「はぁぁ~、あぁぁ~~。」
岩の浴槽に腰をかけ、私の開いた両足の間に顔を沈め、蜜壺を丹念に愛撫す
る彼。
その場所から、何度も突き上げて来る快感に、私は静かに歓びの声を上げて
おりました。
今このひと時を、再び訪れる事の無いこのひと時をこの身体に刻み込んでお
きたい。
今の私は、そんな思いが身体を突きぬけていたのでした。
場所を床の中に移し、本格的な行為に入っておりました。
一度結ばれた私達にとって、もはや遠慮するものは存在しませんでした。
一夜限りとは言え、この瞬間の私達は身体中の五感をフルに使い、快楽の全
てを貪りました。何を言われてもかまわない、犬、畜生にも劣ると言われよ
うと構わない。
私達の愛を、誰も妨げる事等出来ない・
愛する者同士の、お互いの命を燃やし尽くす究極の愛。それが例え不倫と呼
ばれ様と。
最初で、最後の夜は今始まったばかりでした。
目が覚めると、隣に寝ていたはずの彼の姿がありません。
(風呂にでも入っているのかな?)
何も身に着けていない身体をユックリと、起こしました。
昨夜、今までの私では考えられない位の、激しいセックスにこの身を燃やし
尽くしました。こんなにも、私の中に激しい情念が有ったのかと、自分でも
驚くほどでした。
それと言うのも、相手が彼だったからだと思います。
主人とでは、こうはいかないだろう。
主人の体力からしてもそうだ。
満足な夫婦生活を与えられたと思ってはいないが、それでも子供は授かっ
た。
生殖行為としては、その目的を果たしたと言えるだろうが、女の悦びとして
は如何だっただろう?
その記憶は、あまり無い様に思う。
昨夜は、その何倍もの悦びを与えられた。
セックスが、こんなにも女に充実感を与えてくれる行為とは思わなかった。
彼を忘れる事が出来なくなっている・・、それが私の正直な気持ちでした。
この身体に刻まれた・・彼の刻印が、私に女を目覚めさせた様でした。
浴衣を羽織ると、浴室を覗きました。
そこに彼の姿は無く、どこか別の場所に行った様でした。
ふと庭に目が行きました。
そこに、彼の姿を捉え、窓に近寄って、彼に合図を送りました。
「おはよう・・。」
私の方から彼に声をかけたのです。
「やあ、おはよう。起きたね?」
「早いのね?」
「年かな? 早く目が覚めちゃうんだよ。」
「まだそんな年じゃないでしょう。もう・・。」
そう言ってから、昨夜の彼を思っていました。
あんなに激しく動く彼が、年だなんて・・とても思えなかった。
「夕べ、あんなに私を虐めた人が・・何言っているの。」
私の口から、思わぬ事を言っていました。
「僕が礼ちゃんを虐めた・・? そうかな?」
「はい、虐められました、凄く意地悪な人だと思いました。」
私は、おどけた風に彼に言いました。
二人の絆が、これまでより、更に強く結びついた証拠だと感じていました。
職場での、今までの関係から大きく変わった私達と感じながら。
<影法師>
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