あの田舎についた。
2009年12月6日。
俺が任務で来た日の4日後タイムマシンを隠して小さな町を調べる。
やはりあまり変わらないな・・・。
所々見てまわる。
ここにいるのは確かだ。
美月がここに住んでいたと言ったから。
雪はやんでいるが空は曇っている。
後ろから子供の声がするが違う子供。
どうだかな。
やはり消えてしまったのか・・・・。
「きゃーっ!」
悲鳴が聞こえた。
公園の方に走る。
女性が教われている。
男が覆い被さっている。
レイプか?
こんな真っ昼間から。
草むらに連れ込もうとした俺はM1911を取り出す。
「おい!やめろ」
男はこちらを向いた。
マスクを被っている。
女性は逃げ出した。
ナイフしか持ってないな。「見逃してやる。ナイフを捨てて去れ!」
「・・・・・うぜぇ」
「なんだと?」
男に近づく。
「うぜぇなぁ!!」
こいつはなんだ?
銃を突き付けているのにこの態度。
「警察に連れてってやる。来い!」
ドンッドンッ。
・・・・・?
俺は撃ってないぞ。
後ろ?
男の仲間がいた。
メーカーも分からない安物の銃。
ドンッドンッドンッ。
凄まじい衝撃で倒れる。
血は出ていない。
防弾チョッキはきているが・・・
動けない。
「おい、早く来い!こんな田舎に来てヘマすんな!」
「おお、ワリィな」
男が俺を見下ろす。
「いい銃じゃん。もらってやろう」
それだけは許さない。
美月に・・渡さなければ。「わーっ!誰かー」
子供の声。
「ちっ、やばい!」
そのまま走って行った。
足音がする。
「大丈夫ですか?」
「あ・・・っ・・」
衝撃で骨が砕けた。
「今救急車を呼びますね」
「・・・っ・・」
意識が無くなる。
死ぬ訳じゃないが。
いかん・・・・不覚だった・・・・。
完全に気を失った。
美月と美空に会わなければ・・・。
会わなければ・・。
「大丈夫ですか?」
「う・・・・ここは?」
「ルカ、気が付いたよ」
「うん、ちょっと変わって・・・大丈夫ですか?分かりますか?」
銀髪の医者。
まだ若い。
「あ・・大丈夫・・だ」
「よかった・・ここは病院ですよ」
「ああ・・・」
やっとはっきり目が開いた病室のようだ。
「骨が数本砕けているのでしばらく入院になります」タイムマシンをほったらかしだ。
二人の医者がいた。
銀髪の男と。
銀髪の女・・・
「ここは白木病室か?」
「はい、そうですよ」
この二人は見覚えがある。ルカと楓。
「しばらくゆっくりしててくださいね。すみませんが鉄砲は預からせてください・・・・」
楓は少し戸惑ったように言った。
「俺は・・・」
ルカは俺の肩を擦った。
「大丈夫です。あなたは悪い人じゃない・・・そんな感じがします」
「すまない。レイプされそうな女性がいて助けたんだが・・後ろから撃たれた」楓は病室から出ていった。「二人とも警察に逮捕されたようです・・さっき連絡がきましたから」
良かった。
女性は怖かっただろうな。「私はこれで失礼します」
「ああ、助かった・・・」
ルカは病室のドアを開けた誰かと話している。
俺の方を向いて申し訳なさそうな顔をする。
「すみません、息子が話したいようなのですが・・・いいですか?」
「ええ、構いませんよ・・」コートはわきの机においてある。
かなり貴重なやつなのに・・・30万はした。
きっちり借りを払ってもらいたい気分。
「あの、おじさん大丈夫?」俺は声の方を向いた。
「僕、美月っていいます。」美月・・・美月だ。
外見も全て同じ。
可愛いらしい顔にブルーの瞳。
「あ・・・ああ・・」
「僕がお父さんに連絡したんですよ!良かったぁ・・無事で」
涙が出そうになる。
いや涙が出た。
止まらない・・・。
「あのおじさん?」
「ああ・・・また・・か」
「おじさん大丈夫?」
美月が俺の背中をさする。病室のドアが開いた。
「美月!どこ行ってたの!?もう・・探したのに」
「ごめん、美空・・」
あの子だ。
美空もいた。
生きていた。
二人とも消えてなかった。俺は涙が止まらなかった。「おじさん、泣かないで」
「美月、なんで泣かせたの?」
「分かんない・・・」
しばらくしてようやく落ち着いた。
「おじさんを見た時助けなきゃって思って・・・」
「そうか・・ありがとう」
美月は俺を見つめる。
「初めて会う人なのになんでか・・凄く感謝しなきゃいけない気持ちになるんです・・・今の僕があるのはおじさんのおかげのような・・・・そんな気持ちに」二人は隣のベッドに並んで座っている。
人形みたいだ。
可愛い双子。
「おじさんは君達に助けられて嬉しいよ」
美空は不思議そうな顔をした。
「私・・何か助けたかな?」「君達は14歳か?」
「はい!」
二人揃って言った。
さすが双子だ。
しばらく話した。
全く普通の子供だ。
最初に会った時の鋭さはない。
ごくごく普通の子供。
「おじさんは小説家でな・・タイムマシンの小説を書いてるんだ」
もちろん嘘だ。
「すごーい!聞きたい!タイムマシンってどんなの?」美月は目を輝かせている。「・・・タイムマシン・・欲しいなぁ・・・」
美空は腕を組んでなにか考えているようだ。
「よし、助けてもらったお礼だ。特別に話してやろう・・俺の事はアレックスと呼んでくれ」
それから入院中は二人に話した。
俺が経験した事を脚色して・・・。
2ヶ月たってやっと明日は退院。
夜中になっても二人で話しを聞きにくる。
「おーい!二人とも早く寝なさい!」
「はーい!」
二人が手を振って出ていった。
楓は病室に入ってきた。
「すみませんね・・うちの双子は好奇心が激しくて」綺麗な女性だ。
「いえ、とっても可愛いですね・・・」
「私とルカの愛の結晶です」そういえばルカは喋れなかったはず。
「旦那さんは昔喋れなかったんじゃないですか?」
「え、ええ。良く分かりましたね。私とルカは孤児院で出会ってからずーっと両思いだったんです」
少し顔を赤くした。
「それはいい事だ」
楓は頭をポリポリと書いた「不謹慎ですけど私を貰い受けようとした人が死んだから・・・ルカと出会えて好きになったんです」
「それは・・どうして亡くなったんですか?」
「たしか殺されちゃったんです。後から暗殺組織の人って聞いてビックリしましたよ」
なんだか運命的だ。
二人は結ばれるべくして結ばれたんだな。
「ルカは最初は喋れなかったけど精神的な物でした。私がその・・・筆下ろしをしてあげてるうちに・・声が出るように」
何とも可愛いらしく顔を隠す。
まだ子供っぽい所も残っているようだな。
「あ、じゃあ。私もそろそろ仕事の続きしますので・・・明日は退院ですね」
「ええ、お世話になりました。」
ニコッと笑って出ていった幸せそうな家族だ。
翌日の朝に病院を出る。
前に見た時より大きい。
美空と美月が見送ってくれる。
「おじさん、またね!」
「美月、その言い方だとまた怪我して下さいって言ってるみたいじゃん!」
「ははは、いいよ。その時は・・・また助けてくれよな!」
「はい!」
二人はニコッと笑った。
「二人はいっつもくっついてて仲がいいな」
美空は顔を赤くした。
美月はニコニコ笑う。
「美空は僕のお嫁さんです!僕たち結婚するんです!」
「ば、ばかっ!」
二人も・・良かった。
ちゃんとお互いを好きなんだな。
最初に会った時に近親相姦をしていたと打ち明けられた時はさすがに引いたが。今はそれを聞いてホッとした。
「そうか、いいお嫁になれよ。美空!」
「あ、う・・お嫁さん・・じゃ・・うーん・・・・・は、はいっ!」
俺は背を向ける。
「おじさーん。絶対また会おうね!」
「ああ、楽しみにしてる!」二人はいつまでも見送ってくれた。
俺は心が晴れた。
良かった。
二人とも普通になったが思いは変わっていなかった。タイムマシンの所に戻る。シートをどかしてハッチを開く。
また忘れた。
M1911を取り出す。
「また・・返せなかったか・・・」
ハッチを閉めて設定をする彼らは変わった。
いい方に変わったと思いたい。
人も殺さず。
普通に生きて。
それで幸せに生きてもらえれば嬉しいと思った。
俺もこんな人の事を考えられたんだな。
世界線は幾多にも枝分かれする。
俺の見た世界線が・・・。彼らの理想であると思いたい。
未来に戻ろう。
俺の家族が待っている。
無事に家族の所に帰る。
それが・・・英雄。
【End・・・・・】
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