おじさんは微笑んだ。
「美空は嫌か?」
「・・・・・・嫌・・」
美空は泣きそうだった。
おじさんは美空の頭を撫でてあげた。
「そうか・・じゃあ・・」
おじさんが喋る前に美空は叫んだ。
「でも美月と離れるのはもっと嫌!!!だから・・・だから・・・行く・・」
おじさんは美空を抱き締めておでこにキスをした。
明日その人がここまで迎えに来るらしい。
その日に荷物をまとめた。僕は寝れずにボーッとしていた。
「日本・・・かぁ・・・」
考え事してると寝れない。いきなりドアが開き美空がベッドに飛び込んできた。「わっ!美空?」
美空は布団に潜り込んできて僕にしがみつく。
「どうせ寝れないだろうから一緒に寝てあげる!!」
たぶん美空も寝れなかったんだろう・・・
「強がんなくてもいいよ美空・・・」
「強がってない・・・」
そのまま朝まで寝れなくて僕は美空の頭を撫でてあげていた。
お昼ごろにその人から電話がかかってきたので屋敷の入り口で出迎える。
タクシーからおりてきたのはスラッとした黒髪の美人だモデルみたいな人。 「・・・・Hello」
僕と美空は同時に挨拶した「ハーィ!黒木綾って言います。よろしくね」
いきなり僕と美空を抱き締めた。
「二人ともとっても・・・とっても可愛いね」
この人とは初対面のハズ・・・でも妙だ。
「おぅ!綾!」
おじさんも挨拶した。
「や!相変わらずマッチョだねー」
今日の便に乗るため夕方には空港に向かう事に。
おじさんとマックが見送ってくれた。
「美空・・美月・・・元気でな・・」
マックは尻尾を振っている僕と美空は泣かなかった。「おじさん・・いえ師匠!
今までの訓練ありがとうございました!!」
二人で敬礼をした。
おじさんも敬礼で返してくれた。
でもそれも長続きしなかった。
「おじさん・・おじさん!!」二人で泣いて抱きついた。「おいおい、俺はそんな軟弱に育てた・・・うぉーん!!泣くなよ!!」
おじさんもたくさん泣いてくれた。
マックも顔を舐めてくれた二人で頭を撫でて抱き付いて、また泣いた。
先にタクシーに乗り込む。おじさんと綾さんが喋っている。
「綾、大事にしてやってくれ・・・」
「悪いな、クロス・・・」
そう聞こえた。
後部座席から二人で手を振った。
おじさんもマックも見えなくなるまで見送ってくれた・・・
美空はハンカチで涙を拭いてから静かに僕の手を握った。
僕もギュッと握り返した。綾さんは助手席でこちらの様子を見てくれた。
空港に着いたがまだ飛行機の時間まで少しある。
美空は僕の手を離さない。「飛行機・・・初めて乗るね・・」
「うん・・・私は怖くないからね」
綾さんはこちらの様子を見ながら自販機で飲み物を買っている。
「ほいっ!二人ともココアは好きかにゃ?」
ニコニコしながら持ってきてくれた。
ココアを飲むとだいぶ暖まって安心した。
「美空ちゃんに良いものあげる!」
綾さんはカバンからウサギのぬいぐるみを取り出して美空に渡した。
「ラビット・・キュート」
美空は気にいったようでギュッとぬいぐるみを抱き締めた。
「それは君たちのお母さんが大事にしてた物だよ」
「ママが?・・・」
また二人同時に喋った。
双子の癖だ。
「綾さんはママの事知ってるんですか?」
「うん・・・凄く知ってる」綾さんの目は何かを隠しているような目だった。
飛行機が来たようだ。
「さ、行こう!日本へ」
座席に座ると美空が手をギュッと強く握った。
「飛行機ってさ・・・どういう原理で飛ぶか解明されてないんだよね」
「美空・・・怖いんじゃん」美空は首を横に振ってウサギを抱き締めた。
「大丈夫だよ、二人共!私は何回も飛行機に乗ったけど落ちた事ないよ」
綾さんが冗談を言ってくれて少し助かった。
機内食を食べたら眠くなってきた。
毛布を貰っていつの間にか寝てしまった。
「美空ちゃん美月くん。起きて」
綾さんが起こしてくれた。羽田空港に着いたようだ。僕達は荷物を持って飛行機を降りた。
空港内ではジロジロ見られた。銀髪だからかな? 時々日本語で可愛いとか聞こえた。 売店で食べ物と飲み物を買って綾さんの車に乗り込む。
「じゃ、新しいお家にレッツゴー!」
綾さんが元気良く車を発進させた。
車の窓から街並みを眺める「みんな忙しそう・・・」
美空がボソッと呟いた。
「これが日本かぁ・・」
だいぶ車を走らせると景色も穏やかになってきた。
「美月は大丈夫?怖くないの?」
「うん、ワクワクする。ママとパパがいた国だもん」美空はすり寄ってきた。
「私は美月がいればいいもん・・・怖くない」
ヨーロッパの空港を出てから翌日の夕方。
「着いた!やっぱし運転苦手だな、私」
大きな家だ。
広い庭に松の木が立っている。
美空と手を繋いで玄関に入る。
白くて大きな犬が走ってきた。
「大福!ただいま」
室内で飼う犬じゃないような・・・凄く大人しそうだけど。
大福は僕達を見て尻尾を振っている。
「いらっしゃいって言ってるよ・・・」
美空が呟く。
「へぇ・・美空って犬の言葉分かるんだ」
「・・・・うん、まあね」
どうせ嘘だろう。
大福は寄ってきてお座りをした。
頭を撫でると激しく尻尾を振った。
家の中を案内される。 かなり広くて迷いそう 「どうする?今日は寝る部屋一緒にする?」
綾さんがご飯を作りながら聞いてきた。
「はい、美空と一緒がいいです」
「美月・・・いいの?」
美空とは手を握ったままだ「当たり前。僕は美空の兄だもん」
美空はクスッと笑った。
日本に来て初めて笑ってくれた。
箪笥の上にライオンの人形と写真が飾ってある。
僕と同い年ぐらいの少年の写真だ、青い瞳・・・
「君たちのパパだよ・・」
綾さんがテーブルにお皿を並べながら呟いた。
「パパ・・・」
美空も写真を見つめる。
綾さんが大福の近くに座って切なそうな目をした。
「とっても綺麗な人だったよ。美月くんみたいな美少年だった・・・」
僕は照れてしまった。
あまり美少年とか言わないで欲しい。
美空は首を傾げている。
「ママの写真はないんですか?」
綾さんは申し訳なさそうに答えた。
「ごめんね。ママの写真は残ってないの・・・」
「そっか・・・ママ・・」
美空はしょぼんとしてしまった。
「ママはとっても綺麗だったよ。でも美空ちゃんの方が綺麗かな。美空ちゃんは天使みたいだよ」
美空は照れてツインテールを軽くいじった。
夕食は初めての和食でとっても美味しかった。
ここの生活も楽しそうだ。美空も一緒だし大丈夫。
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