大賀徹子は健介が気になっていた。
冴子が姿を消した事が、何か自分の責任の様にも思えたからかもしれない。
いや、それは単なる口実なのかもしれない。
徹子は、夫との夫婦生活は当に冷めている。
お互い自由にさせているのは、余計な事が面倒なだけである。
夫が外に女を造っているのも判っていた。
まさに「髪結いの亭主」状態だ。
徹子に食べさせてもらい、自分は外で浮気三昧だ。
徹子の関心は、当然の様に健介に向いていた。
「健介さん、由紀ちゃん連れて、遊びに行きましょうよ。」
「いいの? 君がそんな事をしても?」
流石に徹子は家庭持ちだ。
健介と身体の関係が出来ているとは言へ、その立場は微妙だ。
「文句なんか言わせないわよ・・健介さんは気にしないで。由紀ちゃんが可
哀想よ。」
冴子との事が有ってから、娘の由紀が元気を無くしていた。
「由紀が何て言うか・・?」
「由紀ちゃんが行くと言ったら、健介さんはいいわね?」
徹子の気使いに感謝した。
「僕は良いけど・・君は本当にいいの?」
「もう感づいているわよ、私と彼方との事、向こうも安心しているんじゃな
いの?」
「そんなもんなの?」
健介は徹子の言い方に、半ば呆れていた。
「由紀ちゃんは、私に任せて・・。」
「それじゃ頼むよ、すまない。」
健介は、徹子にそう言って頭を下げた。
「ねえ、健介さん、溜まっているんじゃないの?」
徹子が話し方を変ると、そう言って彼に尋ねた。
健介が驚いて、思わず周囲を眺めた。
「いらっしゃいよ、抜いてあげる・・。」
健介に近づき、その手を取ると、彼を促す様にして隣の部屋に姿を消した。
「奥さんの事、まだ忘れられないの・・?」
徹子が健介にフェラチオを施しながら、訊いていた。
「すまない、君とこんな事になってさえも・・。」
「少し悔しいかな・・。でもこれからは、私の良さを、健介さんにタップリ
教えてあげる・・。」
そう言うと、徹子はなお一層そのフェラチオに熱が入った。
「混んでいるね・・?」
「さすがに、人気のあるショーの様ね。」
由紀の言葉を受け、徹子がそれに応えた。
「早い話・・サーカスみたいなものなんだろう?」
チョッとずれた事を健介が言うと、
「そうね・・・チョッと違うかな? ねっ、由紀ちゃん。」
「パパ、もう少し勉強した方が良いよ。」
少し早やめに会場に入った3人は、会場の雰囲気に圧倒されていた。
徹子の勧めで、健介は由紀を連れて、有名なアクロバットショーを見物する
計画を立てた。
徹子の言う通り、由紀は久しぶりに笑顔を見せていた。
母親との離婚を経て、母の居ない子供となった。
母は家を出たきり、2度と自分の元には戻らなかった。
どんなにか、その小さな胸が傷ついた事だろう・・?
母親が恋しい年頃だ。
その淋しさが、健介には痛いほど判った。
だが、娘と一緒になって、冴子を責める事は彼には出来ない。
彼が出来る事は、娘由紀を優しく抱いてやるだけだった。
<影法師>
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