5月になってしばらくして美空はヨーロッパに戻る事になった。
美空は荷物をまとめている「帰るの?美空」
「お兄ちゃんを傷つけたくないから・・・」
美空はいつも美月と呼んでくれた。
最近はずっとお兄ちゃんと呼ぶようになった。
なんか遠くに行ってしまったような気分。
でもそれでいい。
離れた方がいいんだ。
美空はトランクを閉じてため息をする。
「もう美空はいなくなるの・・・私は化け物でいい」今日は美空のお気に入りの白いワンピース。
美空はトランクを持って玄関に向かう。
綾が空港まで車で送る予定「お兄ちゃんは・・・見送らなくていい」
「美空・・・・」
「さよなら」
たった一言。
それだけだった。
まるで永遠にお別れを言うように。
おじさんの所に戻ったらまた会うのに。
美空は車に乗ってもこっちを見ない。
「じゃ、留守番頼むね・・」綾は凄く悲しそうだった。やっと会えた娘とまた別れるんだからしかたない。
車は行ってしまう。
だんだんと小さくなって見えなくなった。
居間に戻る。
いなくなった。
バケモノは・・・消えた。僕は・・・寂しくなった。凄く凄く凄く・・・・。
体の一部が無くなった。
そんな気持ち。
でもいいんだ。
それが一番いいんだ。
僕は幸せになる。
利奈と付き合い初めてから美空は学校に来なくなった屋敷の離れの小屋に閉じ籠った。
僕は何もしなかった。
声もかけなかった。
美空は前のように甘えてこなくなった。
僕はそれでホッとした。
見た目は天使でも悪魔みたいなバケモノ。
僕は違う。
僕は普通だ。
僕は人殺しじゃない。
美空なんかいらない。
そう思ったのに。
涙が止まらない。
寂しくて苦しい。
なんでなの?
でもまた会える。
近いうちに。
そんな気がした。
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