「冴子様も変わられましたね?」
滝嶋がそう言った。
「私が?」
「ええ、ここに連れて来られた頃とはあきらかにお変りになりました。」
「どんな風に・」
「艶っぽくなられました。」
「まあ、自分ではそんな風には感じないけど。」
「ご主人さまに、女を仕込まれまた様ですね。」
滝嶋にそう言われて、冴子はその言葉に思い当たった。
男との交わり・・それがここでの冴子の唯一の仕事でも有る。
男と交わる事だけが、此処でする唯一つのものなのだ。
掃除、洗濯、炊事全て今の冴子には必要のない物となった。
此処に来た時に言われた様に、まさに性奴となっていた。
それを、冴子自身が受け入れた事により、その為の生き物に変わり始めてい
た。
「ご主人さまは確かに凄い方、それは私も認めるわ。滝嶋さんも女だからお
判りになるでしょう?」
「はい、良く判ります。確かに精力家でいらっしゃいます。しかもあのお年
で体力もお有りになりますから。」
「良く御存じね?」
冴子は滝嶋が気になっていた。
「以前、私もお傍に居た事がありましたから。」
それは冴子も考えていない話であった。
「それじゃ貴女も?」
「もう昔の話です。」
「私と同じ様に拉致されたの?」
「多分同じだと思います。気が付いたら裸で寝かされておりましたから。」
冴子は気になっていた事を尋ねてみた。
「あのパーティーは何なのですか?」
「田沢様ですか? あの方は何もご存じ有りません。あの乱交パーティーを
主催されているだけです。」
「乱交パーティー・・、あれが?」
滝嶋の話から、あの時の状況が判る様な気がした。
「ご主人さまが、場所を提供されているのです。」
「私が此処に連れて来られた事は?」
「さあ? 多分お帰りになったと思っているのではないでしょうか?」
「でも、待っている様に私言われたのよ?」
「恐らく、ご主人様がお持ち帰りを申し出たのだと思いますよ。」
(持ち帰りって・・・、私を?)
「そんな事知りませんでした。」
「工藤さんに申しつけたのでしょうね。こちらへ連れて来る様に。」
「あの時、私を拉致した人が、「運が悪かったんだ」・・と言っていまし
た。」
「そうですか? 確かに運が悪かったのでしょうね? ご主人様の目に止ま
ってしまった事は。」
冴子にもやっと全てが見えて来た。
それと同時に、目の前に居る滝嶋が、自分と同じ立場に居た事に驚かされ
た。
<影法師>
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