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21
投稿者:初病
◆Df3LS3WJTE
今日は鋸山に行く予定・・・・だった。
朝からどうも調子が悪い。なかなかベットから出られない。
「美空・・風邪引いた?」
「・・・・ありえない」
私達は生まれてから病気にかかった事はない。
だから風邪ではない。
・・・と思う。
「ケホッ・・うぅ・・」
「風邪じゃん・・・」
「・・・ちがうもん・・」
「すぐに薬買ってくるから待ってて・・近くに薬局はあったかな?」
美月が地図を見ている。
私は地図を奪って放り投げた。
「風邪じゃない!・・・大丈夫だから」
「ワガママ言わないで」
私は負けたくない。
細菌程度に・・・。
「いい・・鋸山には行けるから・・早くしたく・・」クラッとよろめいた。
美月がすぐに支える。
ボーッとしてフラフラする・・風邪・・・かな?。
「寝ててよ。すぐに戻る」
「うぅ・・・」
ベットに寝かされる。
最悪だ・・・なんか凄い嫌な気分。
美月は財布を持って部屋から出ようとした。
「じゃあ大人しく・・・」
「早く・・・きて・・ね」
美月はクスクス笑った。
「素直になったね!」
「・・・っつ!」
「すぐ戻るよ」
パタン。
部屋に一人きり。
ウサギのぬいぐるみを抱き締めた。

なんだか凄い孤独感。
美月とお別れして銀兎になろうと師匠の所に行こうとした時。
車に黙って乗って・・。
美月を見れなかった。
ずっと私を見ているのに。美月は過去の話を聞いて私をバケモノと思った。
あまりに唐突すぎてしかたないと思ったけど。
美月自身は普通の人間と思って生きてきたんだ。
いきなりあんな過去を言われても・・・・。

私がいなくなれば美月は悩まないでいいから。
でも結果的に私は美月を巻き込んでしまった。

これでよかったのかな?
そんな想いが時々頭をよぎる。

バケモノは私一人でいい・・・そう思ったのに。

胸が苦しくなってきた。
熱はあるのかな。
おでこを触ると微かに熱がある。
「は・・ははっ・・風邪・・・・ケホッ・・私が風邪引くなんてな・・・」
夏風邪って長引くとか聞いた。
また迷惑をかけた。
美月に・・・・。
本当に情けない。

美月はまだ戻って来ない。もしかしたら私を置いてどこかに行ったのかも。
しばらく美月の心を呼んでいないから・・・。
また私を嫌いになったのかも・・・。

私って嫉妬深いし独占欲強すぎ・・・キモチワルイ。
目を閉じてみる。
美月・・・早く・・。
帰ってきてよ・・・。

鼻がなかなかきかない。
不安になる。
私一人じゃ・・・。
ダメだ・・・。

カチャッ。
「美空、お待たせ・・っ!」
私はテッシュの箱を掴んで投げつけた。

「・・・遅い・・・」
「ご、ごめん・・」
「私を・・・・」
「ん?」
「私を置いて・・どっかに行ったのかと・・」
「そんな事しない。死ぬ時も一緒」
真っ直ぐ私を見つめる。
またまたクラッとする。
枕に顔を埋める。
私って本当にバカだ。

美月は袋をガサガサとあさっている。
風邪薬とスポーツドリンクを取り出した。
「ほぃ、飲んで」
「・・・・・」
風邪薬なんて初めて飲む。多少の抵抗がある。
飲みたくないな。
「飲まないと酷くなるよ」
「・・・むぅ・・・」
私は口に薬を放り込んでスポーツドリンクで流し込んだ。
「んっ・・ケホッ・・」
「しばらくは安静にね」
美月は私のおでこを触ってから体温計を取り出す。
わきに挟むタイプ。
「これで熱計るからわきに挟んで」
「うん・・・」
わきに挟む。
少しヒヤッとした。

ピピピッ。

体温計を見ると38℃。
微熱ではないか・・・。
「まぁまぁ・・あるな・・」「・・・ごめん」
「ん?何が?」
「美月に迷惑かけた・・予定が狂った・・ごめん」
美月は少し困った顔をした
「別に・・いいよ。そんなに謝んなよ」
「・・・・・」
私の手を握ってくれた。
暖かい。
「美空の風邪引いた所見れて・・まぁ・・嬉しいよ・・・・」
「な、なに・・どうゆう意味・・?・・?」
美月は少し照れた。
「分かんないならいいよ」
「・・・?」

しばらくして眠くなる。
美月はテレビを見ている。眠いな・・・。
眠い・・・。



真っ暗。
真っ白。
夢の中。
真っ暗な方に銀兎がいる。私を見ている。
私は私。
あれは私?
銀兎は私・・・。

「美空はどうなの?」
銀兎が話しかけてきた。
「どう・・・って?」
「そろそろ・・僕になりたくなったんじゃない?」
「今は・・いい・・美月といたい・・甘えたい」
向こうは真っ暗。
銀兎の青い目が光る。
「美空はバカだね・・・僕は美空を待ってるよ」
「私がバカ?・・・なんで?甘えたらバカなの?」
「美空が僕になるって決めた時そんな物捨てたはず・・・バカだよ・・そんなんじゃ美空はなくなる。僕も悪人を消せなくなる」
「甘えたいよ・・・」
「ダメだよ。早くこっちにきて僕になって。美空は僕なんだよ・・」
銀兎が手招きをする。
「違う・・・銀兎は私の道具・・・私は私・・」
「いいや、違う。僕は本当の美空。今の美空は偽物」そうなのかな・・・?
私は・・・どうなの?
「美空は真っ白になる必要は無い。早く僕と一つになろうよ」
「うん・・・」
「美空は一人きりでいる方がいい。僕も美空と一つだから。美月とは離れるんだ。それが一番いいよ」
「そうだよね・・やっぱり近くにいない方がいいよね・・私はいらないよね」
「そう。美空はいらない。僕だけいればいいから」
銀兎と一つになる。
白と黒が混ざる。
何色になるの?

「・・・・っ」
目が覚めて・・雨の音。
美月は寝ている。
もう夜。
美月の隣にいちゃダメ。
やっぱり私は銀兎だから。美空じゃない。
甘えちゃダメ。

荷物を持って部屋を出る。どこに行こうかな。
ホテルを出て街を歩いてみて。
雨に濡れて。
もう何も分からない。
私はどっちなの?
分からないよ・・。
雨が酷くなってきた。

寒いし・・・苦しい。
風邪なんかどうでもいい。このまま消えたら楽かな?このまま美月と・・さよならをすれば。

しゃがみこむ。

苦しい・・苦しいよ。
ポツポツと服にかかる雨。私はこのまま・・・。
雨がやんだ・・・。
いや・・・。
誰かが傘をさして私のそばにいる?
「どこに行く気だよ・・美空・・」
美月だ・・。
どうしてそんなに必死な顔なの?
「美空、早く帰るよ」
「いい・・私は・・」
「いい加減にしろよ・・」
美月は怒っている。
「いい加減に・・甘えろよ・・・素直になれよ」
「私はダメだよ・・」
美月が手を引っ張る。
私はついて行けばいいの?このまま美月といていいの?・・どうなのか分からない・・・。
ホテルに戻ってからシャワーを浴びる。
少し暖まったかな。
バスローブを着て髪をバスタオルで乾かす。
「美空、こっちこい」
「え?・・わっ!」
手を引っ張られる。
「僕が乾かしてやるよ」
「いい・・自分で・・」
美月が頭を叩いた。
「ばかっ!!美空はバカだよ・・・」
「・・・美月?」
「もっと甘えてよ・・僕も美空を独り占めしたいよ・・・だから・・甘えろって・・もっともっと」
「美月も?独り占めしたいの?」
「・・・うん」
ずっと心を読んでいなかったから。
分かんなかったけど。
「だから・・もう逃げるな・・・」
「・・・うん」
「何かあったら言えよ」
「・・・うん」
「二人で一つだからね」
「・・・じゃあさ」
「うん?」
「美月も風邪引いて・・」
美月は一瞬固まったけど分かったようだ。
ゆっくりキスをした。
これで一瞬。
「んっ、美空の風邪・・貰ったよ」
「・・・うん・・」
イチャイチャってこうゆう事。
なんかバカみたい。
けど悪くない。
「今日は一緒に寝るよ」
「うん・・」
ベッドに入った。
私はきっと美月がいないと潰れてしまう。
分かってくれるから。
理解してくれるから。
甘えられるのは美月だけ。愛してくれるのは美月だけ・・・。
だから私は離れられない。もう逃げない・・・。










翌日に美月も風邪を引いた・・予定がだいぶ狂った。「・・美空・・」
「なによ・・ケホッ」
「狂っちゃうのも悪くない」「・・かもね」

私なりに少し成長したような気がする。
今はこうやってくっついていたい。
甘えていたい。






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10/11/28 01:23 (lCyGGEGO)
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