真っ赤だった。
その日は真っ赤。
僕と妹で染めたの。
真っ赤に。
血で染めた。
目が・・覚めた?
終わらなかった。
まぶしい。
「起きた?」
綾さんが一緒に布団の中にいる。
「僕は・・・」
「心配ないよ。美空もいるよ」
違う・・そいつはバケモノ・・・悪魔。
そんなやつ抱き締めなくていい。
「私はいっぱい嘘をついたから謝らなきゃいけないね・・・・」
綾さんの部屋。
ベッドの中。
綾さんは布団から出ていった。
机の引き出しから頑丈そうなケースを取り出す。
ボタンを押してロックを外す。
カパッと開いて二枚の紙を取り出す。
「これがパパの・・ルカの全てだよ」
紙を受けとる。
廃棄処分報告書。
対象、銀狼G-0128、男。
計画凍結。
会話能力無。
戦闘能力不明。
筋肉発達不足。
学習能力は恐ろしく高い。体格は一定以上は成長しないと思われる。
嗅覚の異常発達。
脳に異常な電気信号が見られる理由不明。
兵士のとして利用価値無しと判断。
投薬実験中止。
本実験体は焼却処分とする本書類は処分後焼却し外部に漏れぬよう要注意。
銀狼計画詳細は別紙記載。焼却担当アルバート・J・レイン。
写真には銀髪の少年。
僕に似ている。 これがパパ?
次の紙。
【要点だけ書いておく。私は間違いを犯したとは思わない。
焼却しようとしたが出来なかった。
実験体は焼却できない。
今まで何度も処理してきたがこの子はできない。
可愛らしい容姿に容姿に情が移ってしまった。
私の息子によく似ている。施設から何とか連れ出してかくまう。
食事を持っていくと可愛らしく笑う。
しばらく生活していると学習能力の高さに驚く。
医学の本を全て覚えた。
薬の調合も難なくこなす。全てを覚える。
私はルカと名付ける。
医学のシンボル。
ルカは紙を使ってコミュニケーションをとる。
会話はできないと思っていた。
だが違った。
脳に直接話しかけてくるようになった。
こちらの意識も先に読み取れるようだ。
超能力の一種か?。
詳細は研究しないと分からないが今更ながら計画を再開させたくない。
この子は私を父と読んでくれる。
こんな非情な私。
愛しくてたまらない。
私は追われている。
だからルカはこの紙を見ているあなたに託す。
どうか可愛がってあげてください。
私はルカのために死ぬ。
愛しい愛しいルカ。
どうか幸せに・・・幸せにしてあげて下さい。
そして大事に愛してください・・・レイン。
最後の方は字が震えて読みにくい。
「これがパパ・・・」
頭の整理がつかない。
銀狼計画?実験体?
「ルカは君達が5歳の時に捕まったの。君達と一緒にね・・・」
「え・・・?」
「計画が再開されて施設に戻されたの。ルカと君達が公園で遊んでいるのを捕まえてね。私があの時目を離さなければ・・幸せに浮かれていなければ」
「綾さん?」
良く分からない。
ママは何で捕まらなかったの?
「私と仲間はすぐに調べて見つけだした。忍び込んだ時にはう遅かった・・・」「・・・パパは殺されていたんですか?」
綾さんはうつ向く。
「そう・・実験されて解剖されて・・もう跡形も無くなっていた」
「じゃあ、綾さんが忍び込んで助けてくれたんですか?僕達を・・・」
綾さんは悲しい目をして僕を見つめて抱き締めた。
「違う・・・全部死んでた」「・・・・へ?」
「君達が殺した。施設全員」「何を・・・僕達が?」
綾さんは僕の背中をゆっくり撫でる。
「5歳の君達には普通に生きてもらおうと何も訓練はしていなかった。でも施設の職員、警備兵を殺した。600人・・・・」
綾さんは嘘を言っているんだ。
5歳で600人殺すなんて不可能だ。
「嘘ですよね?・・綾さん」「嘘じゃないよ。美月くんが忘れてしまったの」
その時、美空が目を覚ました。
「私は覚えてるよ。たくさん殺したの」
二人とも何言っている?
「私が仲間と踏み込んだ時には真っ赤になっていた施設の中は・・血でね」
そんな・・嘘だ。
「ご、ごめん。思い出しちゃった・・ちょっとトイレ言ってくるね」
綾さんは出ていった。
美空は同じ布団の中。
「美月が私を助けたんだよ・・・美月がかばったから・・私は生きてるんだよ」僕に抱きついてきた。
もう妹に戻っている。
「美空?・・」
「私は一瞬油断してね。美月がかばって吹き飛ばされて頭を打ったの。右目が赤いのはそのせい」
「そうだったの・・」
「その時からね・・ずっとずっと美月が好きで好きでたまらなかった・・・私の大事な人だから」
前に好きって言われたな。ちゃんと聞いてあげてなかった・・・
綾さんが戻ってきた。
ベッドのわきに座る。
「私は君達を連れて逃がしたの。海外にね・・・おじさんは私の仲間だった人。施設のデータを見てショックだったな・・・戦闘の遺伝子は受け継がれていて本能的に戦うようになっている。つまり普通には生きられない。闘争本能を抑制すると性欲が異常になる」
「銀狼計画って一体・・・」綾さんは首を横に振った。「詳細は不明。けど増田って男が関連してるの。ルカを助けた人を殺したのも増田なの」
パパが父さんと呼んだ人。レインという人。
「美空ちゃんはもう分かるかな・・・私は楓。君達のママだよ」
「・・・・・へ?」
僕は固まった。
今何て・・・・
「正確には私に名前は無い。すべて偽名」
僕はママとセックスしたの?
美空はなんで分かってたの?
「美空ちゃんはもう喋らないでも相手に意思を送れるし読み取れるよね?」
「うん、綾さんがママなのも迎えに来た時に分かったよ。」 綾さんは美空を抱きしめて謝った。
「ごめんね、二人共」
僕は疲れてしまった。
綾さんは僕達を抱き締めたぎゅっとされると安心したのはママだったからか。
「しばらく寝てようね、大丈夫だから・・・」
僕は何となく思い出した。施設の事。
美空と二人で施設全員の動脈を盗んだナイフで切った。
返り血を浴びて真っ赤になった。
僕と美空は真っ赤になった・・・
衝動にかられて全員殺したんだ・・・
僕も昔は両目は青だった。なんとなく思い出した。
怖くなった。
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