特に拘束されないで学校の会議室に集められる。
会議室には教員4名・・・綾はいないようだ。
良かった・・・・。
遊と利奈は脅えている。
当たり前だ。
教員4人も目が恐怖に染まっている。
会議室にいるのは6人の兵士。
きっとまだいる。
僕の中の悪魔がそう言っている。
椅子に座らされる。
なぜ拘束しない?
さっき無線を使った隊長らしき男がホワイトボードの前に立った。
「まず怖がらせてすまない、君達を殺す気はない。」目を見る。
なんでだ?嘘の目じゃない・・・こいつらは?
「私達は警察に復讐するため学校を使わせて貰う事にした。どうか協力してほしい。」
隊長の男がマスクを取った、50代前後の白人。
全員がマスクを取った。
全員白人。
イギリス系。
全員元軍人・・・SASか?天使の羽に剣のマーク。
全員AK47。
殺す気が無いのに?
AK47は日本で一番入手しやすいが、やっぱり殺す気がないとは思えない。
「なぜこの学校を選んだか?すまないが田舎で制圧しやすいからだ。食事と毛布は用意してある。トイレに行きたい者は誰か付き添わせる」
なんだこいつら?
食事と毛布を用意するテロリストなんて聞いた事ないぞ・・・・
「まず理由だが・・・私の娘が警察関係者に犯された・・・娘は生きているが生きていない。もうだめなんだ・・・詳しくは言えない。証拠は掴んだがまともに聞かない」
警察は堅物すぎてまともに働いていない。
ありえる話。
「マスコミは報道規制で政府の息がかかっている。
そこで強行手段と言う訳だ・・・」
ニュースのネタは政府の閲覧後に報道許可がおりる。ガセが無くなったが政府にいいように使われている。毛布と固形食料を渡される利奈と遊が怯えながらも受けとる。
僕もとりあえず受けとる。「携帯などがあれば出してもらえるかな?」
全員従う。
僕は2つ持ってる。
片方だけ手渡す。
ボディーチェックもしないで・・やっぱり素人か?
いや、絶対に軍人だ。
隊長は無線機を取り出す。「総員配置。人質の見張りは4人でいい。私も見張る・・・ああ、そうだな。よろしく」
隊長と3人だけ会議室の警備・・・。
もう8時・・さっきの隊長ともう一人が部屋に残って会議室のドアに2人。
誰も喋らないで毛布を被っている。
まだサイレンは聞こえない「パトカーは来ないな」
隊長が呟いた。
僕たちを見て近づいてきた・・利奈と遊は怯える。
AK47をテーブルに置いて地面に座る。
ほぼ同じ目線になる。
「すまないな・・怖がらせて。君たちは14歳かな?」利奈が頷く。
「そうか・・私の娘と同い年だな・・・」
悲しそうな目。
こいつは本当に何もしないのか?
「食事は・・・大丈夫だよ。毒など入ってない。」
利奈の固形食料の袋を開いて少しちぎって食べた。
「ほら!まあまあ美味いぞ」利奈は残りの固形食料をかじる。
「甘い・・・チョコレート味?」
隊長は笑って利奈を撫でた「あは、あはは!美味しいです」
遊も何口か食べて美味いと言った。
教員達も食べ始める。
僕は食べない。絶対に食べない。
「君は食べないのか?」
僕は隊長を睨む。
「ええ、死んでも食べません」
隊長は笑った。
「そうか・・・」
利奈の目が変わりつつある・・・同情、共感、理解しようとする目。
「娘さんはどうして酷い目あったんですか?」
利奈は隊長に近づく。
「娘はな・・そいつを好きになった。好きになって盲目になって騙されて・・・体も心も犯された」
「ひどい・・・」
利奈が呟く・・・
こいつらまさか・・・ストックホルム症候群を起こそうとしているのか?
サイレンの音がする。
隊長が無線を取り出してカーテンの間から外を見る。「警戒しろ。会議室からはパトカーが四台見える。ぬかるなよ」
隊長はポケットからワルサーP22を取り出す。
利奈がビクッと怯える。
「君にこれをやる。私を殺したくなったら使ってくれ・・・」
利奈は手渡されたP22を見る。
銃を触るの初めてのようだ・・僕が利奈の手から奪って撃ってもいいが。
どうせ弾丸は入ってない。人質に銃を渡すなんて聞いた事ない。
利奈はギュッと銃を握った・・・また目が変わる。
隊長がAK47を持って無線で仲間とやり取りしている。サイレンの音が次々と増える。
仲間は何人なんだ?
ふと思った。
僕は何でもこんなに冷静なんだ?
何でもこんなに分析しようとする?
やっぱり僕は普通じゃない・・・普通の子は怯えるし恐怖する。
僕は化け物?悪魔?
「美月くん・・?大丈夫?」利奈と遊が心配そうな顔をしている。
「なんか・・怖い顔してたよ・・・」
「う、うん。大丈夫」
僕は毛布を被る。
違う、僕は普通だ・・・大丈夫だ。
隊長がニヤッと笑った。
「SATのお出ましだ!警戒しろ!」
やっぱり素人じゃない。
戦いを好む兵士の顔。
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