便器に、マットレスをくれてやった。
犬の精液なんかがついているベットで寝る気になんかならない。ましてや、調教師ともやってたはずだ。
我々の寝室で。
ほんとに屈辱。はらわたが煮え繰り返るほどの屈辱。ここまでコケにされたのは、中学生以来だ。
中学生時代、思い出したくもない暗黒時代。
いじめられてた。
いつも、一人だった。
でも、放課後は私のまわりにたくさんあつまる。
決して仲間ではない。
私をいたぶり、その事でストレスを発散させる同級生だ。
発端は、中学生1年の夏。プールの授業の時の着替え。思えば、ガキだから仕方ないことだが。
私には、まだ毛が生えていなかった。もちろん、むけてはいない。いまだに包茎だ。
それを見たクラスのリーダー的な奴が、ガキ特有の悪乗りで私をからかった。
「おーい!ここに小学生がまじってますよー!www」
みんなが集まる。男子だけとはいえ、隣のクラスもあわせれば30人。
気弱な私は何も言い返せず、ただされるがまま、誰かに羽交い締めにされた。
そのまま、水泳パンツも脱がされ、見せ物にされた。
屈辱だった。なぜそんなことをされるのか、それすらもわからずに。
「かわいい!まだまだ皮のびちゃうのかな?」
まわりの奴もはやしたてる。
他にも生えてない奴だっていたはずだ。なのに、そいつらまでまざってる。
「じゃ、はやしちゃお!」
リーダーが、油性マジックを取出し、私の性器のまわりに毛を書いた。
「うっわ!ボーボーじゃんwwwすっげぇ!」
結局、その日は風呂に入るまで落書きは消えなかった。油性マジックの落書きは消えても、私の傷は消えなかった。
翌日から始まる陰気ないじめ。子供特有の、「悪意のない」素直ないじめ。
金をせびられたり、暴力を振るわれたりこそなかったが、そんなことより私の心はズタズタだった。
ボーボーちゃんと呼ばれ、そのあだ名の理由はクラス、いや、学年全体が知ることになる。
「ボーボーちゃんをあたたかく見守る会」が発足し、放課後、何人かがリーダーとともに私をかこんだ。その輪のなかで、私は毎日彼らに確認されるのだった。
「さて、今日は生えたのかな?」
そう、毎日帰る前の儀式になりつつあった。
生えてなかったら、生えるおまじないとして、マジックで落書きされた。
毛のかたちだったときもあるし、象の絵を書かれたときもあるし、チンコとだけかかれたこともある。
学校からまっすぐ帰って一番先にするのが、入浴して落書きを落とすこと。そんな生活を1年続けた。
2年生の夏、保健の授業で性教育をうけた。
男女別でやってる今の時代がうらやましいほど、うちの中学は田舎だった。
男子も女子も一緒に、キャーキャー騒ぎながら受けていたのを覚えている。
基礎知識としての性教育であり、精子と卵子が結び付いて受精すること。それをするにはセックスをすること。命の大切さを考え、安易なセックスは安易に不幸な命を産み出すことを教師は語った。
その中で、成長という段階にきていて、今からは毛が生えたり声変わりするぞ!との説明があり、男子に教師が質問をした。
「おい!男子のなかで毛が生えてる奴手をあげてみろ!」
今なら、セクハラで懲罰をもらっても仕方ない質問だ。
昔は許されたのかもしれない。しかし、私には、絶望でしかなかった。
手を挙げてないのは、私だけだった。
リーダーがわざわざ説明してくれる。
「ボーちゃんは、まだ生えてないんです!いつから生えるんですか?」
教師は、困った顔で私に聞く。
「まだ生えてないのか?」
私は、まわりからこづかれて、ただ、「はい」としか答えられなかった。
授業は、爆笑のなかでおわった。
夕方、また囲まれていた。リーダーから、「素直なんだから、ボーちゃんはwww」と笑われた。
「てんけーん」
いつものように、ズボンをおろされる。
「ボーちゃん、今日は授業のおさらいをしましょう!」
リーダーのにやける顔が忘れられない。
「ますたーべーしょんとは、なんでしょうか?」
なんだったっけ・・・。あまり保健の授業きいてなかったな・・・。
「おいおい、うそだろ?まだしてないの?」
へ?
「だめだなぁ。おい、誰か教えてやれよ。」
「ほらほら、かわいいオチンチンつまめよ~」
まわりがやけにはやしたてる。
「ほら、もっとこすってこすってwww」
うわ・・・。うわわ・・・。
「あらっ、ボーちゃん感じてるぅ?wwwぎゃははははは!」
なんだこれ、すごい、へんだ、、、なんかでるっ、おしっこ?
びゅっ びゅびゅっ びゅるるっ
「うわー!きたねー!」
「うわっ!ついたついた!」
「飛ばすなよ!うわ踏んだ!」
ちりぢりになりながら、まわりに逃げるいじめっ子たち。
放心する私が取り残された。
「ぷっ・・・。」
爆笑がおきた。
「おま、はやいっつの!」
「つか、どんだけだしてんのよ!」
「くっさー!」
涙目になりながら、リーダーが近づいてきた。
「腰がガクガクしてたよwwwいやぁ、これでボーちゃんは大人に一歩近づいたんだな!よかったよかった!」
気が付いたら、まわりは解散していた。
教室には、ズボンをずりおろした私だけが取り残された。
ペニスの先から不意に飛び出した、おしっこじゃない何か。白くてどろどろする。ねばねばした手を嗅いでみる。ツンとしたにおい。
これが精液だなんて、おもってもみなかった。
先から垂れている精液をティッシュでふき、床に飛び散ったのもきれいにして、一目散に家に逃げ帰った。
翌日、学校を休んだ。
あんなのがペニスから出るなんて。
いまでこそ、学生は皆携帯を持ちネットで知識をダウンロードできる時代だが、当時、そんな性の知識はタブーであり、私にはショックで、もしかしたらこのまま死んでしまう病気なのかと思った。
しかし、あの白いのが出るときの快楽は、不思議な感覚は、忘れられるものではなかった。
学校をずる休みした夕方までに、私は5回もオナニーをした。
それは、快楽と、白い液が出なくなるまですれば死なないだろうという間違った知識からくるものだった。
ティッシュは1箱なくなった。
翌日学校に行くと、あだ名が変わっていた。
「早撃ちジョン」
いきなりそう呼ばれても、振り替えることなんてできない。
なんでジョン?
放課後のいやがらせは、なくなった。リーダーが、「ボーちゃんは大人になりましたから!」と言っていた。
3学期に入る前に、父の仕事の都合で転校した。
有数の進学校で、勉強だけのつまらない毎日だった。
屈辱の毎日は過去のものになり、3年になる頃には毛も生え揃った。
しかし、相変わらずオナニーは止められなく、ひどいときは1日3回出していた。
それでも、まわりの人間につられるように勉強をし、高校、大学へと進学していく。悪く言えば、流されていく、そんな日々だった。
ふと思う。あのまま、あの中学で、屈辱に塗れたまま、快楽をむさぼる毎日が流れていっていたら。あのまま転校していなかったら、いずれはオナニーまで見せ物になり、そのうち女子の前でオナニーを披露させられたりと陰湿な性的イジメをうけていただろう。
あの、人間扱いをされない、便器みたいな生活をしていたら。
私も、このマットレスでうずくまる便器みたいな生活をしていたのかもしれない。
私の本性は、こいつと何か違うのか?
大人になった今でさえ、便器だった時代を懐かしむ俺は、今は普通の人間を演じているだけじゃないのか?
妻は、快楽に負けて便器になった。
私は、快楽に勝てるのか?
私と便器を分け隔てるのは、もしかしたらさっきのように、薄いガラス一枚なのかもしれない。紙一重で、私はこっちの世界にいるのか。
便器が寝たのを確認して、私は浴室にむかった。
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