満子からはその後何も言ってはこなかった。
その気が無いのか、それともキヨシに気をつかってなのか・・、俺に判断は
出来かねた。
だめだと思うと、無性に手にいれたくなるのが常だ。
しかも、一度とは言え、交わった中でもある。
あの時の満子は満更でもなかった様に俺には見えた。
こうなれば、こちらから接触するしかない、そう感じた俺はその方法を考え
始めた。
満子に会う為には、キヨシの処に行かなければならない。
キヨシと鉢合わせする事だけは避けたいものだ。
昼間ならキヨシも、満子の亭主も自宅から出ているはずだ。
俺は配達の合間を見て、思い切って満子を訊ねて見る事にした。
こんな時は、スーパーの店員は便利だ。
服装からして、人の家に出入りするにもってこいだ。
「失礼します、○○ストアーですが・・。」
家の中に向かって大きな声で叫んだ。
「は~い。」
奥から声がすると、間もなく満子が姿を見せ、俺を見て驚く。
「あら、誰かと思ったら・・タクローさんなの。」
「いけませんか?」
満子の表情からすれば、それほどでもなさそうだ。
「本当に強引ね、本気なの?」
如何やら満子は俺の訪問目的が判っている様だ。
「本気じゃいけませんか?」
「キヨシに知られたら如何するの?」
「知られない様にします、俺は出来ると思うけど。」
「何でそんなにむきになるの?」
満子がその真意を知りたい様なので、
「貴女が欲しいから・・じゃダメですか?」
「もう、本当に強引なのね、キヨシとそっくりね、そんなところ。」
満子は呆れたとでも言いたいようだが、
「絶対に約束守れる・・?」
満子のガードが崩れた。
「その様に努力はするつもりだけど・・。」
「今日は無理よ、ちょっと待って・・。」
満子は奥に引っ込むと、暫くしてメモ用紙を差し出した。
「私のメルアドよ、何かあれば此処に入れて、名前は・・そうね、彼方のお
母さんの好子にしておくわ。」
「感謝しますよ、僕の気持受け入れてくれて。」
「強引な男に弱いだけよ、主人を裏切っている事に変わりはないでしょう?
キヨシにしろ、彼方にしてもね・・。」
成る程と思った。
不倫も慣れてくれば特別な事でも無い様だ。
亭主以外の男と単にセックスをするだけの話だ。
果たしてそれを裏切りと呼べるのか・・、性的な面で満足を与えられなけれ
ば、あながち裏切りとも呼べまい。
(だが・・キヨシはそう考えるだろうか・・?)
俺は満子の返事を聞いて、そんな事も同時に考えていた。
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