利奈の舞姫姿に見とれる。綺麗・・・一目惚れってこんな気持ちなの?
「綺麗・・・凄い・・」
僕は口に出してしまった。たしか神楽という舞だ。
花簪・・・他の道具は分からない。
綺麗な白くて長い装束。
赤い袴。美しい容姿。
いつまでも見ていたい。
舞が終わる。
拍手してしまった。
「美月くん・・ありがと!」利奈は頭を下げた。
「友達か?」
神主さんは僕達を見つめる「あ、はい!美月っていいます!こっちは妹の美空です」「唐木将、利奈の父だ。よろしく」
目付きは鋭くでも優しそうな顔。
利奈がもじもじしている。「美月くん、どうだった?」「うん、凄く綺麗で・・・一目惚れしちゃった!」
利奈の顔が真っ赤になる。将パパが大声で笑った。
さっきまでの雰囲気が嘘みたい。
「利奈!良かったな!!」
「お父さん、やめてよ!!」
利奈が将パパをポカポカ殴る。
なんがか可愛い光景。
「しかし、君達は可愛らしい。利奈はいい友達を見つけたみたいだな。」
「あの・・・利奈ちゃんはなんでお寺で掃除してたの?」
利奈はさらにもじもじした、舞姫の格好でもじもじする姿も可愛らしい。
「わ、私・・掃除が好きだから!あとね・・・」
「おーい、将さん。こんばんは!!」
綾さんが後ろにいた。
「あれ?美月くんと美空ちゃんもいる!?」
「綾さん?何でもまた?」
綾さんは木刀ケースを持っている。
「いやー将さんに稽古つけてもらおうと思って!」
「ふぇ?稽古?」
格闘マスターの綾さんが稽古!?
「綾・・・神社の中で稽古はつけれないぞ・・・お前の家で稽古してやろう」
「うぃーす。そうだった!」綾さんは頭をポリポリかいた。
利奈が近づいてきた。
ドキッとする。
少し化粧をしている。
「美月くんに見てもらえてうれしいな・・・とっても・・・」
「僕も見れて良かった・・凄く可愛いよ」
「わ、わ・・・・私!着替えてくるから!!!」
パタパタと走っていった。「若いっていいねぇ・・・」綾さんと将パパがニヤッと同時に笑って呟いた。
「あ、あはは・・あは」
僕もつられて笑った。
将パパも着替えに行った。僕は神社を見学してみた。木がたくさんあって空気がすんでいる。
「美月くん!」
利奈が走ってきた。
ミニスカートと白っぽいジャケットを着ている。 途中でこけそうになる。
すぐに近づいて支えてあげる。 「利奈ちゃん大丈夫?」
「うん、ごめ・・」
怪我はないが顔が真っ赤。「あわわわ!ご、ごめん!」
「うん、顔真っ赤だよ?まだ風邪?」
利奈の額に手を当てる
「んわぁ!!大丈夫だよ!!」
さらに真っ赤になった。
「利奈ちゃんって可愛いね」こんなに可愛いと思ったのは初めて。
利奈は固まってしまった。「う、うう、そんな事いわれると・・恥ずかしい」
しばらく利奈と神社の中を歩いてみる。
「広い神社だね。ここに住んでるの?」
「うん。毎朝掃除してから学校に行くの!」
「本当に掃除好きなんだね、僕掃除好きな女の子っていいと思うよ」
「う、うん。ありがと!」
神社っていいな。
初めて見るものばかり。
日本っていいな・・・。
しばらくして呼ばれる。
「おーい、そこのカップル早くこーい!」
綾さんが茶化すように呼んだ。
綾さんの車で行くらしい。車は6人乗り。
運転苦手って言ってるくせに車は大きい。
僕は乗り込もうとしたが。「美空?あれ?綾さん、美空は?」
「あ、なんかスーパーに寄りたいから先に帰るって。この前のハンバーグが気に入ったからまた食べたいって言ってたよ」
美空が一人で行動するなんて珍しい。
少し不安になったが。
「車で寄ってあげるって言ったんだけどねー」
「そうですか・・」 綾さんも不安そうだった。車に乗り数分で家に着く。美空はまだ帰ってきていない。
歩きで行くと10分くらいだし・・・スーパー寄ってるからかな。
庭で稽古が始まる。
僕と利奈は縁側に座る。 「お父さんは小野派一刀流の師範役なんだ」
「小野派・・・凄いね」
日本の剣術だ。
何度か見たことある。
「って!防具無し?」
「綾さんと稽古する時はいっつもそうだよ」
怪我しないかな・・・
二人とも頭を下げて礼をしてから木刀を握る。
「綾さんがいっつも悔しそうに言ってる。私が唯一勝てない相手だって・・・お父さんそんなに強いのかなぁ?」
「えっ?」 綾さんが勝てない?
信じられない。
凄まじい刀さばき。
数分後に綾さんが地面に倒れていた。
「綾!それで終わりか?」
「あーくっそー!!まだやる!!」
綾さんはまた構えて立ち向かう。
どちらも凄いが将パパは何歩も上手だ。
僕は冷蔵庫から麦茶を四人分コップに入れて運ぶ。
「はい、利奈ちゃん」
「ありがと!」
僕は人を好きになるのが怖かった。
でもこの子は・・利奈は好きなりそう。
あの姿に一目惚れした。
ニコニコ笑う目に汚れは無い。
本当に純粋な目だ。
「私ね、あのお寺に友達がいるんだ。詞葉ちゃんて子。その子と会うのもお寺に行く理由なの・・」
「ふーん。どんな子?」
僕は麦茶を一口飲む。
「とっても心が傷ついてるの・・・好きな人に酷い事しちゃったんだって。お寺に預けられたのは何でか分かんない・・・教えてくれない」
「そっかぁ。酷い事したのに自分が傷ついたのか・・・」
「きっと仕方なかったんだよ。酷い事したく無かったと思うよ・・詞葉ちゃんはそんな子じゃない」
「利奈ちゃんがそう言うならきっといい子なんだね」利奈は微笑んだ。
「うん、とってもいい子だよ!」
大福がワンワン吠えている誰か来たかな?
入り口を調べたが誰もいない。
「・・?大福どうしたの?」大福は尻尾を振って座っているだけだった。
幽霊?犬って嗅覚で見えない物も感じとるとか聞いたな。
そう言えば美空がまだ来ない。
縁側に戻ると綾さんが悔しそうにしていた。
「勝てん!なんで?」
将パパは得意気に笑う。
「俺は天才だから綾にはまけんのだ!」
「お父さん、大人気無いよ・・・」
しばらくして綾さんが将パパと利奈を送って行く。 僕は大福と一緒にテレビを見ていた。
携帯が鳴る。
美空からメールだ。
メールを開く。
背筋が冷たくなった。
たった四文字。
さよなら。
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