3人が乗るタクシーが、高層マンションの前で止まった。
「ここの8階が開場なの、徹子さんも、片平さんもどうぞ・・。」
田沢の案内でマンションの中に入ると、かなり豪華な造りの建物だと言う事
が判った。
「すごいマンションですね。此処にお住みなんですか?」
冴子は、何となく興味を感じて、田沢に訊ねてみた。
「まさか、いくらなんでもここは無理よ。主催者の方の持ち物よ。」
それ以上聞くのも変だと思い、それ以上はひかえた冴子だった。
部屋の前で、田沢がインターフォンを押して中に話しかける。
「私です。」
「は~い、今開けます。」
中から女性の声で返事が有り、すぐさま鍵の開けられる音がした。
「お友達を誘って来たのよ。」
田沢が、ドアの処に立っている若い女性に声をかけた。
「まあ、徹子さん、お久しぶり、最近ご無沙汰ですね。」
「そうかもね、田沢さんと偶然出逢ってね・・。それで久しぶりにね。」
「そうですか、それじゃ久しぶりに楽しんで行って。」
冴子は二人の話を何となく聞いていた。
「今日は何人いるの?」
若い女性が先導しながら、部屋の中を進んだ。
その途中で徹子と若い女性が話している内容が冴子にも聞こえてくる。
「男の方は7人、女性は徹子さんを入れて5人かな。」
「百合ちゃんは?」
「私はお世話する方ですから・・。」
何の話かと思いながら、冴子は皆の後を着いて行った。
通された部屋はリビングルームの様で、かなり大きな部屋であった。
部屋の真ん中にテーブルが置かれ、その上にいろいろな料理が並べられてい
る。
テーブルを囲む様にクッションの良さそうなソファーが置かれてあり、そこ
に座って談笑するのだろうと冴子は考えた。
「ほぼ皆さんお揃いの様ですから、そろそろ始めようかと思います。」
若い女性が進行役を務め、そう宣言した。
何も判らない冴子は、徹子と一緒にソファーに腰掛けたまで、その光景を眺
めているだけだった。
「それではみなさん、お入り下さい。」
女性の合図と共に、ドアが開いて何人かの人が入って来た。
如何言う訳か、全員男性だ。
しかも、年配の男性が殆どだ。
冴子の座るソファーの真向かいに置かれてあるソファーに、その人達も腰掛
ける。
冴子は男性が7人いるのが判った。
徹子と進行役の女との会話に出て来た人数に、間違いはなかった。
(何のパーティーなのかしら?)
冴子の単純な疑問がそれであった。
パーティーにしては雰囲気がおかしい。
男性陣が一様に、女性達を観察している様に見える。
女性陣にしても、冴子を入れて5人いるが、徹子と田沢は他の2人と会話す
る素振りもない。
「大貫さん、これ何のパーティーなんですか?」
冴子は正直に訊いてみた。
「今に判るわよ、結構面白いのよ。」
そう言うと何か含みある笑い方をして、言葉を濁した。
<影法師>
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