【Side Story-4】
―時は遡り…―
僅かな荷物を手に一人の男が門をくぐる。
プレートに刻まれた名前とは程遠いラフな服装。歳の頃はおそらく30台前半、殆ど手入れをしていないような長髪をヘアゴムで束ね、口元や顎には無精髭が生えている。
「本当に宜しいのですか?博士…。中にはまだ…」
迎えに来た車の運転手らしき女が声を掛ける。
「居るだろうね、某国のエージェントが…」
麻津度化学生物研究所…表向きは微生物やウイルスの研究をする末端の一機関に過ぎない。だがこの男が請け負っていたのは各国が秘密裏に開発している生物兵器や化学兵器への対抗方法だった。
それに気付いた某国がエージェントを送り込み、偽装工作で無実の罪をきせ、失脚を謀ったのだった。
「ま、被検体も99%解析済みだし、彼女達は優秀なスタッフだから大丈夫でしょ。万が一の為に"お薬"の手配もしておいたし」
トランクに荷物を入れ、後部座席に座る。
「これからどうされますか?」
「そうだねぇ~、僕に出来る事は済んだし、取り敢えず暫くは身を潜めて大人しくしておきますか」。あそこじゃ出来ない事も有るし…
「賢明な判断です」
ギアをローに入れ車が走り出す。
(さて…後は任せたよ、新人研究員クン…)
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