きっかけは、痴漢だった。
主人の会社に、忘れ物を届けた帰りだった。
それがまさか、私の人生を変えるとは知らず。1年も続いた挙げ句、主人の人生も変えるとは・・・。
結婚して約4年。恋愛結婚もマンネリ化しはじめ、ここ何ヵ月かはセックスもまともにしていない。
主人が初めての男性で、初めての性行為は、何が何だかわからないままだったが、痛いとか、苦しいとかのまわりから聞こえてくる「体験談」みたいなことは、なかった。
興味本位で、ネットでたくさん調べてみた。主人がよくいってるアダルトサイトも、見て回ってみた。
あきらかに、主人のモノが小さいことに気付いた。
軽くショックだった。
皮がかぶっているのも、すぐに精液が出ちゃうのも、世間では「だめ」なことだと言っていた。
私は、だまされたのかな?もっと選ぶべきだったのかな?と、少し後悔していた。しかし、愛する気持ちは変わらなかった。だから、満足できないときは、主人が寝てから(できるだけ、主人を傷つけたくなかったし、自分が淫乱だと認めたくなかったし)一人でこっそり、通販で買ったバイブを使って「満足」していた。
主人がよく見るアダルトサイトにいけば、こんなものを買うのは簡単だった。名義も、私ではないようにした。
クリトリスを吸引して振動するローターと、長いバイブがお気に入りだった。しかし、それはだんだんとエスカレートし・・・。最初は主人のと同じ10センチくらいだったのに、気付けば15センチまで種類が増えていた。
主人が出張の時など、家事を一通りすますと、朝からリビングでオナニー三昧だった。処女喪失が遅く、目覚めるのが遅かったから・・・。自分には、そんな言い訳ばかりをしていたが、本当のところ、気持ち良くて仕方なかった。
次第に、オナニーグッズは増えていった。股縄でバイブを固定し、後ろ手に手錠をし、鍵を部屋の隅に投げてからスイッチを入れる。全身が硬直し、スイッチを落としてしまう。膝から崩れ落ち、言葉にならない喘ぎ声を出しながらのたうちまわる。
それを気絶するまで。
気付けば夕方になっていたなんて、ざらだった。電池はもったいないから、充電式を買った。主人には「防災用懐中電灯買ったから、電池いるのー」と言っといた。怪しまれることもなかった。
それでも、主人とは愛し合っていた。
毎晩のように求めてきては、一人で勝手に果てる。ただ、いくときに中にだしてもらうことはなかった。まだ子供はほしくなかったし、なによりも、主人はイクときに腰をガクガクさせてしまい、腰をひいてしまう癖があったのだ。だから、ヌルヌルしているアソコから、ぬぽっと音を出して抜けてしまい、私のお腹や顔に飛んでくるのだ。
そう、発射する量は、ハンパじゃなかった。正上位で抜いて、顔や髪に飛んでくるのだ。だいたい30センチくらいしか飛ばないと「知識」では知っていたのだが、これはさすがに勢いがすごいのでは?
また、連続して「もう一回していい?」と聞いてくることがあった。私としては、むしろ歓迎なのだが、できればこれがもう少し長くて太かったら・・・。声には出せない。かわりに、喘いだ。
気持ちいいふり。
顔に飛んできた精液を、そっと舐めてみた。味はともかく、禁断の行為をしているみたいで、すごく感じた。でも、主人はフェラを嫌った。すぐ出ちゃうから・・・。たぶん、そんな理由だろう。
しばらくして、またイッた。今度は、鼻の穴のあたりにたくさん飛んできた。禁断のかおりなのかな・・・。
丁寧にウェットティッシュで拭いてくれる。アソコを舐めてくれる。
私は、この人を愛してる。
そう、言い聞かせた。
4回目の結婚記念日を来月に控え、主人にも忘れないでね!と何回も言い聞かせ、カレンダーにも書き込んだ。
主人が最近忙しいのは、昇進がかかっているのと、事業拡大にともなう新たな分野の研究だと聞いてた。夜も遅いし、夕飯もあまり一緒に取れない。へたをすると、帰りが深夜になったりする。おのずと、夜の営みは回数が減っていった。
でも、相変わらず私の病気は、おさままらなかった。本気で病気だったのかもしれない。病院に行くことも考えたが、恥ずかしかった。
特に生理前後は激しかった。発散してないと、イライラがつのった。
その日も、主人を送り出した朝8時から、家事を終わらす前からウズウズしていた。家事より先にしてしまうと、何もできなくなってしまう。
ふと、玄関のシューズボックスのうえに封筒があるのに気付いた。
主人は昨夜、珍しく早めに帰ってきた。家で書類をまとめて、明日の昼に発表するんだ。だって。家に持ち帰ってまでやらないでよ~と言うと、「早く終わらせて、久々にシタイから」と言われた。
結局、夕飯後には書類が出来上がり、20時から3時間、3発も出して満足して寝た。
私は、またおいてかれた。
3時間もやって、1回もいけなかった。バイブなら、何回もいけるのに。
なんだか悲しくて、一緒に寝てしまった。
だから、朝から悶々としていたのだ。
だけど、この書類がないと、間違いなく主人は困るだろう。
私は、家事もオナニーもほったらかし、主人を追った。電車で5駅先。もうついてるかな。ついてるだろうな。会社にいって手渡そう。
OLしていたとき以来の満員電車。きっついなぁ。もう乗りたくなかったのにぃ。でも、仕方ない。
頑張って主人の会社につく。受付で呼んでもらい、無事に手渡す。
「ありがとなぁ!すっかり忘れてたよ!今日は早く帰るから!」
期待させるようなことを言うわねぇ・・・。でも、とりあえず手渡せてよかった。
私は、あの人の妻。あの人は私の主人で、私の愛する人。
昨夜のことがよぎったが、今夜も期待して待っていよう!そう考えると、急いで家に帰る電車に飛び乗った。
車内は、反対方向へいくサラリーマンで、それなりに混んではいたが、ぎゅうぎゅうでもなかった。
ふた駅めで、さらに学生がたくさん乗ってきた。私は、隅の方に追いやられていった。でも、降りる駅は終点だから、まったくかまわない。
4駅めを出てすぐに、加速する。終点の5駅との間が、少し長いからだ。
カーブにさしかかり、体が密着しながらかたむく。
左手でポールを握っていたから、右手はフリーだった。急にガタンと揺れて、慌てて右手もなにか掴めるものを探す。
ぎゅっ・・・。
布?
え?
手を捕まれる。
「何触ってんだよ」
えぇっ!?
「あんた、なんで俺の握ってんだよ」
ちょっ・・・。そんな!
「知ってるか?痴漢は犯罪なんだぜ?降りてもらおうか。」
「違います、揺れたから掴まるものをさがし・・」
「だったら、掴めたらなんでも触っていいのかよ。」
「違います、誤解なんです!」
「だったらなんなんだよ、痛いじゃないか、放せよ。」
声を荒げられて気付いた。私、まだ握ってる。それに、これ、すごく太い・・・。
「ご、ごめんなさい。」
「いいから、次で降りろよ。」
「違うんですって!危なくてつい」
まわりの視線が痛かった。
「おい、痴漢か?」
「いや、女が言われてるみたいだぞ」
「痴女じゃないのか?」
「うわ!初めて見た~」
「サイテー。なにあの女」
同性からも、まわりのサラリーマンからも白い目で見られる。
心ない言葉が、耳に痛い。
「わかりました。どうせ終点だから、逃げませんよ。説明したら、わかってくれますよ」
「そう?じゃ、そうしてね。」
私は、こうやって捕まってしまった。
なぜ、あのとき彼が勃起していたのか、後で聞かされた。後ろから私の谷間を覗いていたそうな。むしろ、痴漢は彼の方なのに、私が先に手を出してしまったばかりに・・・。
偶然とはいえ、そのあと彼についていったのが、まずかったのだろう。
私の人生を変えることになるとは知らず。
主人の人生も変えるとは知らず。
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