遠くに、ひとが歩いているのが見える。まだ薄闇で、はっきりはみえないが、街灯の下にたてば変態夫婦がいるのがわかるだろう。
腰がぬけたのか、たてなくなった妻を無理矢理たたせて歩き始める。妻は漏らしてしまったが、私も限界に近い。とにかく近くの公園のトイレまで・・・。
電気屋の前に置いてあった大型の段ボール箱を見つけた。これを借りて、ふたりでかぶっていくしかなさそうだ。
しかし、実際に入ってみると窮屈で歩くのもやっとだった。妻を後ろにし、二人でちょこちょこ歩く。
新聞配達のバイクが見えるたびに、柱の影や路地を選んで隠れた。
やっと公園に着いたが、トイレの個室は一人で入っていっぱいの大きさ・・・。リードがはずれないので、妻に段ボールをかぶせてドアをあけたまま私が個室で用を足した。
いきなり足音がした。
「あんたらぁ、なにやっとんじゃ!」
「すみません、ごめんなさい!見ないでください・・・。」
妻が必死に謝っている。私も出ると、老人の男性がたっていた。
「恥ずかしいと思わないのかね!」
完全に怒ってる・・・。仕方なく、あやまりながらトイレを出ると5人くらいの老人がいた。散歩か体操か、老人の朝は早い・・・。
好奇の視線に晒されながら、公園をぬけていく。
もう完全に朝になってしまい、すれ違う人の数も多くなってきたが、なにより先に帰ることを優先した。
マンションについた。主人はずっと、何もしゃべらない。あんな辱めを受けて、やはり心理的にまいっているのだろうか。いずれにしても、あの会社は要望どおりのことをやってくれたのね・・・。
シャワーを浴びてからリビングに帰ると、新着メールがきていた。
主人は寝室に行ったのか、リビングにはいなかった。そっとメールを見ると、あの会社からのメールだった。
「ご利用、ありがとうございました。」
短い文章のあとに振込先とURLが書いてある。
なんだろうと思ってひらいてみると・・・。
そこには、あの凌辱シーンを1本にまとめたDVDの販売サイトだった。目線もなく、最後に体に書いた落書きにも修正はなかった。
サムネイルをみただけで、私たち夫婦だということもわかるし、なんのモザイクも入ってない!
電話が鳴った。非通知。
「おかえり、奥さん。無事に帰れたみたいだね」
「ちょっと!あんなの聞いてないわ!」
「あんなの?」
「DVDよっ!」
「あー、あれね。だって、経費が100万じゃ足りないもの。だから、残り400万円は、あのDVDで稼がせてもらうよ」
「そんな・・・。」
「それより、はやく引っ越したほうがいいんじゃないか?明日からは、そこにお客さんがたくさんくるかもよ?振込み、よろしくね!」
それだけ言うと、電話は切れてしまった。
明日からの生活、劇的にかわるのは、間違いなさそうね・・・。
私は、寝室に行って主人を求めた。
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