私の部屋は殺風景だ。
散らかるのが嫌だし必要最低限の物しかない。
「さ、入って」
ルカはペコッと頭を下げて部屋に入ってきた。
「シャワー浴びてきな、着替えはバスローブがあるから」
バスタブもあるがあんまり使わない。
ルカは頷いて風呂場に向かった。
この家には特に見られていけないような物は無い。
私は任務があれば遂行するのみだから。
任務を与えるのはチーフたち。
ややこしいのはもっと上の人達の仕事。
テレビをつけて冷蔵庫からビールを取り出しソファーに座る。
ちなみに私は18歳だ。 政府の報道規制によってマスコミは前より影響力が無くなった。
だからニュースは大した事は報道できない。
だいぶ昔に立て籠り事件でSATの連中が突入しようとするのをマスコミが邪魔してたな。指揮系統も問題だったけど。
私はジャケットを脱いでPx4を取り出す。
銃を持ってないとおかしいくらいのご時世だ。
さっきのニュースもうちの仕事じゃないくてただの殺人かもね。
ルカがバスローブを着て出てきた。
「暖まった?こっち座りな」私の横に座らせる。
美少年だな。銀髪からシャンプーのいい匂いがする。「はい、ココア。私もシャワー浴びてくるね」
ルカにココアを渡して風呂場に行く。
ドレスを脱いでシャワーを浴びる。
どれだけ洗い流しても私の汚れは消えない。
消せない過去がある。
「はぁ・・・」
この体も武器だ。スタイルを保つのは武器のクリーニングと一緒。
バスローブを着てリビングに戻るとルカはテーブルにある銃を見つめていた。
私はルカの隣に座る。
「本物だよ。怖い?」
ルカは首を横に振った。
そしてメモに書いて見せた。
【本物は初めて見ました。触ってみたいですか?】
私はマガジンを抜いてスライドを引いてチェンバーから弾丸を取り出す。
「はい、どうぞ」
ルカは触ってみて構えたり引き金を引いてみたりした興味深々のようだ。
ビールを飲み干し、もうひとつ開ける。
ルカはテーブルにゆっくり銃を置いた。
口をおさえてあくびをして目を擦った。
「ルカ君は何歳?たぶん14歳くらいかな?」
ルカはコクコクと頷いた。綺麗な目だ。まったく汚れていない。
「どうしようかな。ルカ君はソファーで寝る?」
ルカはさらさらとメモに書く。
【本当にすみません。親が殺されてしまってどうしたらいいか分からないです】「殺された?見たの?」
ルカはコクリと頷く。
「そっか・・怖かったね・・誰か知り合いに連絡した?」
またメモに書いている。
【知り合いも友達もいません。行く所もありません】「ふーん。そうか・・・」
この子は・・・孤独だったんだな。
嘘をつける目じゃない。
私は目で人を見る。
これは私の能力の一つ。
「しばらく私のマンションで暮らす?私は別に構わないよ」
ルカは遠慮するように首を横に振った。
「いいよ。私も一人じゃ退屈だし、君は私を殺すような事はしないだろうし」
ルカは少し考えてからメモに書いた
【本当にいいんですか?僕なんかがいても・・ありがとうございます】
私はクスッと笑ってルカを見つめた。
「とっても可愛い顔なんだから自信持ちなよ!私は君の綺麗な目、好きだよ」
ルカは顔を赤くして黙ってしまった。
私は毛布を持ってきてルカに渡す。
「何かあったら起こしてね」ルカは頷いた。
電気を消してベッドに潜り込む。
私はなかなか寝付きが悪い。
睡眠薬を飲まないと眠れない日もある。
ぐすっ、ぐすっと泣いている声がする。
私はソファーに近づく 「ルカ君?泣いてる?」
ルカは毛布にくるまって泣いていた。
親が殺されたからか、それとも他の理由か・・・
私はぎゅっと抱き締める。「何で泣いてるのかは聞かない。だから好きなだけ泣きな・・・」
ルカの華奢な体は震えていた。
「一緒に寝る?」
ルカは返事をするように私の肩をギュッと掴んだ。
私はルカを抱き締めてベッドで布団にくるまる。
「大丈夫だからね・・・」
優しく抱き締める。
普通の男ならこんな事はしないけど。
しばらくするとルカは寝てしまったようだ。
幼い顔だ、まだ子供。
なんの汚れもない。
ふと、唇を近づける。
吐息が当たる。
ダメだ、この子を汚してはいけない。
キスしないかわりに優しく頭を撫でた。
私にこんな感情が残ってたなんてな・・・・
我ながらびっくりだ。
とっても綺麗な君を見つけた日。
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