皆が梨果に釘付けになっていた。描き始めた者はまだいない。席を移動する者や歩み寄る者も出てきた。梨果はまだ目を固く閉じていた。目を閉じているが為に余計に皆が無遠慮に執拗な視線をぶつける。敏感な部分に熱い視線を感じたのか、目を開けそんな彼らの姿を見ると、とうとう耐え切れずボロボロと涙を流しだした。助けを求めるように父親である講師に目をやると梨果は何かに驚くような顔をしてから更にヒックヒックとしゃくりあげて泣きだしてしまった。それに気になって講師を見ると夏用の薄手のスラックスの前を大きく膨らませ、それにも気付かぬ様子で呆然と梨果を見ながら立ち尽くしていたのだった。
「先生!」
私は声をかけた。我に返る講師に
「少し休憩にしませんか。モデルさん少し落ち着くまで。しかもこの後は下半身は何かで隠していいことにしませんか?これじゃあまりに可哀相です」
泣きじゃくった梨果を目にした皆もさすがにこの意見には反対できずに休憩となった。梨果は早々にバスローブをまとい、教室から出ていった。私も喉がカラカラになったので飲み物を求めてざわつく教室を出た。
ロビーの自販機で飲み物を買い教室に戻る途中、廊下の奥の急騰室から鼻をすするような音が聞こえたので行ってみると梨果がそこにおり、俯いてしくしくと泣いていた。
「…梨果さん、だっけ?大丈夫?おや、だめだよそんな格好で廊下にでちゃ」
バスローブのまま赤いスニーカーを履いた不思議な格好の梨果に声をかける
「すみません…あ、さっきの人…ありがとうございます。とても助かりました。」
ちょこんと頭を下げた瞬間、雑に着られたバスローブの襟元から乳房の膨らみがちらりと覗き、治まりかけてたペニスが再びみるみる反応した。あわてて視線をそらし
「あ、あぁ…もっと早く言えばよかったんだけどなかなか言える雰囲気じゃなくてね…」
そう言うと梨果は私の足元のほうを一瞥すると服の乱れに気付いたのか襟元を直した。そして髪を耳にかけながら
「あ、ぃえ、しーんとしてましたししょーがないですよ。でもだいぶ気が楽になりました。ありがたかったです。あたし洋子さんみたいにキレイじゃないし、ご覧の通り…ここだってちっちゃいし…スタイルよくないから申し訳なくってその分頑張ったつもりだったんだケド結局皆さんに迷惑かけちゃって…ゴメンなさい。。」
「あ、いや、初めてだよね。仕方ないよ。しかもあんな…いや、でもなんというか。あの…とても綺麗だった。今まで見たことないほど。」
そう言うと髪に手をやりながら俯いていた梨果は顔を上げた。女子高校生と話をするのは初めてだった。近くで見ると化粧っけの無い顔は派手さはないが幼いながらに思いの外整っているなと思った。そして潤んで綺麗な瞳を真っ直ぐにこちらに向けた。しかしこちらは目を合わせられず、しかも取り乱し意図せず本音が滑り出てしまう。そんな言葉に梨果は顔を真っ赤に染め
「え!えっ?!そんなことないですよ!てか男の人に自分の身体の感想を言われるのってありえないしメチャクチャ恥ずかしいです。だいたい裸見られた時点で初めてなのに…なのに初めてがこんな状況なんて…ってあたし何言ってんだろ!あー!」
やはり彼女も取り乱したように廊下へ駈けていった。振り向き涙目にニコッと例の笑顔をつくり。
「じゃ、戻るね。もう大丈夫。ありがとうございます!そんなえっちな目で見ないでちゃんとキレイに描いてくださいネ!」
ドキッとする一言と桃の香を残して先に教室に入っていった。
あれだけ酷い仕打ちを受けて皆に迷惑かけたと言える。フランクな振舞いの中に健気さを感じさせる梨果という少女に惹かれていく自分がいた。何とか自分のものにし、あの甘い香りの艶やかな肌を自由にしたい。そんな感情がわいてきた。
※元投稿はこちら >>