ともかく、二人を修理工場の有る街中まで送ると、亭主は修理屋の車に同乗
して車に戻った。
俺らは美千代を、その車の処まで送ってやる事にした。
車に乗り込む前、キヨシがとんでもない事を俺に耳打ちした。
「俺、あの女の事気に行ったよ、新婚旅行の途中と言うのがいいじゃない
か。
タクロー、チョッとの間、俺たちを二人だけにしてくれないか?」
俺が車を運転し、後部座席にキヨシと美千代が座る。
その後の事は詳しく話さずともお判りだろう。
途中車を止めると、俺は小用と偽って車を降りた。
その間30分程だったろうか・・。
暫くして車に戻ると、先ほどとは明らかに状況が変わっていた。
美千代の髪が乱れ、ブラウスのボタンが外れている。
美千代の俺を見る目も、それまでとは違っているようだった。
(彼方初めから知っていたのね!)
批判的な目を俺に向けた。
「新婚旅行の途中と言うので興味を持ったが、まさかの・・処女だったとは
ね。初夜前だとさ・・あの年で恐れ入ったね。」
後でキヨシが俺に言った話だ。
見合いで知り合ったと言う事は俺も聞いていたが、美千代が処女だったと
は・・。
それを新婦の亭主では無く、キヨシがいただいてしまった。
あの二人にとっては、実には気の毒な出来事だったと俺は思っていた。
あの時の美千代の目がそれを物語っていたからだ。
ところが、これに後日談がある。
ある時、俺がキヨシの部屋を訊ねた時の事だ。
奴が女を連れ込んでやっている最中、うっかり俺は奴の部屋の扉を開けてし
まった。
「アッ、悪い・・・。」
蒲団の中で、モソモソと動く姿に気が付いた俺は、慌ててそう言ってキヨシ
に謝った。
「なんだ、タクローか・・、バカヤロウー、早く締めろ。」
俺は慌てて扉を閉めようとした時、横の女性が顔を覗かせた。
一瞬だが、俺はその女と顔を合わせた。
女は俺の顔を覚えていた様で、慌てて顔を反らせたのだが、俺もその女の顔
を見て驚いた。
野中美千代・・・その人だった。
キヨシが、あの後も何度か美千代を呼び出しては関係を続けていた様だ。
恐らく住所とか、連絡先を聞き出していたのだろう。
教えなければ・・旦那にばらすとか何とか言ったのだろう。
新婚早々、美千代は不倫妻となっていた。
女は本当に判らない・・俺はその時つくづくそう思った。
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