「なんだって?!」
梨果の不思議な進言に驚いた。
「…いい条件だと思うケド…だめかな?」
返答が遅れた私に梨果は髪に手をやりながら伺う。梨果にとっては利害関係を一致させたつもりらしいが、こちらとしては[利]しかない。こちらも裸になるというのは梨果側の[利]らしいがお互い裸になれば何らかのチャンスがありそうだ。そう考えるとこちらの[利]でもある。
「いいの?俺としてはありがたい。なんでこっちまで裸か解らないけど絵が途中なのは嫌だからね。」
少し親切にしただけで初対面の中年男と個人的に裸になるなんてこの子は人を信用しすぎだろうと思うが、向こうから転がり込んできたのである。これに甘んじない手はないであろう。
「よしっ。じゃ決まりね!いつにする?場所は??」
梨果は例の笑顔を見せ、またベンチの隣に腰をかけて瞳を輝かす。かなり近くに接近しTシャツから伸びる白い二の腕が触れた。甘酸っぱい梨果の香りがする。桜色の唇は艶やかで間から真っ白い歯をみせる。可愛いなと思った。早くこの子の裸をまた視たい。
「では明日はどうかな。」
早速提案してみる。
「うーんと…明日は午前中だけ部室の掃除があるから…午後からなら大丈夫だよ。」
「なら家でよければそこでどう。」
「お家大丈夫なの?」
「大丈夫。」
明日の日中は家族は留守のはずである。妻は仕事だし息子は朝から夕方まで中学で部活だ。
「わかった。多分学校12:30には終るから…」
待ち合わせを決めるとちょうどバスがやってきた。
「あ、バス来たよ。私はチャリなんだ。それじゃまた明日ね!バイバイ。」
と言って駈けていった。あんな事があったのにすっかり元気を取り戻したようだ。しかも今の約束もかなり過激なものではないのか。
「恐るべし女子高生…」
梨果の後ろ姿を見送りつつ、年甲斐もなくそんな俗語を口にしたのが妙に可笑しく一人苦笑した。
こんなわくわくした気持ちは久しぶりだ。走るバスの窓の外を見ているといつもと景色が違って見えた。明日が待ち遠しかった。
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