男性陣が動き始めた。
テーブルの料理を取って、女性陣の方に運んで来る。
初めに左隣に座っていた、30代と思われる女性が声を掛けられていた。
「如何ですか? まだ早いかな?」
「私で良いんですか?」
「もちろんですよ。是非。」
そんな会話が冴子に聞こえた。
(何かしら? 今の会話・・。)
するとその女性が立ち上がり、男性に伴われて部屋を出て行った。
5人の女の一人が姿を消した。
そんな時だった。
部屋の中が少々ざわついた感じがして、一人の男が部屋に入って来た。
「社長、珍しいですね。」
進行役の女がその男をそう呼んで話しこんだ。
時折、冴子は自分の方を二人が見ている様に感じていた。
すると田沢が呼ばれた。
田沢がその二人と話をしていたが、暫くして冴子のそばに来て話しかけて来
た。
「片平さん、そろそろお時間でしょう? この部屋を出て右側の部屋で待っ
ていてくれます。大貫さんにも話しますから。」
田沢がわざわざ気を使ってくれたのかと、そう冴子は思った。
言われた通り、冴子はりリビングルームを出ると、右側と言われた部屋のド
アを開けた。
一瞬間違ったかと思った。何故なら、中が真っ暗だったからだ。
慌てて扉を閉じようとした瞬間、その腕を取られると、強い力で部屋の中に
引き込まれた。
しかも中に引き込まれると同時に扉が閉ざされ、中は真っ暗闇となった。
「誰か!」
冴子は恐怖のあまり大声で叫んでいた。
だが、叫べども、大声で怒鳴っても変化は無かった。
そして次の瞬間、目が眩むような強いライトが当てられた。
冴子にはその光の為、何も見えなかった。
「止めて下さい、何をするのです。お願い止めて。」
明りに向かって冴子は必死に叫んだ。
それに応える声は無かった。
次の瞬間、口元に何かが充てられると、その瞬間意識が薄れて行くのを感じ
た。
耳元で、
「悪く思うなよ、運が悪かったんだ、諦めな。」
薄れ行く意識の中で・・そんな声が聞こえた。
<影法師>
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