月明かりで照らされる公園周りに人はいない。
黒い兎とベンチにすわる。「で、君はなんでそんなに悲しそうなの?」
「妹がね・・死んだの。僕が酷く傷付けて遠くにいって・・バケモノって言ってしまった。傷付けたまま死んじゃった・・・」
「ふーん。いいんじゃない?別に」
「・・・・はぁ?」
黒い兎はツインテールをいじっている。
「死んだんだから。後悔しないで君は生きればいい」僕はイラッとした。
「なんで、そんな勝手な事言えるんだ・・・」
「僕は他人だし勝手な事言える。君弱いね。凄く弱い。君は慰めて欲しいだけでしょ?妹を傷付けた罪を消したいだけでしょ?」
そうじゃない・・・ムカつく・・殴りたい。
「違う・・・僕は妹が好きって言ってくれたのを・・無視してしまった・・そして・・バケモノと言ってしまった」
「バケモノなんて消えればいい」
その瞬間僕は殴りかかった黒い兎は素早く避けて足で僕を蹴り飛ばす。
「・・ぐっ!!あっ・・」
コンクリートの床に倒れる「よっわーい。負け犬」
僕の上に股がる。
こんな状況前にも何度かあったな。
「妹はバケモノじゃない!」何とか掴みかかろうとする「じゃあなんで君はバケモノって言ったの?」
「・・・・・っ」
「そう思ったならバケモノでしょ?そんなのいらないよ」
「でも・・・でも・・」
涙が溢れてきた。
美空はずっと耐えてきたんだ。
600人、殺した事。
僕達の過去。
自分の異常な能力。
全て・・・全て・・。
僕は分かってあげるべきだった・・。
「いい眺め。君を犯してみようかな。」
もうどうにでもして欲しい殺して欲しい。
「やれよ・・・僕は死にたい」
「そっか。じゃあ遠慮無く」黒い兎がナイフを取り出す学校で使ったナイフ。
赤い点が僕の胸に光る。
「どこから切ろうかなぁ・・お腹・・全身・・バラバラにしちゃうのもいいかも」
怖い。
怖い。
でも死ぬんだ。
死にたいんだ。
「うーん。悩むなぁ。腕からいこうかな」
冷たいナイフが腕に当たる「つっ!!痛い!!」
腕を深く切った。
「痛いでしょ?死ぬんだよ。妹の気持ちも分からず。あの世にいったら妹によろしくね」
嫌だ・・・そんなの。
死にたいけど死にたくない「助けて・・・殺さないで・・・お願いします」
黒い兎はニヤリと笑った。「かっこわる。」
「嫌だ・・助けて!」
黒い兎はナイフをしまって僕の顔を殴る。
めちゃめちゃに殴る。
凄く痛い。 「助けて欲しいなら生きろ。しっかり生きて妹の代わりに幸せになれ。」
最後の一発は凄く痛い。
「つっ!・・・うん・・そうだよ。後悔したらだめだよね」
黒い兎は僕の上からどいた「分かればいい。」
また腕を組んでいる。
かなりボコボコにされた。立てない。
唇が切れて痛い。
「やりすぎた。すまない。」黒い兎が起こしてくれる。またベンチに座る。
「君の名前は?」
「美月・・・」
「負け犬か。ワンコ君って呼ばせてもらう。」
「美月!美月だってば!!」
「ワンコ君。」
そのやり取りが何回も続いた。
僕は負けた。
「ワンコ君でいいよ・・」
「ワンコ君と友達になりたい。これは友達の印。」
「これは何?」
防犯ブザーみたいなボタンのついた物。
「遊びたくなったら呼んで。来れる時には行くよ。」変な友達が出来てしまった・・・・
「僕の名前考えて。」
「いきなり言われても・・」「じゃあ今度あった時でいいよ。」
黒い兎は立ち上がって帰ろうとした。
「君は誰なの?女の子?」
「体はそうだよ。こころは男だけど」
「今日は・・・ありがとう」「別に・・お礼はいらない」また腕を組んで偉そうなポーズをする。
その後ろ姿。
銀のツインテール。
華奢で小柄。
あの口元。
なんとなく言った。
「美空・・・美空でしょ?」黒い兎は立ち止まった。
こちらを振り向いた。
「美空は死んだよ。僕はバケモノ。じゃあね。」
流線型のヘルメットの口元が閉じて完全に肌の露出が無くなる。 公園の柵を軽々しく飛び越えて消えてしまった。
美空の名前は教えてないのに。
また会いたくなった。
あの黒い兎は美空かも。
本当は生きているかも。
そう・・儚く思った。
そうであって欲しかった。
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