毎日綾を抱いて。
疲れて・・・・。
ボーッとして。
食事も忘れて。
でも綾は妊娠しない。
毎晩中出ししている。
あれだけ出せば・・・
普通なら・・・
悔しくてがむしゃらに動かして。
友達の事も利奈の事も考えられない。
「っつ!はぁ!!」
「んっ!」
びゅくびゅくびゅく。
ベットに倒れこむ。 「綾・・妊娠しないね・・何でかな・・・美空はもう産まれたくないのかな?僕はもう会えないのかな・・・・・」
「いつか・・きっと来てくれるよ・・その時まで頑張ろう。美空はきっと来てくれるよ」
美空と名付けて。 僕と綾で育てよう。 けれども妊娠しない。 けだるい日々。
もうセックスなんてどうでもいい。
美空に会いたい。
会いたくてたまらない。
銀兎に会いたいな。
最近遊びに来てくれない。毎晩夜にボタンを押す。
けれども来てくれない。
銀兎にも嫌われたかな。
学校はもう修復が終わって授業が再開された。
けど僕は行けない。
動けない。
綾にすがりついて。
種付けして。
綾も学校に行けなくて。
いい加減に妊娠して欲しい・・美空に会いたい。
夕飯を口に運ぶ。
味も何もない。
美味しくない。
「美月・・おかわりする?」「いらない・・・早くしよ・・セックス・・」
「・・・・うん」
ピンポーン。
こんな時間に誰だ?
僕は綾とセックスしなきゃいけない。
美空に会うために。
綾が玄関に行く。
なかなか帰ってこない。
「綾?どうし・・・」
銀兎がいた。
綾は突っ立っている。
「銀兎!!」
「やぁワンコ君。」
綾はびっくりしたんだろう・・・
「綾、この子は僕の友達だよ・・・怖がらないで」
綾は泣いていた。
なんで泣いているの?
「そっか、お友達ね・・・どう?夕飯食べない?」
「はい、ママさん」
居間に案内して座らせる。綾は近頃ハンバーグをよくつくる。
ほぼ毎日。
銀兎が座ってお箸を持つ。「銀兎?ずっと呼んだんだよ?どうしと来なかったの?」
「少し検査をしてた。」
銀兎がサラダを食べるこの子はやっぱり人間だ。 「検査?何の?」
銀兎はお箸を置いて僕を見つめる。
青白い瞳。
「はっきり言う。君に繁殖能力は無い。精子が異常になっている」
「・・・・え?」
「精子の頭にDNAが無い。」そんな・・・嘘だ。
「僕の精子はいつ採ったの?」
「夜、忍び込んでね。君の・・・その・・・性器から・・・何て言うか・・・・あの・・・採った」
全く覚えてない。
「つまり今の君の行動は無駄。やめた方がいい。」
「美空に会いたいんだ、そんな嘘聞かない。」
「嘘じゃない。聞くんだ・・・ちゃんと。」
綾は黙っている。
「綾、こんなの聞かなくていい。嘘だよ。こいつは友達でもなんでもない。悪魔だよ・・」
「ちゃんと聞け!!」
銀兎が怒った。
「いいか・・死んだ者は生き返らない。ママさんが良くしっているはず。」
綾は頷く。
「新しく作ってもそれは別人。」
「そんな・・美空に会いたいよ・・・会いたい・・」銀兎がハンバーグを箸で切って一切れ食べる。
「ママさんのハンバーグ美味しい・・・」
銀兎は微笑んだ。
「よかった・・・嬉しいな銀兎ちゃん」
綾はなんで冷静なんだ?
「もうやめるんだ。今の君は狂ってる。ママさんも君に流されている。」
「流されてるって・・綾も子供が欲しいって・・美空に戻ってきて欲しいって・・・言ったじゃん」
綾はまたうつ向いた。
「ママさんは愛した人を忘れられない。求められるのが嬉しくて嬉しくてたまらない。そうでしょ?」
綾は泣きながら頷く。
「だから知ってても受け入れる。嘘をついてでも抱いて欲しいから。自分の息子だとしても。」
なんでこんなに良く知ってる?
綾と銀兎はグルなのか?
「綾・・知ってるって?何を?」
綾は泣きながら喋りだす。「施設でデータを見た時・・・双子には生殖能力は無いと・・そう書いてあった・・」
「なんで・・言ってくれなかったの?」
「傷つくと思ったから・・子供が欲しいって言ったのも嘘」
「なんで・・・なんで?」
「美月を・・奪われたくなかったの。私の美月を」
銀兎は綾の背中をさする。「ママさん。辛いですね。お気持ち分かります。」
綾は銀兎に抱きついた。
なんだよ・・
なんなんだよ・・
「ママさんはまだ女の子なんだ。まだ幼い心。体は大人でもね。」
僕は銀兎を睨む。
「黙れ。悪魔に何が分かる・・・」
「悪魔でも分かるよ。元は人間。」
「出てけよ・・早く・・出てけ!!」
綾が僕を睨む。
なんでそんな目を。
「美月!この子は!!」
「ママさん。」
銀兎は綾の口を塞いで首を横に振る。
綾はうつ向いた。
「僕は悪魔だ。それでいい。だが君には幸せになって貰わないと困る。」
「五月蝿い・・化け物は消えろ・・・」
銀兎は少しうつ向いた。
「僕は君達に幸せになってほしい。ただそれだけだ」銀色のツインテールが怪しく輝く。
なんでこいつはこんなにしつこいんだ?
「そういえば。今日はお祭りだったな。三人で行かない?。」
神社のお祭りだ。
利奈が心配して電話もメールもたくさんしたのに返事をしていない。
「行こう!浴衣着て行こう」綾が無理にはしゃいだ。
「僕はいい。行きたくない」「美月・・・行こう。三人で・・・・」
「・・・・」
利奈も遊も留美も雪も来ている。
友達に会いたい。
「浴衣はどこ?」
綾は笑った。
車に乗る。
銀兎は後ろにちょこんと座る。
僕は助手席。
なんで三人なんだ? 神社にはすぐに着く。
小さなお祭りだが賑わっている。
車からおりて神社に入る。友達がいた。
遊も留美も雪も。
「みー!元気になったか?心配したぞ」
「おおっ!猫先生もいる!二人ともカワイー」
「全て私の採寸どうり・・」僕も友達に寄って話した。「ごめんね。もう大丈夫だから・・利奈は?」
「もうすぐ踊るってさ!」
太鼓がなって。
利奈が踊り始めた。
僕の方を一瞬みて微笑んだ「利奈ちゃん綺麗・・」
やっぱり綺麗で可愛い。
舞が終ると僕の方に駆け出す。
「美月くん!!」
「利奈・・ごめん。心配させて」
「美月くんのばかぁっ!」
少し化粧をしている。
舞姫のまま僕に抱きつく。周りから笑いがおきる。
綾も笑っている。
これが幸せなんだ。
友達がいてお母さんがいて・・笑っていられる。
みんなで夜店で焼きそばを買って食べた。
綾ももう元気そうに話している。
良かった・・・。
銀兎がいない・・。
「みんな、ちょっと待ってて!すぐ戻るから」
利奈は舞姫姿のまま焼きそばを食べている。
「美月くん?どこ行くの?」「お礼を言わなきゃいけない人がいるの!」
銀兎を探す。
綾の車の所にいた。
「やぁ。楽しめた?」
「銀兎もお祭りに行こ!」
銀兎はクスッと笑った。
「僕は悪魔だ。神の社には入れない。」
「そっか・・・」
銀兎はうずくまる。
「ヤキソバ・・食べる?」
「うん・・いただく。」
車に寄りかかって食べる。「うん。なかなか美味しいね・・・」
「銀兎、ありがとう。」
「お礼は要らない。前にも言った。」
「ははっ、そうだったね」
「悪魔に感謝するな。僕は全部捨ててこうなったんだ。」
「銀兎は何をしてるの?悪魔だから悪い事?」
「・・悪人を殺してる。」
「悪人を?じゃあいい事じゃないの?」
「とんでもない。悪は悪。僕の主観で判断した悪人だ。他の人から見たら悪人じゃないかもしれない。個人の正義の主観なんてそれぞれ。」
「ふーん」
銀兎はヤキソバを食べ終えた。
「美味しかった。ごちそうさま。借りができたね。」銀兎は背を向けて歩きだす「どこ行くの?」
「然るべき所。」
「家は近くにあるの?」
「教えられない。」
僕は銀兎の後ろを歩く。
「銀兎はなんで悪人と戦うの?」
「僕の能力を有効に使うため。」
「銀兎は幸せ?」
「・・・・・・」
立ち止まった。
「君の・・美月の笑顔が見れればそれでいい。」
「・・・・え?」
「僕の仕事は二つ。悪人を裁く。そして君を幸せにする。その二つ。」
「銀兎・・・?」
銀兎はニコッと笑った。
可愛らしい笑みだけど・・どこか寂しい。
「僕が人間を辞めた時そう誓った。大好きだった人のためにね。」
そう言ってまた歩きだす。「また・・会えるよね?」
「ワンコの世話は疲れるな。じゃあね。」
闇に消えたその背中は全てを背負っている。
また助けられた。
僕はみんなの所に戻った。みんな笑顔でいてくれて。楽しかった。
それから綾とは普通の親子になった。
体は求めない代わりに訓練をしてもらう。
だが銀兎と会えなくなった会いたいのに。
銀兎はまるで。
僕の闇。
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