「あなた、片平由紀さんよね?」
由紀の前を、一人の中年女が立ち止まると、優しく声をかけて来た。
「はい、そうです。」
由紀はハッキリそう答えた。
「悪いけど、ちょっと、後を振り返ってくれる?」
中年の女は、由紀に後を見る様に言った。
後には児童公園があった。
その公園の入り口に、由紀が良く知る顔の人物が立っていた。
「ママ!」
「由紀!」
女は、由紀に向かって両手を大きく広げ、前に突き出した。
由紀は、その女の胸をめがけ、飛び込んで行った。
女は強く由紀を抱きしめると、女は声を出して泣いた。
女の肩が激しく揺れている。
「由紀、ごめんね、本当にごめんね・・ママを許して・・ゆるし
て・・・。」
後は言葉にならない。
「ママ・・ママ・・。」
何度も母を呼ぶ由紀、
束の間の再開だと判っていても、女には至極の時間であった。
二人は、何時までもいつまでもいつまでも強く抱き合っていた。
真の自由を得る為には、力を持たなければならない。性奴では無く、本当の
力を。
その為に自分が今何を為すべきか? やっとその答えを見いだした気がし
た。
そして改めて女は、愛娘を強く抱きしめるのだった。
片平冴子として、片平由紀の母として、これが最後の務めになると自分に言
い聞かせながら・・・。
終わり
***冴子が本当の力を得た時、真の自由が得られる事になります。この先
の冴子の活躍と、由紀親子も描いてみたいものです。<影法師>***
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