由紀子はここ2~3日、何故か無気力な日々が続いていた。
自分でもその原因が判らず、気が滅入った。
感情を自分でコントロール出来ないようにも思えた。
突然娘に当たり散らしたり、怒鳴ったりするのだ。
夫からも注意を受けた。
「お前、少し疲れているのではないか? 顔色も悪いぞ。」
そんな事も言われていた。
そんな日が何日か続いたある日、由紀子はひとつの電話を受けた。
声の主は女であった。
「もしもし、由紀子さん? お身体の調子は如何?」
「失礼ですが、何方さまでしょうか?」
「この声、お忘れ? 麗華よ、強姦ショウーの時にお逢いしました・・。」
由紀子は、あの時の女の顔を思い出していた。
「止めてください、電話なんかしないで下さい、あれでもう全て済んだはず
です。
私にはもう用は無いはずです。」
由紀子は怒りで一杯になった。
「確かに、こちらには無くても、由紀子さんの方は如何かと思いまして
ね?」
「えっ? それ、どう言うことですか?」
「ですから、最近身体の調子は如何かと思いましてね?」
「身体の調子って・・・?」
その時、由紀子は最近感じている身体の変調に思い至った。
「家事に身が入らないなんて事ありません? イライラしたり、怒鳴ったり
していない?」
「なんでそんな事知っているの?」
「そろそろ欲しがる頃じゃないかと思ってね。それで、電話してあげたわ
け。」
妙な事を麗華が言った。
「欲しがるって? 何を?」
「決まっているでしょう? ク・ス・リ。まだお判りにならない? あの時
の注射?」
由紀子はショーが終わった時、痛み止めと言われて打った注射を思い出して
いた。
「痛み止めの注射では?」
「まさか・・医者じゃないのよ、私達は。麻薬よ、ま・や・く・・お判
り。」
「麻薬? 嘘、そんな・・嘘でしょう?」
「信じる、信じないは貴女の自由よ、その調子じゃまだ大丈夫そうね。
その内、そうしていられなくなるわよ。それじゃ又近い内連絡する
わ・・。」
麗華はそう言って一方的に電話を切った。
由紀子は麗華の言った言葉を、信じられない思いで聞いていた。
(麻薬・・、嘘よ・・そんな事嘘に決まっている、そうよ、私をこの前の様
に騙しているだけよ、そう・・そうに、決まっている・・。)
由紀子は必死に否定した。
だが・・由紀子の身体は、次第に薬物による影響が出始めて居たのだった。
麗華の指摘した事は、次第に由紀子の肉体にその兆候をもたらし始めた。
由紀子は焦りを感じ始めていた。
平静を装っているつもりでも、思う様に自分の身体がコントロール出来ずに
いる。
「辛いでしょう・・? 大丈夫、貴女の程度ならすぐ止められるから・・。
何、少し位なら平気よ、辛いのを我慢する事はないわ。直ぐにいらっしゃ
い、あげるから。」
由紀子は同じ同性である麗華の言葉を信じた。
<少し位なら大丈夫・・などと言う事はあり得ないのだが、由紀子は余りに
も無知であったが為、麗華の言葉に騙されたのだ。>
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