キヨシの父は、彼が10才の時、建設現場の資材置き場に積まれてある鉄材
が崩れ、その下敷きとなって、押しつぶされる様にして亡くなった。
それ以来、母親満子一人の手によって彼は育てられた。
満子は小さな飲み屋を営んでいた。
女一人が子供を抱えて生きて行く事は、簡単な事では無い。
まともな勤めも考えなかった訳ではないが、常に子供と一緒に居るには、商
いするのが一番都合良かった。
子供を家で一人きりにするのは、余りにも可哀そうだ。
満子自身も、子供の頃そんな経験があるだけに、我が子にその様な思いはさ
せたく無かった。
常に手元に置いて、彼を育てる決心をした。
10才のキヨシには二人の母が居る様に思えた。
店で働いている母と、奥の部屋でキヨシと常に一緒にいてくれる母だ。
キヨシは、奥の部屋で一緒に過ごしている時の母が大好きだった。
だが、店で働く母は嫌いだった。
父親の記憶はそれなりにあった。
だから、店で男相手に仕事をする母を見ていると、死んだ父が、とても可哀
そうに思えた。
母は父の事が好きではなかったのか?
子供ながらに、店で見る母の姿は、奥の部屋に居る時の母と違い、淫らで、
ふしだらな女にしか見えなかった。
それが仕事の為なのか、母の真の姿なのか、10才のキヨシにはまだ判断が
出来ず、そんな中で彼は成長して行った。
その男が母の情夫だと判ったのは、彼が13才の時だった。
男は毎晩カウンターの隅で、ひとりで飲んでいた。
特別母と話をするでもなく、チビリチビリと手酌で一人飲んでいた。
満子は他の客あしらいに忙しく、その男は完全に無視していた。
何故なら、彼が客では無かったからだ。
キヨシがその事に気づいたのは、ある時二人の会話を偶然聞いた事からだっ
た。
店に客は彼だけで、他に客はいなかった。
母は横で仕込みをしながら・・時折彼の方を見ていた。
顔は向けてはいないが、何か話しかけている姿をキヨシは見た。
(へ~、話をするのだ、あの男とも。)
キヨシは二人がどんな話をしているのか、興味が湧いた。
二人の会話が聞こえる場所まで近づくと、耳を済ませた。
「明日着て・・、キヨシ5時限だから午前中なら大丈夫よ。」
「判った、そうしよう・・。タップリと可愛がってやるからな。」
「ウフフフ・・馬鹿な事言って・・もう。」
早熟な彼は、二人のその会話から、ある光景を想像していた。
「あぁぁぁ~ぁ、だめ~ぇ、やめちゃいや・・お願い、もっと・・、もっと
して・・。」
店の奥にある8畳間は、キヨシと母の聖地だった。
今その場所で、母があの男に抱かれていた。
しかも、彼が聞いた事もない、淫らな声をあげ、母が激しく乱れている。
彼は店と部屋を仕切る扉の隙間から、二人のその痴態を覗き見ていた。
母の裸体と、その淫らな様は、彼にとってそれ以上のショックは無かった。
それは、大好きな母と言う彼の偶像が崩れた瞬間でもあった。
(汚い・・母さんが、あんなに汚い女だったなんて・・、僕を騙したていた
のだ・・あんな母は絶対に許さないから・・。)
その時、13才の男の子に、母の醜さだけが強く植え付けられた。
その日を境に、彼は何かにつけ母に逆らい始める様になった。
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