由紀子は、娘にも夫にも申し訳ない気持ちで一杯だった。
家の中で幸せな振りをしながら、その先の不安がどうかすると思い出させら
れた。
もしあの事が、娘や夫に知られたら、この家庭は如何なる?
それを考えると、今更ながらに自分がしでかした事の重大さを思いせらされ
るようだ。
だが、それでさえ、由紀子はまだこの先、我が身に待ち受けて居る不幸を十
分には認識してはいなかった。
約束のその日、由紀子はそれなりの覚悟で家を出た。
あの場所で、待ち受けていたベンツに乗り込むと、車がスタートした。
運転するのは、先日の男とは異なり、年齢はずっと若い男だ。
「本当に3時間以内には帰してくれるのですね?」
「俺には良く判らないけど、大丈夫じゃないの? 兄貴がそう言ったな
ら。」
どうやらその若い男はあの男の弟分の様だ。
「何処へ向かっているのですか?」
「それは言えないよ、言うなと兄貴に言われているからね。」
車は高速道路に入り、そして降り、また暫く走る。
何処を如何走ったか由紀子には見当もつかないまま、
車はビルの地下駐車場に入って行った。
「着いたのですか?」
「ああ、ちょっと待っていな。」
若い男は車を降りて、近くのドアを開けて中に入る。
やがて、男と一緒に、あの男と一緒に出てきた。
「どうも、約束通り来てくれたようですね。」
スーツ姿の男は、相変わらず丁寧な言葉使いで、由紀子に話しかけた。
「約束通り来ましたから、あなたの方も約束守ってくださいね。」
「もちろんです、但し、仕事をした後ですからね。その所はよろしく。」
男はそう由紀子話した後、
「じゃ、仕事場にご案内しましょう、どうぞこちらへ。」
由紀子は男に案内されるまま、そのドアから、エレベーターに乗せられ、何
階か上へ
と登った。
複雑な構造のビルで、何度もドアをくぐると、小さな部屋に辿り着いた。
「じゃ、ここで少し待っていてください、準備が出来次第お声をかけます、
サブ、見張っていろ!」
男は若い男にそう命じて、部屋を出た。
由紀子はその変った感じの、小さな部屋を見回していた。
大きさは6畳間ほどだが、出入り口はドアが1か所、それとドアとは反対側
に蛇腹式のカーテンが引かれている。
待つ事10分で、スーツ姿の男が現れた。
「お待たせしました、それでは仕事をしていただきますが、その前に着替え
て頂きます。」
男の横に気付かなかったが、一人の女性が付いていた。
「後は頼むぞ。」
男はその女にそう命じると、
「それでは後は私がご案内しますので、どうぞ此方へ・・。」
女はそう言うと、由紀子をあの蛇腹式カーテンを開くと、その奥へ由紀子を
案内した。
そこは、前方に同じ様なカーテンが引かれている場所で、蛇腹式カーテンに
挟まれたような部屋になっている。机の上に何やら着るものが置かれている
ようだ。
「それでは、黙ってこれに着替えてください。」
示されたものは如何やら浴衣の様だ。
「これに着替えるのですか? 何をさせるつもりなのですか?」
「質問は許しません、早く着替えなさい、皆さんがお待ちかねです。」
女は命令調でそう言うと、
「時間内に帰りたかったら、早く言う通りにしなさい。」
更にそう由紀子に話しかけたのだ。
言われた通りにするしかない、すべてこれで終わるのだから・・。
そんな思いで、由紀子はその浴衣を手にすると、女の前で着替えを始めた。
何故か、下着類も全てそろえられていた。
由紀子が余り身につける事の無い、色柄物の下着類だ。
訝しがりながらも、由紀子はそれらを身に付けた。
「良いでしょう、貴女の服は、終演後お返ししますから。」
(終演後?)
聞きなれない言葉を由紀子は女の口から聞かされた。
「あの・・終演後って?」
「それじゃ、そのカーテンを引いて、そこから出なさい。」
由紀子の質問には答えずに、そう命じた。
恐る恐る由紀子はカーテンを引いて、その先に身を乗り出した。
由紀子が出た先は、うす暗い状態だったが、直ぐに信じられないような強い
ライトが由紀子の全身を照らし出した。
そして、由紀子はライトの眩しさで良くは見えないが、その先に大勢の人が
いる気配を感じた。それは・・。
「オウッ!」
その声は意外なものを見た時の感嘆の声に聞こえた。
由紀子はまだ目が慣れない、眩しいライトに手をかざしながらも、その状況
を確かめようとしていた。その時だ。
「永らくお待たせいたしました、皆様お待ちかね、本日最大の呼び物、人妻
強姦ショーの開演です。正真正銘の人妻さんが登場します。皆様、どうかじ
っくりと人妻の犯されていく姿をお楽しみください、それでは開演です!」
由紀子の耳に飛び込んだのは、その恐ろしい言葉でした。
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