「…ン」
普通に寝返れば良いのにワザワザ下を向いてから紫織と向かい合う。お陰でミニスカが若干捲くれ上がる。
「コラ、何考えてるかバレバレだよ」
スカートの裾を脚で挟み込んで隠す。
「アハハ…流石オレの嫁。ンン、イイ匂い…」
腰に廻した腕で引き寄せ、顔を埋める。
「ちょ…コラ、何処に顔突っ込んでクンカクンカしてんの!?」
ポカポカポカ…
パタン…
「ハァ…」
一人の女性が駅の改札口で溜め息を吐いている。
「どうしたの、美しいお嬢さん」
「アラ~、お帰りなさい」
少しイイ感じのラウンジで大人な二人が向かい合う。
「旦那様の帰還に…」
「二人の結婚記念日に…乾杯」
ティン…
互いのグラスが透明な音を奏でる。
「本当に久し振りね…パパ」
「ああ…この所飛び回ってたからな」
一見この優男、実は大手貿易商の重役だったりする。
「で、どうしてそんな淋しそうな顔をしてたの?」
「今からエッチするかもしれないから帰ってくるな…ですって。邪魔者にされちゃったのぉ」
「ハハ、アイツも年頃だからな…って、紫織は今、女の子だろ!?」
慌てて立ち上がる男のジャケットを掴む。
「もう遅いわ。今頃はイチャイチャラブラブしてるわよ」
「…ったく、何でそんなに落ち着いてられるんだ?」
母親だから…かな?と微笑まれると何も言えなくなったのか咳ばらい一ツして席に就く。
「今日は私とラブラブしましょ」
若干納得しては無いものの、紫織の相手は予想が着いた。
「オレの嫁…かぁ、約束したもんな…出来たらくれてやるって」
「そういう事」
そう言って再びグラスを傾けあった。
・・・・・
「ちょ…まずはキスからだってば…。もう、何か言う事無いの?」
「紫織はオレの嫁だ」
この稀にみる特異なカップルに普通の恋愛はやはり難しいのかもしれない…。
「彩依のバカーーーッ!!」
―end―
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